五輪書
﹃五輪書﹄︵ごりんのしょ︶は、宮本武蔵の著した兵法書。剣術の奥義をまとめたものといわれる。
寛永20年︵1643年︶から死の直前の正保2年︵1645年︶にかけて、熊本県熊本市近郊の金峰山にある霊巌洞で執筆されたとされる。
自筆本である原本は焼失したと伝えられる。写本は細川家本を始め、楠家旧蔵本・九州大学本・丸岡家本・狩野文庫本、底本不明の﹃劍道祕要﹄収録などがある。自筆本が現存せず写本間での相違も多いことや、武蔵の時代よりも後の価値観に基づく記述が多いこと、さらに同時代の文献に武蔵が五輪書を書いたと傍証できるものがない。
構成[編集]
書名の由来は密教の五輪(五大)からで、それになぞらえて「地・水・火・風・空」の六巻に分かれる。
- 地の巻
- 自らの流を二天一流と名付けたこと、これまでの生涯、兵法のあらましが書かれている。「まっすぐな道を地面に書く」ということになぞらえて、「地の巻」とされている。
- 水の巻
- 二天一流での心の持ち方、太刀の持ち方や構えなど、実際の剣術に関することが書かれている。「二天一流の水を手本とする」剣さばき、体さばきを例えて、「水の巻」とされている。
- 火の巻
- 戦いのことについて書かれている。個人対個人、集団対集団の戦いも同じであるとし、戦いにおいての心構えなどが書かれている。戦いのことを火の勢いに見立て、「火の巻」とされている。
- 風の巻
- 他の流派について書かれている。「風」というのは、昔風、今風、それぞれの家風などのこととされている。
- 空の巻
- 兵法の本質としての「空」について書かれている。
「風の巻」における他流派批判[編集]
●長太刀を用いる流派に対しては、接近戦に不向きであり、狭い場所では不利となり、何より長い得物に頼ろうとする心がよくないと記す。
●短太刀を用いる流派に対しては、常に後手となり、先手を取れず、相手が多数の場合、通用せず、敵に振り回されると記す。
●太刀を強く振る︵剛の剣の︶流派に対しては、相手の太刀を強く打てば、こちらの体勢も崩れる上、太刀が折れてしまうことがあると指摘する。
●妙な足使い︵変わった足捌き︶をする流派に対しては、飛び跳ねたりしていたら、出足が遅れ、先手を取られる上、場所によっては動きが制限されると指摘する。
●構え方に固執する流派に対しては、構えは基本的には守りであり、後手となる。敵を混乱させるためにも構えは柔軟であるべきと記す。
●奥義や秘伝書を有する流派に対しては、真剣の斬り合いにおいて、初歩と奥義の技を使い分けたりはしないとし、当人の技量に応じて指導すべきと記す。
これらの他流派批判をすることにより、二天一流の有用性を説いている。
関連項目[編集]
●オリンピック - 五輪の旗を掲げるオリンピックを﹁五輪﹂と訳したのは読売新聞の川本信正記者。由来は﹁五輪書﹂からで、文字数が減らせることから他のマスコミに普及した。
●ヴァーストゥ・シャーストラ