デジタル大辞泉
「基礎体温」の意味・読み・例文・類語
きそ‐たいおん〔‐タイヲン〕【基礎体温】
基礎代謝が行われている状態のときの体温。普通は朝、目を覚ました直後に舌下で計る。女性では、排卵後に体温の上昇がみられるので、受胎調節や健康管理に応用される。BBT︵basal body temperature︶。
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きそ‐たいおん‥タイヲン【基礎体温】
- 〘 名詞 〙 正常の睡眠をとり、朝、目をさました直後の体温。女性の排卵日を知るためなどに用いられる。
- [初出の実例]「基礎体温を毎日はかっていれば排卵日がわかるわけで」(出典:からだと食物(1959)〈吉川春寿〉一)
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基礎体温
きそたいおん
飲食、運動、精神感動など体温を変動させるような条件のないときに測定される体温をいう。普通、6~8時間の安静睡眠後、早朝目が覚めたら、起き上がる前に専用の婦人体温計を用い、その水銀球部を舌の裏に挟み、軽く口を閉じて約5分間測る。微少な体温の差を測るので、普通の体温計の1℃を20目盛りにしてある。正常な女性の基礎体温はおよそ4週ごとの卵巣周期の変化を反映して典型的な変化を示すので、性周期の異常に関する種々の診断をはじめ、妊娠に関する異常の診断、治療、受胎調節への応用など、実地に有用な資料となる。
﹇新井正夫﹈
毎朝測った基礎体温を一定の様式の基礎体温表に記入し、これを線で結んだ曲線︵折れ線グラフ︶をいう。排卵のある正常な卵巣機能をもつ場合には、月経周期の前半は低温期間で低温相、後半は高温期間で高温相といい、低温相と高温相を示す基礎体温曲線を二相性であると表現する。両者の温度差は普通0.4℃以上あるのがよい。低温相から高温相に移行する時期が排卵期で、低温相の最終日をいちおう排卵日の目安とする場合があるが、体温曲線にかならずしも陥落が認められるとは限らない。
基礎体温曲線と月経周期との関係は、高温相の曲線の型は卵巣の黄体機能を反映するので、卵巣機能を知る手段の一つとして利用される。基礎体温曲線の型によって、(1)卵巣の働きの全般的な良否、(2)観察時点で月経周期がどの時期にあるか、(3)曲線が二相性を示して排卵が先行している排卵性月経であるか、あるいは低温相のみの一相性の曲線で無排卵性月経であるか、(4)月経周期が規則的であるかどうか、排卵期までの期間が長いか短いか、(5)排卵から月経までの期間が短く、高温相の温度に高低の不規則な変動がある黄体機能不全症が認められるかどうか、などを知ることができるので、診断や治療方針の決定の際に参考になる。高温相が2週間以上続くときは妊娠である可能性を示し、3週間続けばほぼ妊娠とみてよく、妊娠の早期診断にきわめて有用である。
﹇新井正夫﹈
排卵は、基礎体温曲線上の低温相から高温相に移行する時期におこると考えられている。排卵された卵子は卵管采(さい)で採取され卵管膨大部で上昇した精子と出会い融合したとき受精が成立するが、卵子の受精能力は排卵後長くて24時間保たれ、精子の生存期間は約3日間なので、基礎体温が高温相となって3日以上経過すれば受精の機会はなくなる。したがって、高温相の3日目を過ぎてから次回の月経までの期間は受精が成立しない期間となるわけで、月経周期が規則的な場合には避妊あるいは妊娠を計画的に行うのに利用できる。また﹁婦人の排卵期は次回予定月経前12~16日の5日間にある﹂という荻野(おぎの)学説を裏づける根拠の一つになっている。ただし、基礎体温曲線を妊娠に利用する場合、その曲線から排卵日の予測はできないことに注意する必要がある。排卵は基礎体温曲線がはっきり高温を示したときに初めて終わっていることがわかるわけで、上昇しきった日から3日以後が妊娠しない時期となる。また排卵に伴う自覚症状として帯下(たいげ)感︵おりもの︶や排卵期に感ずるいわゆる中間痛なども参考になる。
月経周期はまた個人差があり、同一人でも種々の原因によっても影響を受け、7日以内の変動は正常でも認められるので、自分の月経周期をよく知るためには過去の6か月くらいの基礎体温曲線を検討する。そのほか、体温表には、その日の体調、下腹痛、血性帯下、月経期間と出血量の多少、凝血の有無などをなるべく詳しく記入しておくと、自分の健康メモになると同時に、不意の病気で診察を受ける場合にも役だつ。
﹇新井正夫﹈
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基礎体温 (きそたいおん)
basal body temperature
