日本大百科全書(ニッポニカ) 「石錘」の意味・わかりやすい解説
石錘
せきすい
石製の錘具である。漁網用錘具としてばかりでなく、その用途は広い。おもな形態は次の4種。︵1︶手ごろな川原石の両端を打ち欠いた礫(れき)石錘。後期旧石器時代にすでに少量みられ、縄文時代にもっとも多く、下って現代まで使用されている。漁網錘としてよりも、もじり編み用の錘具として重要であったらしい。︵2︶川原石の両端に切目(きれめ)を入れた切目石錘。縄文時代中~晩期にみられる漁網錘である。︵3︶一周または十文字に溝を施した有溝(ゆうこう)石錘。縄文時代後期以降にみられる漁網錘。︵2︶︵3︶ともおもに内水面域で使用されている。︵4︶有頭大型石錘。中部地方の弥生(やよい)時代後期にとくに発達した。漁網錘ではなく、独木舟(まるきぶね)の錨(いかり)であったらしい。
﹇渡辺 誠﹈
﹃渡辺誠著﹃縄文時代の漁業﹄︵1973・雄山閣出版︶﹄