デジタル大辞泉
「聖体」の意味・読み・例文・類語
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せい‐たい【聖体】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 天子のからだ。玉体。
(一)[初出の実例]﹁天皇聖体乖予。是日、立二第七皇子諱一為二皇太子一﹂(出典‥日本三代実録‐仁和三年︵887︶八月二六日)
(二)﹁護国の大法、聖体の護持等、其功験を致すべきや﹂(出典‥随筆・折たく柴の記︵1716頃︶下)
(三)[その他の文献]︹後漢書‐劉陶伝︺
(三)② キリスト教で、キリストの体。特に、ローマ‐カトリック教会で、パンと葡萄酒の形で象徴した、イエス‐キリストのからだと血。また、特に、体になぞらえられるパンをいう。→聖餐(せいさん)。︹現代術語辞典︵1931︶︺
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聖体
せいたい
Eucharist
カトリック教会の七つの秘蹟(ひせき)︵サクラメント︶の一つ。字義的にはイエス・キリストの聖なる体という意味だが、もとは感謝を意味するギリシア語﹁エウカリスチア﹂Eucharistiaの訳語である。プロテスタント教会ではこれを聖餐(せいさん)とよぶ。キリストは自分の死の前夜、12人の弟子と晩餐をともにした。このときキリストは、パンとぶどう酒をとり、感謝を捧(ささ)げたあと、弟子たちに与えながら、パンは自分の体であり、ぶどう酒の杯(さかずき)は自分の血による新しい契約であるといって、﹁私の記念としてこのように行え﹂と命じた︵﹁ルカ伝福音(ふくいん)書﹂22章19~20、﹁コリント書I﹂11章23~26︶。初代教会ではこのキリストのことばに従ってパンとぶどう酒による記念祭儀を行い、以後ミサ聖祭の形に発展して今日に至っている。
カトリック教会では、ミサのとき司祭がパンとぶどう酒をとって、キリストが最後の晩餐でいったのと同じことばを唱えるとき、パンとぶどう酒の形色のもとにキリストの真の体と血が現存するようになると信じている。キリストの血と体はキリストの全存在と救いの働きを具体的に示す。この体はイエスの人格の可感的な現れであるだけではない。イエスは弟子たちにそれを食べるように渡したので、それはキリスト者にとって全心身のための霊的食物である。そのうえ、イエスは人類の罪の許しのために血を流し、この血の杯を神と人類の間に結ばれた契約となした。
特別のミサのときは、信者はパンとぶどう酒の両形色を拝領するが、通常のミサではパンだけをいただく。キリストの体にはキリストの全実在が含まれているからである。また、ミサのあとも、聖別されたパンを聖堂内に保存し、信者はこの聖体の前で祈り、キリストの十字架と復活のわざを思い起こし、感謝する。
﹇門脇佳吉﹈
このようなカトリック教会の教えに対して異論が現れ、9世紀と11世紀に論争が起こった。だが本来の意味での聖餐︵聖体︶論争は16世紀の宗教改革のときのものである。すなわち、ルターはパンとぶどう酒はその実体を保持したままで、キリストの体と血になるという実在説を主張したのに対して、ツウィングリはパンとぶどう酒はキリストの血肉には変化せず、ただそれを象徴する記号にすぎないという象徴説を唱えた。以後プロテスタント教会には種々の教説が発生した。
﹇門脇佳吉﹈
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聖体 (せいたい)
Eucharist
キリスト教の儀礼の中心である聖餐において,聖別されたパンとブドウ酒の形態に現在するキリストを表す用語。原語は聖餐と共通。中世におけるサクラメントの見方は,ラドベルトゥス以来の聖体論争に見られるように,サクラメントにおける恩恵の働きの実在を,素材の中に実体的に対象化して考える傾向が強く,その中で,聖別された素材は恩恵の単なる象徴にすぎないとするトゥールのベレンガリウスの説は異端として退けられた。そのため,聖餐のサクラメントにおけるしるしもキリストの体と血をともに食する行為ではなく,目で仰いで礼拝の対象とするパンの形態にその関心が集中し,その影響は典礼にまで及んだ。聖別されたパンを高く挙げて示す聖体奉挙,それを容器に入れて展示する聖体顕示,その前にひざまずいて祈る聖体礼拝,それによって会衆を祝福する聖体降福式,それを奉持して行列する聖体行列,そしてこのような聖体信心が祝日として取り上げられた聖体祭などの慣習は13世紀ころ起こったものである。これらは,大衆には広く歓迎されたが,受けて食することから遠ざかるような弊害も少なくなかった。やがて宗教改革が起こり,聖体への信心はプロテスタントの国々では後退したが,カトリック教会では大衆の素朴な信仰心を保護しながらつねにその時点で綿密な神学的検討が重ねられ,一定の条件のもとに認容されてきた。︿聖体﹀という漢語も,この種の慣習が盛んであった時代に,それがカトリックの宣教師によって中国にもたらされたときにつくられた語が日本に伝わったものである。
→聖体論争
執筆者‥土屋 吉正
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聖体【せいたい】
パンとブドウ酒との外観のもとに臨在するとされるキリストをいうカトリック教会の用語。英語ではEucharistといい,聖餐に同じ。特にパンを指すことが多く,聖体奉挙,聖体顕示,聖体降福式,聖体行列,聖体祭といった典礼行事も知られる。聖体の神学的解釈をめぐる中世以来の論争が聖体論争。
→関連項目復活祭
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聖体
せいたい
Eucharist
おもにカトリック教会で使われる用語。聖餐式 (ミサ) で聖別されたパンとぶどう酒をいい,聖別の言葉とともにパンとぶどう酒は実体変化して,キリストの真のからだと血になるとされる。ここから日本語では聖体と訳され,このパンとぶどう酒を食することを聖体拝領という。聖体はキリストの実在と信じられるため聖餐式以外でも崇敬の対象となり,カトリックの聖堂では聖体が安置されるほか,聖体降福式,聖体行列なども行われる。
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普及版 字通
「聖体」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の聖体の言及
【聖餐】より
…聖書朗読によることばの典礼を通して秘跡の典礼に入るので,この中心部分を〈感謝の典礼〉と呼ぶ。さらにその中で聖別されたパンとブドウ酒(特にパン)にも同じ言葉が使われるようになり,これを日本語でカトリック教会では〈[聖体]〉と呼び,プロテスタント教会では一般に聖別の制定句と陪餐(聖体拝領)を含むHoly Communionの訳語として〈聖餐〉が使われている。〈聖体〉は聖別されたパンとブドウ酒のほうに,〈聖餐〉はそれによるキリスト者の交わりの行為全体についてエキュメニカルに(教会一致の立場に立って)用いることができる。…
【肉】より
… 肉と霊,肉体と精神の二元論は宗教が成立する基盤である。イエスの生誕を〈受肉〉と言うキリスト教のカトリックの教義には七つの秘跡(サクラメント)があり,その一つが聖体または聖餐の秘跡である。別名〈肉と血の秘跡〉で,信者がキリストの肉と血を象徴するパンとブドウ酒を受けることをいい,新約聖書にあるように,キリストが〈最後の晩餐〉のときにこれを定めたとされる。…
※「聖体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」