B.B.Tと略す。筋肉運動,飲食物摂取,精神作用など,体温上昇の要因が加わらないときの体温をいう。具体的には,朝目覚めたときの体温で,女性の性周期や卵巣機能を知る目的で使われる。この場合,婦人体温ともいう。月経周期につれて体温に変動のみられることは古くから知られていたが,この基礎体温測定法によって,排卵の有無や排卵の時期を判定できることが明らかになった。そのため現在では,基礎体温の測定は,卵巣機能の有効な診断法として広く臨床的に用いられ,簡単で,だれにでもできることから,避妊や自分の性機能を知るために用いられている。
正常な月経周期では,基礎体温は卵胞期は低温相,黄体期は高温相の二相性を呈し,体温が低温から高温に移行する時期に排卵が起こる。これは,排卵が起こると,子宮内膜を着床に適した状態にするために,卵巣からプロゲステロンが分泌され,このプロゲステロンの体温上昇作用による。体温の型は図のように分けられるが,二相を呈する場合には排卵を伴う周期,一相性の場合には無排卵周期と診断される。また二相性の場合には,体温上昇の前日︵低温相の最終日︶を中心として前後2日ずつを加えた5日の間にだいたい排卵が起こるので,この期間を排卵期という。
体温は毎朝,床のなかで静かに横になったまま測る。測定の時刻は,毎朝正確に一致する必要はないが,だいたい同時刻であることが望ましい。
執筆者‥玉田 太朗
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基礎体温【きそたいおん】
絶対安静時の体温。普通は熟眠後の早朝起床時に口腔内で華氏で測定する。個人によりほぼ一定した体温が得られるもので,成熟した女性では,卵胞ホルモン期には低体温,黄体ホルモン期には高体温(平均約8°Fの上昇)を示し,両者の間に約1日間の最低体温期があり,これが排卵期に一致する。また基礎体温の上昇の継続は妊娠徴候として価値があり,無排卵性月経の女性では低温期のみが続く。このように基礎体温記録法は卵巣機能検査として重要で,排卵期を利用する避妊法,不妊治療にも応用されている。
→関連項目荻野説|体温計
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きそたいおん【基礎体温】
朝、目を覚ましたときに、床の中ではかった体温を基礎体温といい、これを表にしたものが基礎体温表です。
卵巣︵らんそう︶機能を知るうえで役立ち、排卵︵はいらん︶の有無や卵巣ホルモン︵とくに黄体︵おうたい︶ホルモン︶のはたらきを表わします。
正常周期︵28日周期︶の人では、前半の2週間は低く、これを低温相︵ていおんそう︶︵卵胞期︵らんぽうき︶︶といいます。排卵すると、卵巣にできた黄体から黄体ホルモンが分泌されて体温が上がり、この状態が2週間続きます。これを高温相︵こうおんそう︶︵黄体期︶といいますが、その後、黄体は退化し、体温は下降、次回の生理となります。2週間以上高温相が続いた場合は、妊娠の可能性が高くなります。
ただ、不眠やかぜ気味などのちょっとした体調の乱れで、基礎体温は微妙に変化しますので、そんなときは体温表の備考欄に、体調を記入しておきましょう。
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基礎体温
きそたいおん
basal body temperature
安静時における体温。通常,起床前に臥床のまま舌下で測定し,値を表に記入する。このために特別に目盛を拡大した婦人体温計を用いると便利である。性機能の正常な婦人の基礎体温は,月経時から排卵までは低い値を示し,排卵後には,黄体ホルモンの体温上昇作用によって高温を維持し,約2週間後に下降して月経が始るという2相性を示す。排卵日に一時的に体温が下降することもある。卵巣が活動していない初潮前,更年期以降の婦人,男性などの基礎体温は,周期的な高低の変化を示さない。また,妊娠すると高温期が持続する。したがって,卵巣機能,特に排卵の有無の診断,妊娠の診断,不妊症の検査,受胎調節法の補助などに有用である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の基礎体温の言及
【更年期障害】より
…閉経は卵巣から分泌される女性ホルモンがほとんどなくなったために起こるもので,実は卵巣ではそれ以前に排卵が停止している。したがって,[基礎体温]を測定するなどして排卵の停止を知れば,更年期の開始をもっと早くかつ正確に知ることができる。
[更年期障害の分類]
更年期障害は,自律神経(血管運動神経)障害,精神神経症状,性器症状などに大別される。…
※「基礎体温」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」