終りに見た街
終りに見た街 | |
---|---|
作者 | 山田太一 |
国 | 日本 |
ジャンル | SF小説、歴史小説 |
初出情報 | |
初出 |
『別冊中央公論』第2号 (1981年9月発行) |
出版元 | 中央公論社 |
刊本情報 | |
出版元 | 中央公論社 |
出版年月日 | 1981年11月 |
ウィキポータル 文学 ポータル 書物 |
﹃終りに見た街﹄︵おわりにみたまち︶は、脚本家・山田太一原作の小説である。テレビ・ラジオで3回にわたりドラマ化されたほか、舞台上演も行われた。
概要[編集]
突然昭和19年にタイムスリップした昭和一桁世代の放送作家とその家族の物語。現代の日本に新たな核兵器が投下される、というラストは大きなショックと未来の日本へ教訓を与えた。あらすじ[編集]
運命の悪戯から近所の一家族と共に、昭和19年の終戦間近にタイムスリップしてしまった主人公一家。一億総玉砕の風潮の中、終戦日を知る彼らはそれまでを必死にしのごうと努力する。 近所の一家には反社会的で常に父の悩みの種の不良息子がいた。しかしタイムスリップ後、彼は別人の様に無口になり、突然失踪する︵この事はラストへの重要な伏線になる︶。 様々な困難を乗り越え終戦まであとわずかとなったある日、突然帰ってきた不良息子は軍服を身につけ帝国軍へ入隊したことを告げる。彼の言動はまさにこの時代の人間そのものだった。﹁目を覚ませ﹂と諭す父を﹁非国民﹂と断じて、軍刀で切り殺そうとする息子。止めに入る主人公の家族も含めて周囲がパニック状態になったその時、突然激しい閃光が起きる。 やがて主人公は朦朧としながらも意識を取り戻した。周りは廃墟と化し死の世界になっていたが、様子がおかしいと気付く。彼の目には終戦間近に存在しないはずのもの、そして遠方には崩壊したビル街、折れ曲がった東京タワーが見えていた。主人公は倒れていた男に必死に問いかける。﹁今は何年なんだ!﹂だが男の口は微かに動いただけだった。そして主人公は全てが死に絶えた﹁最後の街﹂を見ながら息絶えるのだった。テレビドラマ[編集]
1982年版[編集]
1982年8月16日に、テレビ朝日系列﹁ゴールデンワイド劇場﹂枠内でドラマ化。放送時間は20:02 - 21:48︵JST︶。スタッフ[編集]
●原作・脚本‥山田太一 ●演出‥田中利一 ●制作‥千野榮彦、岩永恵 ●主題歌‥アントニオ・ヴィヴァルディ﹁四季 春﹂キャスト[編集]
●清水要治‥細川俊之 ●清水紀子‥中村晃子 ●宮島敏夫‥なべおさみ ●清水信子‥菊地優子 ●清水稔‥山越正樹 ●宮島新也‥酒井晴人 ●上野勇‥吉田次昭 ●中年の国防服の男‥高杉哲平 ●山本武 ●秋月喜久枝 ●国防服の男A‥石橋雅史 ●大久保正信 ●三重街恒二 ●和沢昌治 ●近松敏夫 ●能登裕康 ●荒瀬寛樹 ●国枝量平 ●沢田たかし ●猪野剛太郎 ●由起艶子 ●丸山詠二 ●田村元司 ●稲川善一 ●小池幸次 ●立樹健 ●林弘造 ●片岡美津子 ●警防団の団員A‥谷津勲 ●警防団の団員B‥中村武己 ●宝亀克寿 ●三十代の男‥堀勝之祐 ●劇団 白鳥座 ●将校‥蟹江敬三 ●隣組組長‥鈴木清順 ●納屋の老人‥北見治一 ●ある農家の主婦‥野村昭子 ●六十代の男‥浜村純 ●防空防火訓練郡長‥樹木希林 ●豪農の主人‥ハナ肇2005年版[編集]
2005年12月3日に﹁山田太一ドラマスペシャル・終戦60年特別企画﹂として、同じくテレビ朝日系列で放送。放送時間は21:00 - 23:21︵JST︶。山田自らが現代版の脚本を再執筆した[1]。あらすじ[編集]
