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破産手続開始の申立て︵はさんてつづきかいしのもうしたて︶とは、債務者の破産手続開始決定を求める旨の、裁判所に対する訴訟行為である。
*破産手続については、破産を参照。
管轄等[編集]
(一)破産手続開始の申立は、債務者が個人である場合においては日本にその営業所、住所、居所又は財産を有するときに限り、法人その他の社団又は財団である場合においては日本国内に営業所、事務所又は財産を有する場合に限り、することができる︵破産法第4条1項︶。
(二)破産事件は、債務者が営業者であるときはその主たる営業所の所在地、外国に主たる営業所を有するときは日本における主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する︵破産法第5条1項︶。
(三)上記の管轄裁判所がない場合は、債務者の財産の所在地︵債権については、裁判上の請求をすることができる地︶を管轄する地方裁判所が管轄する︵破産法第5条2項︶。
(四)親法人と子株式会社が同時に破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条3項︶。
(五)子株式会社又は親法人及び子株式会社が他の株式会社の議決権の過半数を有する場合は、当該他の株式会社を子株式会社とみなして、破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条4項︶。
(六)会社法444条の規定により連結決算書類を作成し、かつ、定時株主総会に報告されている時は、破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条5項︶。
(七)会社と代表者の場合には、破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条6項︶。
(八)相互に連帯債務の関係にある個人が破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条7項1号︶。
(九)相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人が破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条7項2号︶。
(十)夫婦が破産手続開始の申立てを行う時は、どちらか一方の管轄の地方裁判所に申立を行うことができる︵破産法第5条7項3号︶。
(11)上記1,2の場合にもかかわらず、債権者の数が500人以上いる場合には、その管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所に破産手続開始の申立を行うことができる︵破産法第5条8項︶。
(12)上記1,2の場合にもかかわらず、債権者の数が1,000人以上いる場合には、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に破産手続開始の申立てを行うことができる︵破産法第5条9項︶。
(13)以上の管轄裁判所が複数該当する時は、先に破産手続開始の申立があった地方裁判所が管轄する︵破産法第5条10項︶。
申立権者[編集]
破産の申立てをなすことができるのは、債権者又は債務者︵同法18条1項︶、法人︵民法等の︶の理事、株式会社・相互会社︵保険会社︶の取締役、合名会社・合資会社・合同会社の社員、清算人等︵同法19条︶である。
銀行、協同組織金融機関︵信用金庫など︶、金融商品取引業者︵証券会社など︶、保険会社、少額短期保険業者、農水産業協同組合︵農協・漁協など︶については、監督庁も破産の申立てをすることができる︵金融機関等の更生手続の特例等に関する法律490条第1項、農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律3条第1項︶。
破産原因等の疎明[編集]
債権者が破産の申立てをなすときは、その債権の存在及び破産原因を疎明することを要し︵同法18条2項︶、法人の理事等の一部のみが破産の申立てをなすときは、破産原因を疎明することを要する︵同法19条︶。
資料の提出、費用の予納等[編集]
破産申立人が債権者でないときは、申立てと同時に、財産の概況を示すべき書面並びに債権者及び債務者の一覧表を提出することを要する︵同法20条2項︶。
申立てと同時に提出することができないときは、申立て後遅滞なくこれを提出することを要する︵同条2項但し書き︶。
債権者が破産の申立てをなす場合においては、破産手続の費用として裁判所が相当と認める金額の予納があることを要する︵同法22条1項︶。費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告を申し立てることができる︵同条2項︶。
破産法上は、破産申立人が債権者でないときは、申立て人の資力その他を考慮して、特に必要と認める時は、破産手続の費用は、仮に国庫よりこれを支弁することができるとされているが︵同法23条︶、実務上は、ほとんどの庁が、自己破産の申立人に対しても費用の予納を要求している。
破産の申立ては、民事訴訟費用等に関する法律3条1項、別表第一16項上欄所定の﹁その他の裁判所の裁判を求める申立てで、基本となる手続が開始されるもの﹂にあたると解されており、申立ての手数料として1,000円︵同項下欄︶を、申立書に収入印紙を貼って納めなければならない︵同法8条︶。その他、免責申立手数料として500円を要する。なお、債権者が申し立てる場合は手数料は20,000円である。
また、申立人は、郵便物の料金に充てるための費用として、裁判所が定める概算額に相当する金額の郵便切手を予納しなければならない︵同法11条1項、12条1項、13条︶。