デジタル大辞泉 「潜性」の意味・読み・例文・類語 せん‐せい【潜性】 対立形質において、雑種第一代では発現を抑えられるほうの形質。潜在して子孫に現れる。リセッシブ。⇔顕性。 [補説]かつては﹁劣性﹂と称した。→劣性﹇補説﹈ 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「潜性」の意味・わかりやすい解説 潜性せんせいrecessive 生物の1組の対立形質について、ヘテロ︵異型︶の遺伝子型をもつ個体で、形質として現れずに隠された性質、またはその遺伝子を潜性という。これに対して形質として現れる性質、またはその遺伝子を顕性という。この語は遺伝の法則を発見したメンデルが、エンドウの種子や莢(さや)の形、色など各種対立形質のなかの1組の対立形質をもつ親どうしの交配によって生じた雑種第1代で発現する形質をdominant︵優性︶、隠されて発現しない形質をrecessive︵劣性︶と名づけたのが最初である︵日本では長くそれぞれ﹁優性﹂﹁劣性﹂と訳されていたが、2017年ごろから﹁顕性﹂﹁潜性﹂を用いている︶。 潜性の形質は、生物にとって不利なものであっても、ヘテロの状態ではそれが発現しないため、生物集団のなかに長く保存されることが多い。ヒトにおいて潜性遺伝をする形質としては、全身の皮膚や毛髪にメラニン色素ができない先天性白皮症がある。ヒトの皮膚には、多くの色素細胞があり、黒色のメラニン顆粒(かりゅう)が含まれている。黒人ではこのメラニン色素が多く、白人はもっとも少なく、黄色人種はほぼ中間である。メラニンは、チロシンというアミノ酸にチロシンキナーゼという酵素が作用して形成されるが、この酵素に異常がおこるとメラニン色素ができずに白皮症になる。白皮症はどの人種にもあり、日本人にも2万人に1人くらいの頻度で現れる。そのほか、伴性遺伝をする遺伝病としては、血友病やレッシュ‐ナイハン症候群︵先天性プリンヌクレオチドの代謝異常。脳性小児麻痺、知能障害、高尿酸尿などをおこす︶などがある。また常染色体性の潜性遺伝病としては、フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、鎌型赤血球貧血症︵アフリカなどのネグロイドに多い遺伝病で、血色素に突然変異をおこし、強度の貧血をおこす︶、無カタラーゼ血症、色素性乾皮症などが知られている。 ﹇黒田行昭﹈ ﹃駒井卓著﹃人類の遺伝学﹄︵1966・培風館︶﹄▽﹃黒田行昭編著﹃21世紀への遺伝学1 基礎遺伝学﹄︵1995・裳華房︶﹄ [参照項目] | アミノ酸 | 遺伝子 | 遺伝子型 | 遺伝病 | エンドウ | カタラーゼ | 形質 | 顕性 | 酵素 | 雑種 | 染色体 | 対立形質 | チロシン | 伴性遺伝 | ヘテロ | ホモ | メラニン | メンデル | メンデルの法則 | 優性 | 劣性 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例