2005年9月、東京郊外に住むシステムエンジニアの清水要治は一家の大黒柱で、妻、娘、息子、愛犬と幸せな暮らしをしていた。そんな中、旧友の宮島敏夫と再会する。その2日後、妻の紀子が朝起きて外が森で近所の家がないと言い出す。要治が外を見て確かめると、妻の言葉は事実だった。驚いた要治は外に出るが、森を抜け出た先にもあるはずの街はなく、神社では出征兵士の送別会が開かれていた。不審に思った要治はそばにあった掲示板を見て驚愕する。そこに張られていたポスターには昭和19年と記されていたからだ。付近の住民に不審がられた要治はあわてて家に戻るが、そこへ敏夫から電話がかかって来る。釣りに出かけた敏夫親子もまた昭和19年にタイムスリップしていたのだ。 敏夫親子は要治一家に合流し、彼らに疑惑の目を向ける軍人たちの追手をかわしながら、昭和19年の生活に順応していく。そして、未来から来た人間の義務として、当時の人々にこれから起こる東京大空襲の危険を知らせようとある計画を実行に移すが、人々は犯人だと疑われるのを恐れ、結局誰も逃げようとはしなかった。そして失踪した敏夫の息子の新也が突然帰宅するが、帝国軍に入隊しておりすっかり見ちがえていた。新也は敏夫、要治の考えている事はおかしいと言い、また要治の娘の信子も新也に味方する。 そこへ不意に空襲警報が鳴った。要治は自分たちのいる場所は安全で攻撃されない場所だと言うが、起こらない筈の空襲を受けてしまう。衝撃を受け、閃光が光り、要治が目を覚ますと片腕を失っていた。そこは見渡す限りの瓦礫と焦げた無数の死体の山。さらに60年前にはあるはずが無い物を見る。それは廃墟となったビルや東京タワー、そこは2XXX年の原爆の爆心地となった死の街・東京であった。そして、要治は﹁終わりに見た街﹂で絶命する。スタッフ[編集]
●原作・脚本‥山田太一 ●演出‥石橋冠 ●音楽‥坂田晃一 ●チーフプロデューサー‥五十嵐文郎 ●プロデューサー‥内山聖子、太田雅晴、大野秀樹キャスト[編集]
●清水要治‥中井貴一 - システムエンジニア。 ●清水紀子‥木村多江 - 要治の妻。 ●清水信子‥成海璃子 - 要治の娘で中学2年生。戦時下では郵便局で働く。 ●清水稔‥成田翔吾 - 要治の息子で小学5年生。 ●宮島敏夫‥柳沢慎吾 - 要治の旧友で結婚式場のマネージャー。 ●宮島新也‥窪塚俊介 - 敏夫の息子。後に軍国主義に傾く。 ●岸田‥金子賢 - 二等兵。逃げる要治を追い詰める。 ●佐々木すみ江 ●瓦礫の中の男‥遠藤憲一 ●今福将雄 ●芋の男‥柄本明 - 空襲に付いて敏夫に聞かれるが……? ●背負い籠の老人‥小林桂樹 - 出征兵を見送る時に要治と遭遇する。 ●将校‥柳葉敏郎 - 要治らを不審がり身元を調べる。 ●豪農の主人‥津川雅彦 - 折り畳み傘と引き換えに要治らに米を渡す。 神奈川県横浜市の放送ライブラリーでは、1982年版・2005年版とも無料で視聴可能。ラジオドラマ[編集]
2014年4月にNHKラジオ第1﹁新日曜名作座﹂にて全4回の連続ドラマとして放送。 2005年テレビドラマ版から更に脚色され、ラストシーンでは要治が生きていた昭和末期には見たことの無い東京スカイツリーが崩壊した姿が描かれ、また要治が今が何年かを尋ねた瀕死の人物は要治が知らない﹁平成﹂の年号を口にする。NHKラジオ第1 新日曜名作座 | ||
---|---|---|
前番組 | 番組名 | 次番組 |
あん |
終りに見た街 |
奥田英朗 家族小説短編集 |
舞台版[編集]
前進座[編集]
1988年3月10日~21日に吉祥寺前進座劇場にて上演された。スタッフ[編集]
●原作‥山田太一 ●脚色‥小松幹生 ●演出‥香川良成 ●美術‥孫福剛久 ●照明‥寺田義雄 ●音楽‥竹田由彦 ●舞台監督‥鈴木龍男キャスト[編集]
●清水要治‥志村智雄 ●清水紀子‥横山万里子 ●清水稔‥長村冨士郎 ●清水信子‥遠藤かがり ●敏夫‥津田恵一 ●新也‥中谷源 ●古田少尉‥松本隆 ●宮島‥松浦豊和 ●その他出演‥津田伸、中村鶴蔵、北相馬宏、西川かずこ、西宮小夜子、小林祥子、松谷たくみ、本条まゆ、深町稜子出典[編集]
- ^ “山田太一ドラマスペシャル 終りに見た街”. 放送ライブラリー公式ページ. 2019年10月19日閲覧。