王子の狐
王子の狐︵おうじのきつね︶は、落語の噺の一つ。初代三遊亭圓右が上方噺の高倉狐を東京に写したもの。
人を化かすと言われる狐がかえって人に化かされる顛末を描く。結末は一種の考え落ちでもあろう。
主な演者[編集]
物故者[編集]
●八代目春風亭柳枝 ●十代目金原亭馬生 ●七代目立川談志現役[編集]
●十一代目金原亭馬生あらすじ[編集]
王子稲荷︵東京都北区王子︶の狐は、昔から人を化かすことで有名だった。 ある男、王子稲荷に参詣した帰り道、一匹の狐が美女に化けるところを見かける。どうやらこれから人を化かそうという肚らしい。 そこで男、﹃ここはひとつ、化かされた振りをしてやれ﹄と、大胆にも狐に声をかけた。﹁お玉ちゃん、俺だよ、熊だ。よければ、そこの店で食事でも﹂と知り合いのふりをすると、﹁あら熊さん、お久しぶり﹂とカモを見付けたと思った狐も合わせてくる。 かくして近くの料理屋・扇屋に上がり込んだ二人、油揚げならぬ天ぷらやらお刺身などを注文し、差しつ差されつやっていると、狐のお玉ちゃんはすっかり酔いつぶれ、すやすやと眠ってしまった。そこで男、土産に卵焼きまで包ませ、﹁勘定は女が払う﹂と言い残すや、図々しい奴で狐を置いてさっさと帰ってしまう。 しばらくして、店の者に起こされたお玉ちゃん、男が帰ってしまったと聞いて驚いた。びっくりしたあまり、耳がピンと立ち、尻尾がにゅっと生える始末。正体露見に今度は店の者が驚いて狐を追いかけ回し、狐はほうほうの体で逃げ出した。 狐を化かした男、友人に吹聴するが﹁ひどいことをしたもんだ。狐は執念深いぞ﹂と脅かされ、青くなって翌日、王子まで詫びにやってくる。巣穴とおぼしきあたりで遊んでいた子狐に﹁昨日は悪いことをした。謝っといてくれ﹂と手土産を言付けた。 穴の中では痛い目にあった母狐がうんうん唸っている。子狐、﹁今、人間がきて、謝りながらこれを置いていった﹂と母狐に手土産を渡す。警戒しながら開けてみると、中身は美味そうなぼた餅。 子狐﹁母ちゃん、美味しそうだよ。食べてもいいかい?﹂ 母狐﹁いけないよ!人間は騙すからね、馬の糞かもしれない!﹂卵焼き[編集]
扇屋は現在、料理屋は経営していないが、今も1階で卵焼きを販売している[1]。脚注[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 幕末・明治期の扇屋 - 右手に扇屋、中央が音無川、左に扇屋庭園。
- 歌川広重作 江戸高名会亭尽「王子扇屋」 - 江戸東京博物館収蔵