日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウメ」の意味・わかりやすい解説
ウメ
うめ / 梅
Japanese apricot 英語
prunier de Japon フランス語
[学] Prunus mume Sieb. et Zucc.
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。高さ5~10メートルになり、樹皮は暗灰色で堅く、割れ目ができる。葉は互生し、卵形、長さ4~8センチメートルで先はとがる。2~3月、葉の展開に先だって径2~3センチメートルの5弁花を開き、芳香があり、柄はほとんどない。多数の雄しべと1本の雌しべがあり、子房に毛がある。果実は球形、径2~3センチメートルの核果で、一側に浅い縦の溝があり、果面に微毛を密生する。6~7月、黄色に熟す。果肉は酸味があり、中の核は楕円(だえん)形で表面に凹点が多く、果肉と核は密着している。中国中部の原産で、日本で野生化したものとされている(大分県と宮崎県に自生するとの説もある)。梅は『万葉集』ではウメといい、平安時代以後はすべてムメとよび、現代はウメと称している。ウメは中国語の梅Meiから転化したとも烏梅(うばい)から転化したともいわれている。ウメには異称が多く、好文木(こうぶんぼく)、花の兄(はなのあに)、春告草(はるつげぐさ)、匂草(においぐさ)、香散見草(かざみぐさ)、風待草(かぜまちぐさ)、香栄草(かばえぐさ)、初名草(はつなぐさ)などがある。
[小林義雄 2019年12月13日]
種類
ウメには多数の品種があり、中国から渡来したもののほかに、日本でも江戸時代には品種がつくられ、現代では300種以上ある。花梅は野梅(やばい)系、紅梅(こうばい)系、豊後(ぶんご)系の3系に大別されている。
[小林義雄 2019年12月13日]
野梅系
紅梅系
豊後系
天然記念物・名所
多くの株になる臥竜梅(がりゅうばい)の古木には、国の天然記念物である宮城県仙台市の朝鮮ウメ、山口県柳井(やない)市の余田(よた)臥竜梅、宮崎県宮崎市高岡町の高岡の月知梅(げっちばい)、宮崎県新富町の湯ノ宮の座論梅(ざろんばい)、鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市の藤川天神の臥竜梅などがある。有名な梅林には、茨城県水戸市の偕楽園(かいらくえん)梅林、横浜市の大倉山梅林、静岡県熱海(あたみ)市の熱海梅林、奈良県の月瀬(つきがせ)梅林、和歌山県みなべ町の南部(みなべ)梅林などがある。
[小林義雄 2019年12月13日]