デジタル大辞泉 「シルクスクリーン」の意味・読み・例文・類語 シルクスクリーン(silkscreen) 1960年代以降、芸術の大衆化とともに盛んになった印刷技法。木・金属などの枠に絹などの織り目の細かいスクリーンを張り、それを通して版の下に置いた素材にインクか絵の具を直接刷る。セリグラフィー。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「シルクスクリーン」の意味・わかりやすい解説 シルクスクリーンしるくすくりーんsilkscreen 版画技法の一つ。セリグラフィserigraphyともいう。枠に張った絹︵ナイロンやテトロンを用いることもある︶のスクリーン︵幕︶を介して印刷する方法で、第二次世界大戦後アメリカを中心に急速に発達した。製版の方法には次のようなものがある。 (1)刃物などで図柄を切り抜いた原紙をスクリーンの裏側に貼(は)り付ける方法で、原理的にはステンシルの応用といえる。 (2)筆あるいは型紙を用いてスクリーンの裏側に水溶性の糊(のり)や乳剤で図柄を描き、その上からニスを塗る。ニスが乾いてからスクリーンに水をかけると、乳剤を施した部分のニスが乳剤といっしょに洗い流されて版ができあがる。 (3)スクリーンに感光乳剤を塗り乾燥させる。これにあらかじめ用意した原稿のフィルムを当てて感光させて水洗いし、未感光の乳剤を除く。また網かけ処理をしたフィルムを用いれば、微妙な明暗のグラデーションも確実に再現できる。 いずれの場合も多色刷りの作品には色の数だけスクリーンが必要である。 このようにして用意したスクリーンを紙の上にのせ、枠の中に置いたペースト状のインキをウレタンやゴムのスクィージでしごくようにしてスクリーンの布目に擦り込む。布目があらわになった部分を通して、紙に図柄が刷り出される。木版やリトグラフと併用されることも多い。制作法が比較的容易であり、かなり大版の作品も制作が可能なため、今日の主要な版画法の一つとなっている。アメリカでは、1950年代後半ごろから、ハード・エッジ、オプ・アート、キネティック・アートなどの展開に伴って多用された。また、機械印刷的な表現も可能なので、ポップ・アートの芸術家たちも愛用した。 ﹇八重樫春樹﹈ ﹃視覚デザイン研究所著・刊﹃シルクスクリーンハンドブック﹄︵1980︶﹄▽﹃小本章著﹃シルクスクリーンの発想と展開﹄︵1980・美術出版社︶﹄ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「シルクスクリーン」の意味・わかりやすい解説 シルクスクリーンsilk screen 版画や印刷の技法で,孔版︵合羽版,謄写版︶の一種。セリグラフィーserigraphyともいう。絹などの薄い布を枠に張り,白く残したい部分だけを裏から紙などを当てて接着しインクが通らないようにした後,上から布目を通してインクを刷る技法。孔版の原理は古くから用いられ,旧石器時代の洞窟の壁に残る人の手型はその最も古い例であろう。その後は散発的にしか用いられていないが,日本の江戸時代の型染に最も洗練された技法として実用化されている。スクリーンを張った現在のような形式は1850年ごろのロンドンで開発され,次いでリヨンで布地染めに利用されたものである。それが紙に応用されたのは1920年のベルリンであったが,アメリカ合衆国で印刷法として普及し,ヨーロッパにも広がった。芸術版画として認められたのは,やはり30年代のアメリカで,ヨーロッパでは50年代に入ってからである。しかし写真複写や製版の多面性をもつために,ポップ・アート以後はきわめて重要な版画の表現技法になっている。 執筆者‥坂本 満 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報