デジタル大辞泉
「本位貨幣」の意味・読み・例文・類語
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ほんい‐かへいホンヰクヮヘイ【本位貨幣】
(一)〘 名詞 〙 一国の貨幣制度の基礎となり、無制限法貨として通用する貨幣。価格の単位である金属︵金本位制の場合は金︶を素材とし、価値尺度として機能する。
(一)[初出の実例]﹁一、金銀両者を併用して本位貨幣として﹂(出典‥時事新報‐明治二六年︵1893︶一一月二日)
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本位貨幣
ほんいかへい
standard money 英語
Währungsgeld ドイツ語
法定された金︵銀︶純分を含有する鋳貨のこと。おもに近代的な貨幣制度である金本位制のものをさすが、それ以前であっても、価値尺度機能を果たす金属の鋳貨をさしてこのようにいう。特定の金属がすでに価値尺度となっている現実を基礎に、国家は本位standardを制定する。すなわち、特定金属の一定重量をもって価格の単位とし、これに貨幣単位名称を与えるのである。たとえば、日本の貨幣法︵1897年制定︶では、純金の重量750ミリグラムを価格の単位とし、これを円とよぶよう定めていたので、これに基づいて鋳造される10円金貨は、純金7.5グラムを含有していることになる。このような鋳貨を本位貨幣といい、補助貨幣と区別している。本位貨幣は、その金額に制限なく通用する無制限法貨であり、その品位︵他金属との合金の割合︶と量目︵重量︶は法定される。さらに、流通する本位貨幣の金量を維持するために﹁通用最軽量目﹂を定め、摩損によってこれを下回るものは引き換えられる。このような本位貨幣の鋳造・発行は、その﹁自由鋳造﹂﹁自由鎔解(ようかい)﹂︵金地金(じがね)の金貨鋳造が求められれば政府はこれに応じること、およびその逆︶による金の市場価格と鋳造価格︵純金750ミリグラム=1円︶との乖離(かいり)防止を通じて、また、金の自由輸出入、中央銀行券の金貨兌換(だかん)によって、価格標準を固定し、為替(かわせ)相場を安定させることとなった。
﹇齊藤 正﹈
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本位貨幣 (ほんいかへい)
一国の貨幣制度の基礎として,その額面価値と等価値の金属で鋳造された貨幣をいう。たとえば金本位制度における金貨がそれである。金本位制の場合,各国の貨幣の単位︵ポンド,ドル,円など︶は金の分量によって表示されていた。本位貨幣はこれによって価値尺度ないし価格標準としての機能をそなえた。1897年制定の貨幣法によって日本は金本位制に移行したが,同法2条は︿純金ノ量目二分︵1933年750ミリグラムに改正︶ヲ以テ価格ノ単位ト為シ之ヲ円ト称ス﹀と定められた。また同法3条によって20円,10円,5円の3種類の金貨が鋳造されたが,1931年金本位制が停止されて以来,金貨の発行は行われていない。金貨は日常の支払手段として使うには不便であり,しかも流通過程で摩損するので,国家は金貨と兌換︵だかん︶できる銀行券︵兌換券︶を中央銀行に発行させることによって,金本位制のシステムを維持していた。金本位制のなかでも,金貨ないし兌換券が流通する金貨本位制下における金貨が最も典型的な本位貨幣であるが,金貨が流通していない金地金本位制や金為替本位制においても,金が価値尺度機能を営んでいる以上,中央銀行保有の金貨は本位貨幣であるといえる。本位貨幣は正貨specieとも呼ばれて,金貨,金地金,金為替は銀行券発行の正貨準備として扱われ,保証準備である国債,商業手形など確実な有価証券と区別される。正貨準備のほかに保証準備の限度の決め方いかんによって,発券制度は種々の形態に分かれる。本位貨幣と兌換券︵現在は不換銀行券︶は国家から強制通用力を与えられ,しかもその金額に制限のない無制限法貨である。なお,小額取引の使用のために鋳造される補助貨幣は,その強制通用力の金額に一定の限度が設けられている。いずれにせよ,現在の管理通貨制のもとでは本位貨幣は存在せず,流通している現金通貨は不換銀行券と補助貨幣だけである。
執筆者‥石田 定夫
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本位貨幣
ほんいかへい
standard money
一国の貨幣制度の基本となる貨幣。金本位制国の金貨や銀本位制国の銀貨がその代表的な例。商品の価値尺度および価格の度量基準としての機能をもち,その価値はそれと純分および量目を等しくする貨幣素材の価値に等しい。この本位貨幣は正貨と呼ばれる。金本位制度のなかでも金貨と金地金との自由な交換が行われ,金貨が最も典型的な本位貨幣であるが,金貨が現実には流通しない金地金本位制度や金為替本位制度においても,金が価値尺度および価格基準の機能を果している以上,金貨が本位貨幣であることに変りはない。これら金貨,金地金,金為替は銀行券の兌換の基礎となり,正貨準備と呼ばれる。
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本位貨幣
ほんいかへい
価格の単位として貨幣制度の基礎をなす貨幣。歴史的には金・銀のいずれかが,価格の単位として貨幣の地位につくかの競争がくり返され,両者が並立する金銀複本位制がとられてきた。19世紀以来,漸次に金貨幣が先進各国の本位貨幣の地位に立ち,金本位制が採用されるに至った。日本では江戸時代,関東では金貨幣,関西では銀貨幣が価格の単位として慣習的に使用されていたが,明治政府は単一の通貨を本位とする貨幣制度の樹立をめざした。まず銀貨幣による取引慣行の禁止(銀目廃止)を実施,1871年(明治4)5月の新貨条例では金量目4分(1.5g)を1円とし,金貨幣を本位貨幣と定めた。しかし実際に金を本位貨幣とする貨幣制度は,97年10月の貨幣法施行以降である。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の本位貨幣の言及
【金本位制度】より
…
[定義]
一国の貨幣制度の基礎となる貨幣すなわち本位貨幣が[金]の一定量と等価関係におかれている制度。この制度のもとでは,(1)一国の通貨一単位の価値は一定量の金によって示され,それを法定[平価](金平価)と呼ぶ。…
【兌換券】より
…[本位貨幣](または正貨)との兌換が保証されている銀行券,正しくは兌換銀行券といい,兌換が停止された不換銀行券に対立する用語。政府紙幣も金貨兌換の約束で発行された場合もあったが,結果的に兌換が行われた場合はきわめて少なく,兌換券には政府紙幣を含めないのが通説である。…
【補助貨幣】より
…[本位貨幣]に対立する用語で,本位貨幣の補助として日常の小額取引の使用のために鋳造される貨幣。補助貨ともいう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」