若菜集

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1897

調調51
初恋 島崎藤村

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花ぐしの
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

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脚注[編集]

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