デジタル大辞泉 「三四郎」の意味・読み・例文・類語 さんしろう〔サンシラウ〕【三四郎】 夏目漱石の小説。明治41年︵1908︶発表。熊本から上京した大学生小川三四郎の、里見美禰子への淡い恋を描く。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「三四郎」の意味・読み・例文・類語 さんしろうサンシラウ【三四郎】 (一)[1] 三味線のことをいう、人形浄瑠璃社会の隠語。さんしろ。 (一)[初出の実例]﹁酒がぶんずい、女郎がやんま、三味線が三四郎(ラウ)、やるものぢゃない﹂(出典‥歌舞伎・傾情吾嬬鑑︵1788︶序幕) (二)[2] 小説。夏目漱石作。明治四一年︵一九〇八︶﹁朝日新聞﹂に連載。熊本から上京した小川三四郎と里見美禰子との淡い恋を物語の軸にしながら当時の大学生の生活を描くとともに、広田先生を通じて文明批評を展開する。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「三四郎」の意味・わかりやすい解説 三四郎さんしろう 夏目漱石(そうせき)の長編小説。1908年︵明治41︶9月1日より同12月29日まで、東京・大阪の両﹃朝日新聞﹄に同時に連載。熊本の高等学校を卒業した小川三四郎が文科大学に入学のため上京してくるところから小説は始まる。老いた母の住む田舎(いなか)を背後に振り捨てた気の三四郎は、東京で、﹁偉大なる暗闇(くらやみ)﹂と評される広田先生から思想や学問の深さを教えられ、勝ち気で美しい里見美禰子(みねこ)から青春のきらびやかな世界に誘われる。友人の佐々木与次郎(よじろう)も軽薄な言動なりに三四郎を啓発するところが多かった。文科大学の四季を背景に、多感な青春の哀感と、そのゆえの﹁迷へる羊﹂に似た危うさを描いた作品で、日本の近代文学にはまれな青春小説として多くの読者を集めている。﹁無意識の偽善家﹂を描いたという美禰子のモデルに、森田草平と心中未遂を演じた平塚らいてうを擬する説もある。日本は亡(ほろ)びる、囚(とら)われては駄目(だめ)だなど、広田に托(たく)された文明批評も辛辣(しんらつ)である。 ﹇三好行雄﹈ ﹃﹃三四郎﹄︵岩波文庫・旺文社文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫︶﹄▽﹃三好行雄著﹃鴎外と漱石﹄︵1983・力富書房︶﹄ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三四郎」の意味・わかりやすい解説 三四郎さんしろう 夏目漱石の小説。 1908年発表。﹃それから﹄ (1909) ,﹃門﹄ (10) と合せて3部作とされる。大学入学のため上京した三四郎は,東京での新しい生活のなかで美禰子と知合い,次第に心をひかれていく。美禰子の無意識の媚態が彼の心を奪ったのである。しかし彼女は結局は常識的な結婚をしてしまい,三四郎を失望させる。三四郎の経験を通じて作者は青春の迷路を彷彿したのである。美禰子は同じ作者の﹃虞美人草﹄の藤尾と同タイプの自我に目ざめた﹁新しい女﹂として描かれている。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
百科事典マイペディア 「三四郎」の意味・わかりやすい解説 三四郎【さんしろう】 夏目漱石の中編小説。1908年《朝日新聞》に連載。《それから》《門》と三部作をなす。熊本の高校から東京の大学に来た青年三四郎を通じて明治末期の大学生生活を,卓抜な文明批評を散りばめて描く。漱石初期の【てい】徊(ていかい)趣味から後期への過渡的作品として注目される。 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三四郎」の解説 三四郎 さんしろう 夏目漱石の同名の小説の主人公。熊本の五高から東京帝大文科にすすみ,都会的な里見美禰子(みねこ)と交際するようになるが,やがて失恋する。明治41年「朝日新聞」に連載され,東大の三四郎池の名の由来となった。姓は小川。 出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の三四郎の言及 【夏目漱石】より …入社第1作︽虞美人草︾は,一文を草するのに俳句を一句ひねるがごとき苦心を重ね,美文に陥る嫌いはあるが,一見古めかしい勧善懲悪の意匠の下に卓抜な文明批評をおこなっている。つづく︽三四郎︾(1908),︽それから︾(1909)では文明批評とからませた人間の存在追求に深さを増し,︽門︾(1910)にいたって片隅に生きる男女の日常を描いて,澄んだ静謐︵せいひつ︶な形而上的感触を暗示する作風を示した。しかしこの年の8月,宿痾の胃潰瘍から転地療養先で大吐血をし,生死の境を彷徨した。… ※「三四郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」