デジタル大辞泉
「人魂」の意味・読み・例文・類語
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ひと‐だま【人魂】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 遊離魂。死者の霊。ふつう青白く尾を引いて空中を飛ぶという。死者の霊は四九日間、旧宅を去らないとか、死ぬ直前に出るとか、墓場に出るなどという。鬼火(おにび)。陰火(いんか)。火の玉。人魂火。
(一)[初出の実例]﹁人魂(ひとだま)のさ青(を)なる君がただ独逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ﹂(出典‥万葉集︵8C後︶一六・三八八九)
(三)② 流星の俗称。
(一)[初出の実例]﹁未時星出レ自二空中一。南東歴行。︿略﹀尾長五六尺許。観者奇怪。謂二之人魂一﹂(出典‥日本紀略‐昌泰二年︵899︶二月一日)
(四)③ 歌舞伎の小道具の一つ。初めは真鍮(しんちゅう)の色玉、後にガラス玉を真綿で包み、中へ火を入れたりしたが、新しくはぼろや海綿に焼酎を浸みこませ、燃やして陰火に擬し、空中を飛ぶように見せるもの。
(一)[初出の実例]﹁人魂で草りをさがす楽屋番﹂(出典‥雑俳・柳多留‐五六︵1811︶)
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人魂 (ひとだま)
霊魂が身体から遊離して起きる怪火現象。浮遊している火の玉を人魂とみる例が一般的といえるものの,火の玉と人魂とを区別している例もある。この現象は幻覚の一種であるが,生命の根元が霊魂にあり,その霊魂が肉体より離れることによって死や病気などさまざまな異常な現象が起こるという遊離魂の観念にもとづいている。シャマニズムの観念,魂呼ばい︵魂呼び︶や沖縄本島のマブイ︵霊魂︶落しやマブイ込めの習俗などの観念と一連のものといえる。人魂は死の前後に,夕方から朝方にかけて出現することが多いが,昼間に出現することもあり,死後かなりの期間を経たものが出現する場合もあるという。この場合にはこの世に未練を残して死亡した人の霊が多いといわれる。また人魂の形・色・出現の状態もさまざまで,円形・楕円形,青白・赤・黄,ふわふわと飛ぶ,ぼーっと出るなどといわれ一様ではない。なお,︽万葉集︾巻十六に載る︿怕︵おそろ︶しき物の歌﹀のうちに,︿人魂のさ青︵お︶なる君がただ独り逢へりし雨夜の葬︵はぶ︶りをぞ思ふ﹀という一首がある。
執筆者‥宮本 袈裟雄
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人魂
ひとだま
火の玉ともいい、死者の霊をいう。人が死ぬときに人魂が出るといい、夜分に出ると青色の光を発して空中を飛ぶという。地上に落ちたものを見ると﹁こんにゃく﹂のようなものという。人魂が川を越すと本人はよみがえり、あと3年ぐらい生存できるともいう。大分県旧大野郡︵現、豊後大野(ぶんごおおの)市など︶では、﹁ぬえ﹂という鳥が鳴くと人が死ぬのでこの鳥を﹁ヒトダマ﹂とよんでいる。青森県下北(しもきた)半島の小川原(おがわら)地区では、人の死ぬ前か死と同時に肉親や知人のところへくる人魂を、﹁タマシ﹂または﹁タマンコ﹂という。﹁タマシ﹂は人によって見える人と見えない人とがある。また前に死んだ人の人魂が、病人を迎えにくることもあるという。病み衰えた老人の人魂は弱々しく、若い者の事故で死んだときなどの人魂は勢いがよいという。人の末期(まつご)に際して魂(たま)呼びということをするのも、この人魂信仰に基づいている。奈良県宇陀(うだ)市菟田野(うたの)区では﹁タマヨビ﹂と称して末期の病人を起こして水を与え、死ぬと死者の着物を屋根の上にほうり上げるという。
﹇大藤時彦﹈
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人魂
ひとだま
死の前後あるいは生存中の肉体から遊離して空中を浮遊すると信じられる魂。青または赤,黄色の発光物をいい,その多くは尾をひいて飛ぶといわれる。青魂,飛魂,風魂,飛物,鬼火,幽霊火,火玉,タマセなどの名称がある。科学的には,リンが燃える物理現象にすぎないとされるが,人の体内には霊魂が宿るとする観念と結びついて信じられるようになったと考えられる。
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人魂【ひとだま】
人の死の前後に身体を放れて遊飛するという霊魂。夜間空中を飛ぶ怪火の正体とされ,火の玉と呼ぶ地方もある。︽万葉集︾にも見え,その色は青白く,球状で尾を引くと考えられている。→鬼火
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普及版 字通
「人魂」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の人魂の言及
【鬼火】より
…怪火の一つで,暗い雨夜に湿地や墓地などで燃えるという火。燐火︵りんび︶,人魂︵ひとだま︶,火の玉ともよばれ,形は円形,楕円形,杓子形などで尾をひいて中空をとび,青色のほか黄色や赤色の火もある。人が死ぬと同時にその家の藪から青白い火の玉が出るとか,人の魂は家から知人の所へまわってから寺へ入るなどともいう。…
※「人魂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」