重版
重版︵じゅうはん︶は、出版物を初版と同じ版を使い、同じ判型・装幀にて刷り直す︵増刷・重刷する︶こと。重刻︵じゅうこく︶または再版︵さいはん︶ともいう。重版が出来上がってその書籍が販売されることを重版出来︵じゅうはんしゅったい︶という[1]。
出版文化と重版[編集]
日本の出版文化[編集]
日本では、江戸時代の木版のときには、そのままの版木を使って刷り直すことが普通であった。ただし、挿絵などで、薄墨を使ったぼかしなどは、再版のときには再現されないことが多く、それを基準に版の前後を判定することも可能である。版木は出版者の財産として、大切に保管された。 明治になって活版印刷が一般的になると、重版のたびに活字を組み直していては効率が悪いため、一度組み上がった版面を、型の残る強い紙質の紙に押し付けて、型を取ることにした。これを紙型︵しけい︶と呼んだ。重版の際には、紙型に鉛を流し込んで、組み上がった版面を再現するものだった。 日本の出版業界は新刊依存体質が高いといわれており、欧米に比べて新刊に対する重版の比率は低い[2]。欧米の出版文化[編集]
欧米では新刊に対する重版の比率が日本に比べると高い[2]。新刊と重版の割合は、イギリスでは77.5対21.5︵1996年下半期︶、ドイツでは72対28︵1995年︶であった[2]。重版出来[編集]
重版出来︵じゅうはんしゅったい︶とは、初版の発行部数を上回って、更に発行することを表す言葉。重版ありきで初版を抑えるケースもあると言われる[3]。 出版業界の業界用語としては、版元の企業文化により重版出来を﹁じゅうはんでき﹂と読む場合もある[1][3][4]。一方で﹁じゅうはんでき﹂を誤読とする会社もある。﹃週刊少年ジャンプ﹄2013年16号の﹃クロス・マネジ﹄で、﹁じゅうはんでき﹂とルビが振られた例がある[4]。 テレビドラマ化もされた漫画﹁重版出来!﹂では、﹁重版決定﹂のニュアンスで使われているが、重版出来は本来、重版分の本が刷り上がり、書店に搬入されることを指す言葉である。﹁出来﹂は﹁完成・完了﹂を表す言葉であり、﹁決定﹂の意味はないので、正確な使い方ではない。出典[編集]
(一)^ ab坪井直樹. “vol.4 業界用語シリーズ 〜重版出来〜”. ﹃にほんご学習帳﹄. テレビ朝日. 2015年12月20日閲覧。
(二)^ abc桂敬一ほか﹃出版―出版文化の崩壊はくい止められるか﹄大月書店、1997年、70頁。
(三)^ ab“﹃重版出来﹄の読み方と意味とウラ事情”. Webマガジン KOTB﹇コトビー﹈ (2015年3月22日). 2015年12月20日閲覧。
(四)^ ab“WJで﹁重版出来﹂に﹁じゅうはんでき﹂とルビが振られたことから、﹁でき﹂をめぐる考察に”. ネルヤ (ネルヤ (nelja)). (2013年3月19日) 2015年12月20日閲覧。