人間機械論(読み)ニンゲンキカイロン(英語表記)theory of human machine

デジタル大辞泉 「人間機械論」の意味・読み・例文・類語

にんげん‐きかいろん【人間機械論】

《〈フランスhomme-machine》人間のあらゆる機能は物理的に分析できるとし、人間は一種の機械であるとする考え。フランスのラ=メトリの同名の著書によって確立

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精選版 日本国語大辞典 「人間機械論」の意味・読み・例文・類語

にんげん‐きかいろん【人間機械論】

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] homme machine の訳語 ) フランスの医師・哲学者のラ=メトリが、その著「人間機械論」で展開した、人間の心の動きも肉体の動きも物理的に分析できる、人間は一種の自動機械であるという考え方

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改訂新版 世界大百科事典 「人間機械論」の意味・わかりやすい解説

人間機械論 (にんげんきかいろん)
theory of human machine


︿

 181748︿2020

 12322-調


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人間機械論」の意味・わかりやすい解説

人間機械論(哲学)
にんげんきかいろん
theory of human machine 英語
homme machine フランス語


1748

 

 

 



19791980

人間機械論(ラ・メトリの著書)
にんげんきかいろん
L'hommemachine

フランスの医師・哲学者ラ・メトリの主著。1748年刊(1747年末にライデンで極少部数が刊行されたが、一般的には1748年刊行のベルリン版が流布本とされている)。「人間は機械である。また全世界には種々雑多に様態化された一つの物質が存在するのみである」。これが本書の基本的主張である。人間の本質の探究の確実な案内者は「観察と経験」であり、「人間と動物の内臓を開いてみる」なら、両者の区別は程度の差にすぎないことがわかる。したがって人間は動物つまり「感覚をもつ物質」であり、また魂のすべての能力は脳の組織に依存するから、思考は「物質の一属性」にほかならない。さらに「物質はひとりでに動くもの」であるから、デカルトのいうように動物が機械であるなら、人間は「自ら発条(はつじょう)を巻く機械」である。人間を動物から区別するものは、脳の微細な構造に生来する想像力とことばの使用に基づく教育である。つまり「人間とは経験を積んだ機械である」とした。

 このように自然のあらゆる運動が物質の各部分のもつ原動力の活動によって生ずるなら、もはや人間の霊魂と同様に神も不用であろう。本書は物質それ自体に「運動の原理」を認め、生命のある物体に「感覚能力」を付与することによって唯物論を一段と発展させ、ドルバックやディドロに大きな影響を及ぼした。

[坂井昭宏]

『杉捷夫訳『人間機械論』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人間機械論」の意味・わかりやすい解説

人間機械論
にんげんきかいろん
L'Homme machine

フランスの唯物論哲学者ジュリアン・ド・ラ・メトリの著書。 1747年刊。 18世紀唯物論の代表作。デカルトの動物機械論の延長上に位置し,人間と動物との根本的違いを認めず,魂は脳の物質的組織の一部であり,人間はこの動力によって動かされる機械であるとの徹底した機械論的唯物論を展開した。この立場から著者は,生を愛し死を恐れないエピクロス的な徳と自然への愛情を引出している。

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世界大百科事典(旧版)内の人間機械論の言及

【生物学】より

…こうした各種の生命観は,実験や観察に方向づけを与える一方,生命観のほうも新しい知見によって変化をとげていった。18世紀なかごろにラ・メトリーが,デカルトの動物機械論を急進的に延長してとなえた《人間機械論》は,生命を物質原理に帰着させようとする主張であったし,A.vonハラーの《人体生理学要綱》(1756‐66)は,被刺激性という特有の原理によって,生理現象を統一してとらえようとした。こうして知識が重なり,多面化するにつれて,生命の包括概念が求められ,また生命現象を対象とする独自の学の必要が感じられて,19世紀の夜明けとともに〈生命の学〉としての生物学が提唱されたことは必然の流れであり,その後の方向を予告するものでもあった。…

【生命】より

…ただデカルトは人間だけには霊魂の存在を認めた。これに対し次の18世紀のラ・メトリーは,《人間機械論》(1747)において人間の霊魂をも否定し,生命機械論を徹底させた。かれもまたゼンマイ時計を比較の対象とした。…

【人間機械論】より

…心と身体を接触させる場所としてデカルトは脳髄の中央にある松果腺を擬したが,生理学的にみて不当である。しかし,この心身の結合のしくみをめぐって,デカルトによって提起された哲学問題は,〈心身問題〉と呼ばれて,人間機械論の中心にかかわる問題として現在に至っている。 18世紀に至り,フランスの医師ラ・メトリーは徹底した唯物論の立場をとって《人間機械論》(1748)という著作を著し,人間を,精神をも含めて,完全に機械であるとする議論を展開した。…

【ラ・メトリー】より

…フランドルの戦闘に従軍したが,45年に唯物論的立場を表明した著書《魂の自然誌》を刊行したため,軍医の地位を失った。3年後,さらにその立場を推し進めた《人間機械論》を発表,人間は機械であり,人間の思考は,脳髄の単なる性質にすぎないと主張した。彼に先立つデカルトは,動物は機械であるとしながらも,精神をもつ人間だけはそこから除外し,動物と人間との差別を強調していたのであるが,ラ・メトリーはこの差別を撤廃し,デカルトの機械的自然観を人間にまで徹底させたのである。…

【機械論】より


︿︿171819() 

【サイバネティックス】より


2The Human Use of Human BeingsCybernetics and Society(1950) I Am a Mathematician(1956)

【デカルト】より

…彼はまた生命現象をも機械的に理解し,たとえば動物は一つの自動機械とみなされるのである(動物機械論)。
[人間論と道徳]
 デカルトによれば,人間の身体もまた,心臓を一種の熱機関とするきわめて精巧な自動機械にすぎない(人間機械論)。しかし人間は動物と違って精神をもち,しかも本来は実在的に区別されるべき精神と物体がここでは固く結びついて一体をなしている。…

※「人間機械論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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