改訂新版 世界大百科事典 「ヘビイチゴ」の意味・わかりやすい解説
ヘビイチゴ (蛇苺)
Duchesnea chrysantha Miq.
匍匐︵ほふく︶枝をのばし群生し,初夏に真赤なイチゴ状果をつけるバラ科の多年草。原野や田のあぜによく見られ,葉は3出複葉で互生し,長い柄がある。春,葉腋︵ようえき︶から長い柄をのばし,上向きに1個の花をつける。花弁は5枚,黄色で,萼片および副萼片がある。おしべ20本,めしべ多数で,開花後,花托は球形にふくらむ。その上に多数の瘦果︵そうか︶をつける。
ヘビイチゴのイチゴ状果は有毒であるといわれているが,実際は無毒である。オランダイチゴと形は似ているが,そのイチゴ状果は多汁質でなく,甘さも香りもない。中国では,全草が薬用として利用される。非常に似た種にヤブヘビイチゴD.indica ︵Andr.︶ Fockeがある。これはやや大型で,葉の緑色も濃く,瘦果はほとんどしわがなく光沢がある。
ヘビイチゴ属Duchesneaはキジムシロ属やオランダイチゴ属と類縁が近く,外国では庭園などに植栽される。
執筆者‥鳴橋 直弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報