日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナダ文学」の意味・わかりやすい解説
カナダ文学
かなだぶんがく
イギリス系カナダ文学
カナダが国として発足するのは1867年であるが、その1世紀以上も前からイギリス系の入植が始まっており、カナダ文学の誕生は、国の発足に先だつ。18世紀中葉のケベックにおける見聞をもとにしたフランシス・ブルックFrances Brooke(1724―1789)の書簡体小説『エミリー・モンタギュー物語』(1769)、オリバー・ゴールドスミスの長編詩『新興の村』(1825)、オンタリオ州における開拓生活を描いたムーディーの『荒地奮闘記』(1852)などは、そういう時期の特筆すべき作品である。1880年代に入り、D・C・スコットをはじめとしてアーチボルド・ランプマンArchibald Lampman(1861―1899)、チャールズ・ロバーツCharles G. D. Roberts(1860―1943)、ブリス・カルマンBliss Carman(1861―1929)などカナダ生まれの詩人が次々と優れた詩編を発表し始め、カナダ文学もようやく成長期に入るかにみえた。しかしこれらの詩人は範をイギリスの、とくにロマン派詩に求める傾向が強く、カナダ詩人として強烈な個性に欠けるきらいがあった。
[平野敬一]