改訂新版 世界大百科事典 「ロウバイ」の意味・わかりやすい解説
ロウバイ (蠟梅)
Chimonanthus praecox (L.) Link
ウメの咲くころ,蜜蠟に似た黄色のかわいい花をつけるロウバイ科の花木。落葉低木で,高さ2~4m。葉は全縁で対生する。早春,葉の展開前に他の花に先立って咲く。花被片は多数で,萼片から花弁へと連続して区別できない。内花被片は暗紫色,中片は黄色で外片は鱗片状。ソシンロウバイ︵素心蠟梅︶といって,内片も黄色い品種も栽植されている。中国原産で,日本には江戸時代初期に入り,18世紀の半ばころに日本あるいは中国からイギリスへ輸出され,winter sweetと呼ばれるようになったという。
ロウバイ科はモニミア科やクスノキ科に近い木本性の科で,約4属10種を含む。ロウバイ属ChimonanthusとSinocalycanthus属が中国に,花木となるクロバナロウバイ属Calycanthusが北アメリカに,Idiospermum属がオーストラリアにと,著しい隔離分布をする。壺状にへこむ花床や,植物体全体に皮層走条をもつという特異な形態を有する。
執筆者‥植田 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報