デジタル大辞泉
「祭服」の意味・読み・例文・類語
さい‐ふく【祭服】
1祭(さい)祀(し)のときに神官たちが着る衣服。日本の神社では、ふつう衣冠を用いる。
2 天皇が神事のときに着用する帛(はく)の御(おん)衣(ぞ)。
3 キリスト教で、ミサのときに司祭などが着る服。
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さい‐ふく【祭服】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 祭礼のときに着る衣装。大祭の時に祭礼奉仕の人たちが着る衣服。明治以降、一般神職は衣冠を、伊勢神宮の遷宮の時は束帯を用いる。
(一)[初出の実例]﹁祭服則忍鎧也﹂(出典‥中臣祓訓解︵12C後︶)
(二)﹁祭事、日有り。祭服既に成る﹂(出典‥江戸繁昌記︵1832‐36︶三)
(三)[その他の文献]︹礼記‐曲礼下︺
(三)② 天皇が神事の時に着用する帛(はく)の御衣(おんぞ)。特に大嘗祭(だいじょうさい)の小忌(おみ)の湯をつかったのちに着る白絹の闕腋入襴(けってきにゅうらん)の斎服。
(一)[初出の実例]﹁即御浴了、着二祭服一、入二神殿一︿初帛御服﹀﹂(出典‥御堂関白記‐長和元年︵1012︶一一月二二日)
(四)③ キリスト教で、ミサや洗礼などの時に司祭とその侍者が着用する衣服。式服。
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祭服
さいふく
祭祀(さいし)に仕えるときに着用する服。古く8世紀初頭の﹁衣服令(りょう)﹂には、礼服(らいふく)、朝服(ちょうふく)、制服(せいふく)の制があり、平安中期には、男子服に束帯(そくたい)、衣冠(いかん)、女子服に五衣(いつつぎぬ)、唐衣(からぎぬ)、裳(も)などができ、唐制模倣からわが国独自のものがつくられた。神道(しんとう)における祭服は、皇室の祭服、伊勢(いせ)の神宮の祭服、神宮以外の全国神社の祭服とに大別できる。
皇室の祭服は、さらに天皇、皇后、皇太子、同妃、皇族、掌典職(しょうてんしょく)職員とに分けられる。
天皇の御服は6種ある。
(1)御祭(ごさい)服―もっとも重大なる大嘗祭(だいじょうさい)と新嘗祭(にいなめさい)に着用される。純白生織りのままの絹地でつくる。
(2)帛御袍(はくのごほう)―純白の平絹(へいけん)の御服。大礼のとき、即位礼の当日、賢所(かしこどころ)の大前の儀および頓宮(とんぐう)より廻立殿(かいりゅうでん)に渡御(とぎょ)のときに召される。
(3)黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)―黄櫨染めで、桐(きり)・竹・鳳凰(ほうおう)・麒麟(きりん)の地文がある。宮中三殿の恒例の祭祀その他に召される。
(1)~(3)の様式は束帯(そくたい)で、生地に生絹(すずし)、練絹(ねりぎぬ)などの違いがある。
(4)御引直衣(おひきのうし)―御直衣の裾(すそ)を引いたもの。恒例の勅使発遣の儀に召される。
(1)~(4)は天皇のみが御着用になる御服である。
(5)御直衣(おのうし)―仕立ては束帯の縫腋(ほうえき)に同じで、臨時の勅使発遣の儀に召される。
(6)御小直衣(おこのうし)―節折(よおり)、奉納される御霊代(みたましろ)御覧のときに召される。
(4)~(6)の直衣は、衣冠単(ひとえ)の様式である。
皇后の御服は3種あり、様式は十二単(ひとえ)あるいはこれを簡略化したもの。
(1)帛御服(はくのごふく)―御五衣(おんいつつぎぬ)・御唐衣(おんからぎぬ)・御裳(おんも)などからなり、純白の平絹でつくる。即位礼当日、賢所大前の儀および大嘗祭に召される。
(2)御五衣・御唐衣・御裳―すべて絢爛(けんらん)の色彩を施したもの。即位礼当日紫宸殿(ししんでん)の儀のほか、(1)の儀に次ぐ重儀に召される。
(3)御五衣・御小袿(おんこうちき)・御長袴(おんながばかま)―年中の大祭・小祭を通じて召される。
皇太子の御服は、(1)斎服(さいふく)、(2)黄丹袍(おうにのほう)︵束帯︶、(3)衣冠単、(4)直衣の4種で、男子皇族の御服はだいたいこれに準ずる。ただし、黄丹袍は皇太子専用で、皇族はすべて黒袍。
皇太子妃の御服は、(1)五衣・唐衣・裳、(2)五衣・小袿・長袴、(3)袿袴(うちきはかま)の3種で、女子皇族はだいたいこれに準ずる。
掌典職職員は、恒例の祭服は、斎服または浄衣(じょうえ)で、大礼には、束帯または衣冠単を用い、内掌典はすべて袿袴を用いる。
伊勢の神宮における祭服は、恒例祭祀には生絹の斎服もしくは浄衣、式年遷宮のときは祭主以下束帯・明衣(みょうえ)・衣冠・斎服・浄衣その他を用いる。ただし、女子祭主は小袿・袴または袿袴である。神宮以外の全国神社の祭服は、男子は大祭は正装で衣冠、中祭は礼装で斎服、小祭は常装で狩衣(かりぎぬ)または浄衣、女子は大祭は正装で袿袴、中祭は礼装で袿袴または水干(すいかん)、小祭は常装で水干と定められている。
