必死の逃亡者 (小説)
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必死の逃亡者 Les tribulations D'un chinois en Chine | ||
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原書の扉絵 | ||
著者 | ジュール・ヴェルヌ | |
イラスト | レオン・ベネット | |
発行日 | 1879年 | |
発行元 | P-J・エッツェル | |
ジャンル | 冒険小説 | |
国 | フランス | |
言語 | フランス語 | |
形態 | 上製本 | |
前作 | インド王妃の遺産(Les Cinq Cents Millions de la Bégum) | |
次作 | 蒸気の家 | |
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﹃必死の逃亡者﹄︵ひっしのとうぼうしゃ、原題‥Les tribulations D'un chinois en Chine︶は、ジュール・ヴェルヌが1879年に発表した冒険小説。原題は﹁ある中国人の、中国における受難﹂の意味である。
主人公・金馥の冒険旅行を通じて清朝の中国が描かれる。ただし、登場する中国の地名・人名などには正しくないものも散見される[1]。
主要登場人物[編集]
●金馥︵キンフー、Kin-Fo︶ - 上海に住む若き大富豪。人生に飽いている。 ●汪︵ワン、Wang︶ - 金馥の家に先代から寄食する哲学者。元・太平天国の党員。 ●孫︵スン、Soun︶ - 金馥の給仕頭。 ●クレイグ︵Craig︶とフライ︵Fry︶ - 保険会社﹁百歳社﹂専属の探偵。 ●老沈︵ラオシェン、Lao-Shen︶ - 太平天国の残党。盗賊団の首領。あらすじ[編集]
舞台は太平天国の乱収まらぬ中国清朝。若き大富豪、金馥は、株の大暴落によって一瞬で全財産を失った。人生の無常を痛感した彼は、一度は自殺を決意し、老哲学者の汪に自らの殺害を依頼する。 しかし破産の連絡が誤報であったことが判明する。金馥は汪への依頼を取り消そうとするが、汪は謎の失踪を遂げていた。彼に掛かった生命保険を守るために保険会社がよこしたボディガード2人組と召使の孫を伴い、金馥は汪を探す旅に出る。彼らは通州で汪を見つけるが、汪は河に身を投げて再び姿を消す。その後、汪から金馥に﹁自分は友人殺害の任に耐えられず自殺するが、代わりに盗賊の老沈に君の殺害を委任した﹂という趣旨の手紙が届く。 金馥はその委任状を奪回すべく、孫、クレイグ、フライを再び伴って、万里の長城の北に潜む老沈のもとへ向かう。金馥は危険を乗り越えて老沈との面会を果たすが、老盗賊は交渉に応じない。目隠しをされ引き立てられてゆく金馥は死を覚悟するが、連れて行かれた先に居たのは許婚、友人たち、そして汪であった。全ては、金馥の無気力を案じた汪のはかりごとだったのである。その狙い通り人生の価値に気づいた金馥は許婚と結婚式を挙げ、物語は大団円を迎える。日本語訳[編集]
- 石川湧訳『シナ人の苦悶』集英社〈ヴェルヌ全集11〉、1968年
- 石川湧訳『必死の逃亡者』東京創元社〈創元SF文庫〉、1972年、ISBN 978-4-488-51702-1