日本大百科全書(ニッポニカ) 「のど」の意味・わかりやすい解説
のど
のど / 咽
喉
口の奥の部分、つまり食道や気管に通じるたいせつな部位で、咽喉(いんこう)ともよぶが、解剖学上での正式な定義はない。語源的には、飲門(のみと)の音便である﹁のむと﹂の約語といわれ、食べ物の入口を意味する俗称。雅語形では﹁のんど﹂という。一般にのど、あるいはのどくびのあたりといえば、頸部(けいぶ)の前面をさし、内部は喉頭にあたる。のどが渇く、のどが痛い、のどがかれるなどという場合は、咽頭、喉頭をさすことが多い。また、のどがいいといえば、明らかに声帯のある喉頭をさしている。﹁のどぶえ﹂とは声帯をいい、俗にいう﹁のどちんこ﹂は解剖学的には口蓋垂(こうがいすい)となる。頸部の前面で正中部に突出している部分を﹁のどぼとけ﹂とか﹁のどっぷし﹂とかいうが、これは甲状軟骨の前面正中部上端の突出した部分である。解剖学名では喉頭隆起といい、成人男子では隆起がとくに著しい。女子や子供ではこの隆起が明瞭(めいりょう)でない。古くから欧米では、喉頭隆起を﹁アダムのリンゴ﹂と俗称している。また、ドイツ語には﹁アダムのバナナ﹂﹁アダムの子供﹂などのことばもある。これらの表現は、いずれも宗教伝説に由来するもので、最初の人間アダムが禁断の実、リンゴを食べて神にとがめられ、そのとき果実がのどにひっかかったためという。
﹇嶋井和世﹈
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