﹇沼部春友﹈
教会の典礼、洗礼や婚姻などの秘蹟(ひせき)の授与、祝別式などの儀式に司祭が着用する特別の衣服。祭服が使用された起源は﹃旧約聖書﹄の時代までさかのぼり、キリスト教においても初期キリスト教時代以来連綿として用いられている。祭服は一般の衣服とは異なるが、時代と文化の影響を受けて変化がみられる。
カトリック教会の祭服にはローマ式祭服やゴシック式祭服などがある。祭服には白、赤、紫、緑などの色が用いられ、クリスマスや復活祭などの祝日には白、殉教者の記念には赤、キリストの受難節には紫、聖節以外の年間には緑現在は以前と比べて簡喜化され、赤や録や紫の祭服が指定されている祝日でも白い祭服︵カズラ︶の上からその色のストラをかけてもよい。
﹇安齋 伸﹈
﹃A・フリューラー著、土屋吉正訳﹃新しい祭服﹄︵1966・南窓社︶﹄
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祭服 (さいふく)
祭祀︵さいし︶に用いられる服装。式服,礼服ともいう。
神道の祭服
大きく皇室祭祀の服装と一般神社の神職用の服装とに分けられる。皇室祭祀の服装は天皇6種,皇后3種など20種からなり,神職用の服装は男女別にそれぞれ4種からなる。男子神職用は正装︵衣冠︵いかん︶︶,礼装︵斎服︵さいふく︶︶,常装︵狩衣︵かりぎぬ︶︶,浄衣︵じようえ︶の4種である。正装は冠︵かんむり︶,垂纓︵すいえい︶,掛緒︵かけお︶,袍︵ほう︶,単︵ひとえ︶,指貫︵さしぬき︶,笏︵しやく︶,檜扇︵ひおうぎ︶,畳紙︵たとうがみ︶,浅沓︵あさぐつ︶で束帯の略装である。女子の正装である袿袴︵うちきはかま︶は十二単︵ひとえ︶の略装となっている。正装は,古くは宿直装束︵とのいしようぞく︶といい宿直用であったのが,平安中期から平常の朝参,神拝両用となり,さらに1872年︵明治5︶朝参用が洋装となったため大祭専用の服装となった。礼装は83年以降中祭用となり,常装は1873年以後に小祭,諸式にあてられるようになった。
仏教の礼服
基本的には袈裟︵けさ︶と法衣の組合せからなる。主として袈裟は条数︵じようすう︶,法衣は色別によって正装,略装の別があり,袴,帽子︵もうす︶とあわせて,法会の種別,僧階による組合せで宗派別に規定されている。また僧の威儀を装飾するものに,数珠,扇,履物がある。
→衣帯︵えたい︶
キリスト教の祭︵式︶服
イエス・キリストや教徒たちが常用したと思われる服装は,一般人と変わらなかったとみられるが,当時の服装を遺産として受け継ぎ,各礼拝にふさわしい象徴的な装飾をほどこして祭服としている。最も重要なミサの祭服は,司祭の場合は肩衣︵アミクトゥス︶,長白衣︵アルバ︶,聖紐︵チングルム︶,腕帛︵マニプルス︶,頸垂︵けいすい︶帯︵ストラ︶,上祭服︵カズラ︶からなる。司教,大司教,教皇の祭服は以上のものにさらに加えられる。祭服には赤,白,紫,黒,緑の5色があり,それぞれ血と火,純潔の光,痛悔,悲しみ,希望を象徴し,祭式の趣旨に応じて着用される。カトリック教会には18種の,東方正教会には9種の別がある。
執筆者‥藤井 正雄
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祭服
さいふく
liturgical vestments
キリスト教やユダヤ教で礼拝のとき司祭が着用する衣服。荘厳な雰囲気をつくりだすように,特に豪華につくられている。布地の配色や形に象徴的な意味がこめられており,キリスト教の場合にはローマ・カトリックが 18種,ギリシア正教が9種を基本とするほか若干の変化形式がある。なおこれに類する聖職者用の衣服は,他の諸宗教でもなんらかの形で用いられている。
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普及版 字通
「祭服」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典(旧版)内の祭服の言及
【服装】より
…明治政府は欧米の文物制度をとり入れて近代国家の整備を急いだので,新しい国家体制にふさわしい服装制度が,欧米の制度にならって立てられた。1872年(明治5)太政官布告によって,勅任官,奏任官および非役有位者の大礼服ならびに上下一般の通常礼服が示されたが,それは欧米服装にならって金色燦然(さんぜん)たる大礼服を制定し,燕尾服を通常礼服,フロックコートを通常服と規定するもので,従来の服装は衣冠を祭服として存続させたほか,直垂,狩衣,裃などはこれをすべて廃止することとした。しかし,早急な全般的な改正は困難であったので,77年9月には太政官達によって判任官以下の者は羽織袴をもって通常礼装に準ずることを認め,婦人礼装についても,84年の宮内省達をもって勅任官・奏任官夫人などの袿袴の制が定められた。…
※「祭服」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」