精選版 日本国語大辞典 「副王」の意味・読み・例文・類語 ふく‐おう‥ワウ【副王】 (一)〘 名詞 〙 主たる王の下にあって、一地方を治める王。また、ヨーロッパのいくつかの国の領土やスペイン、ポルトガルなどの海外植民地に置かれた高位の行政官。 (一)[初出の実例]﹁愛蘭の副王なりし甘伯田(カムプデン)に稟告し、戸部の一官に用ひられんことを求む﹂(出典‥西国立志編︵1870‐71︶︿中村正直訳﹀九) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「副王」の意味・わかりやすい解説 副王ふくおうvirrey スペイン語vice-rey ポルトガル語viceroy 英語 ヨーロッパのいくつかの国の領土や海外植民地に置かれた、国王代理を務める高位の行政官。15世紀、スペインのアラゴン王国の領地セルダーニャ、シチリアに置かれ、イサベル1世、フェルナンド5世両王のスペイン共治時代になると、そのほかカタールニャ、アラゴン、バレンシア、マジョルカ、ナバラ、ガリシア、ナポリも副王によって治められた。副王は、強大な権限をもって副王領の行政・警察権を握り、また議会を招集することができた。コロンブスも、1492年の航海に先だち副王の称号を与えられたが、16世紀に入りスペイン人によるアメリカ大陸の征服が行われると、メキシコ︵別名ヌエバ・エスパニャ、1535︶、ペルー︵1542︶にも副王が任命され、新大陸を二分して広い領域にわたり直接統治した。18世紀に入ると、ヌエバ・グラナダ︵1717︶、ラ・プラタ︵1776︶地方も副王領となった。新大陸の副王は、植民地担当地域の行政・軍事の最高責任者として強大な権力を与えられていたが、反面、本国からの巡察、査察等により厳しく監視されていた。 副王制は、スペイン本国では18世紀のフェリペ5世時代にナバラを除いて廃止されたが、アメリカ大陸では19世紀初頭の独立期まで続いた。副王は、ポルトガル領インド︵1505︶、ブラジル︵1720︶にも置かれ、英領インドでも、国王の直接統治が始まる1858年以後、それまでのインド総督が副王と称せられるようになった。 ﹇増田義郎﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
山川 世界史小辞典 改訂新版 「副王」の解説 副王(ふくおう)virrey スペイン語のビレイの訳。スペイン王室下の諸王国において国王の代理として最高責任を持つ行政官。王権の代行者を置くことは,中世末期のアラゴン連合王国のシチリア,セルダニャなどで行われていたが,イサベル,フェルナンドのカトリック両王時代に,アラゴン,ナバラ,ガリシア,ナポリ,シチリアなどに,副王が任命された。アメリカの海外領土が征服されると,初め1535年ヌエバ・エスパニャ(メキシコ),ついで43年ペルーに副王が置かれ,アウディエンシアを統括してそれぞれの地域の統治と防衛に責任を持った。18世紀にペルー副王領は三つに分割され,北アンデス地方のヌエバ・グラナダおよび南のラ・プラタの両副王領が設置された。 出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報