日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヌ」の意味・わかりやすい解説
イヌ
いぬ / 犬
dog
[学] Canis familiaris
形態
感覚
祖先と歴史
イヌの祖先
家畜化の歴史
生態
イヌの社会
コミュニケーション
イヌの系統
現生するイヌは、畜産文化研究家である加茂儀一の区分けに従いその祖先をたどれば、おおむね次の7系統に分類される。
[増井光子]
パリア犬型
テリア型
C. f. palustris 紀元前2800年ごろのスイスの新石器時代層から初めて出土した。しかし北ヨーロッパでは前8000年ごろの地層から発見されているし、西アジアやエジプトでも新石器時代の遺跡から発掘されている。パリア犬の流れをくむものとみなされている。ポメラニアン、テリア類、そり犬などがこれに属する。
[増井光子]
牧羊犬型
グレーハウンド型
C. f. leineri 古くは前5000年の古代エジプトの遺跡から出土している。古代メソポタミア、インダス文明時代にもこのタイプのイヌが存在した。各種のハウンド類がこれに属する。
[増井光子]
ブルドッグ型
C. f. inostranzewi チベットあたりが発祥地とみられ、前1050年、中国の周の時代に皇帝への贈り物にされている。前9000年の中石器時代にデンマークからも発見されている。パリア犬型のイヌに北方オオカミの血を混じたものとみられている。極地犬、ピレニアンマウンテンドッグ、オフチャルカ、オールドイングリッシュシープドッグなどがこれに属する。
[増井光子]
猟犬型
C. f. inter-medius オーストリアの青銅器時代層から出土。前2000年ごろパリア犬型のものからグレーハウンド型のものを生じ、さらに猟犬タイプに移行したとみられる。スパニエル類、ポインター、ブラッドハウンド、ディアハウンド、ブラッケなどがある。
[増井光子]
新大陸のイヌ
新大陸には人の移住に伴い、パリア犬型、テリア型のもの、ブルドッグ型のもの、大形のテリア型のものなど四つの系統が認められている。
[増井光子]
日本犬
繁殖と寿命
用途
おもな犬種
猟犬グループ
sporting dogs 猟犬は主として鳥猟に用いられる犬種で、獲物を回収運搬する役のレトリバー種もここに含まれる。鳥猟犬としてはポインター、セッターが双璧(そうへき)で、愛好者も多い。イングリッシュポインターはイギリス原産。体高61~69センチメートル。白地に黒やレバー色の斑点(はんてん)がある。イングリッシュセッターも原産はイギリス。体高58~65センチメートル。絹のような長毛で、白地に黒やレモン色の斑、もしくは更紗(さらさ)模様が多い。アイリッシュセッターは全身栗(くり)色の美しい犬種で、アイルランドの産。体高55~65センチメートル。小柄なスパニエル種は短めの四肢をしていて、体のわりには重量感がある。家庭犬としても愛好者が多い。アメリカ原産のアメリカンコッカースパニエルはスパニエルの代表的犬種で、体高約33~40センチメートル、長毛で毛色は黒、バフ、斑など多様。断尾する。イングリッシュコッカースパニエルは原産地イギリス。体高38~42センチメートル。毛色はローン、黒、斑など。ラブラドルレトリバーの原産はイギリス。体高54~62センチメートル。毛色は黒、黄、クリームなど。日本では鳥猟犬としてよりも盲導犬として知られている。ワイマラナーは原産地ドイツ。体高57~70センチメートル。独特の灰褐色を呈し、断尾する。獣猟にも用いられる。
[増井光子]
獣猟犬グループ
使役犬グループ
牧羊牧畜犬グループ
テリアグループ
愛玩犬グループ
非猟犬グループ
non sporting dogs 前述のグループに属さない一般家庭犬をいう。チャウチャウは中国原産の犬種で、体高50センチメートル。毛色は赤、ブルー、黒、クリームなど。ブルドッグは原産地イギリス。体重22.5~25キログラム。短毛で毛色はブリンドル、フォーン、斑(はん)など。ダルメシアンは原産地クロアチア。体高48~60センチメートル。短毛で、白地に黒かレバー色の丸い小斑がある。
[増井光子]
日本原産犬種
ドッグショー
前述のさまざまな犬種の作出、改良にドッグショーが果たした役割は大きい。多数の純血犬を一堂に集めて優劣を競うこの催しは、1859年にイギリスで開催されたのが最初である。品種改良のために体形の良化を目的とし、総合的な美しさに重点を置くベンチショーと、能力向上を目ざす各種作業犬のフィールドトライアルや訓練大会などがあるが、一般には前者をドッグショーとよぶ。また、全犬種が出場するもの、単犬種だけのもの、用途別に区分されたグループを対象とするグループ展などにショーのタイプが分けられるが、一般の人が見て楽しいのは全犬種展である。出場するイヌは、年齢、性別、既取得資格などによりクラス分けされ、勝ち抜き戦で席次を定めていく。最近は人気が高く終年開催されるが、普通は春、秋に多い。世界的に有名なのは、イギリスのクラフト展、アメリカのウェストミンスター展などである。
[増井光子]