デジタル大辞泉
「起立性調節障害」の意味・読み・例文・類語
きりつせい‐ちょうせつしょうがい〔‐テウセツシヤウガイ〕【起立性調節障害】
立ち上がったときや長時間立っていたときに、立ちくらみ・目まいなどを起こす状態。姿勢の変化に応じて血圧や血流量を正常に保つ、自律神経機能の失調によることが多い。OD︵orthostatic disturbance︶。
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きりつせい‐ちょうせつしょうがい‥テウセツシャウガイ【起立性調節障害】
(一)〘 名詞 〙 急に立ち上がると、めまいがしたり、長い間立っていると倒れたり、また、乗物に酔いやすかったりする病気。低血圧の人にみられる。
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起立性調節障害
きりつせいちょうせつしょうがい
Orthostatic dysregulation
(子どもの病気)
身体が急速に大きくなる小学校高学年から中学生に多くみられる自(じり)律(つし)神(んけ)経(いし)失(っち)調(ょう)症(しょ)の一種で、立ちくらみや朝の寝起きが悪いなどの症状がみられます。病気というより体質です。
通常、起立時は交感神経のはたらきで下肢の静脈が収縮します。また、朝起床する時には、自律神経系の活動が副交感神経主体から交感神経に切り替わります。起立性調節障害ではこのような交感神経のはたらきや切り替えがうまくいかないため、下肢に血液がたまったりして、さまざまな症状がみられます。
立ちくらみ、脳(のう)貧(ひん)血(けつ)、動(どう)悸(き)、朝の寝起き不良などが特徴的な症状です。また、顔色が悪い、食欲がない、腹痛や頭痛がある、疲れやすい、乗物酔いなどの症状もよくみられます。
特徴的な検査はありません。唯一の検査である起立試験で、血圧や脈拍の変化を調べますが、症状とは必ずしも結びつきません。区別する病気として、鉄欠乏性(てつけつぼうせい)貧血、感染症、神(しん)経(けい)症(しょう)︵不登校、解離性障害︵ヒステリー︶、うつ病など︶があります。
低血圧治療薬のメチル硫酸アメジニウム︵リズミック︶や、下肢の静脈収縮を促す塩酸ミドドリン︵メトリジン︶、メシル酸ジヒドロエルゴタミン︵ジヒデルゴット︶を使用します。目が覚めたらすぐに内服するのがコツです。同時に、病気の仕組みを説明する心理療法や、乾(かん)布(ぷま)摩(さ)擦(つ)などの鍛(たん)錬(れん)療法を行うと、さらに効果があります。
学校生活に支障がなければ治療は不要です。もし、症状が強くて困るようであれば、小児科を受診してください。4週間経過しても症状が軽快しない場合や、初診時にすでに1カ月以上の不登校の場合は、専門医を受診してください。
内山 聖
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起立性調節障害
きりつせいちょうせつしょうがい
orthostatic dysregulation
起立に伴う血圧心拍反応の異常に起因する自律神経機能障害。ODとも略称される。おもに思春期︵10~16歳ごろ︶に多くみられ、立ちくらみや朝起き不良︵起床困難︶、倦怠(けんたい)感、動悸(どうき)、頭痛、失神、いらいら、集中力低下などの症状を伴う。症状は午前中に強く、午後から夜にかけて軽快することが多い。また、立位や坐位(ざい)で増強し、臥位(がい)で軽減する。ただし重症例では、臥位でも倦怠感が強く、午後~夜でも起き上がれないこともあり、不登校やひきこもりの原因となる場合がある。
上記のような症状が原則三つ以上あれば本症が疑われ、新起立試験に基づいて以下のようなサブタイプに分類される。(1)起立直後性低血圧 起立直後に一過性の強い血圧低下が生じ、めまいや立ちくらみが起こる。もっとも高頻度でみられる。(2)体位性頻脈症候群 起立時の血圧低下はみられず、起立時頻脈、ふらつき、倦怠感、頭痛が起こる。(3)神経調節性失神 血圧低下と失調症状を生じ、意識低下と意識消失が起こる。(4)遷延(せんえん)性起立性低血圧 起立から数分以後に血圧が徐々に低下し、気分不良、顔面蒼白(そうはく)、四肢冷感、動悸、頭痛、冷汗などが起こる。
本症の成因としては、(1)起立に伴う循環動態の変動に対する自律神経による代償機構の破綻(はたん)、(2)過少または過剰な交感神経活動、(3)水分の摂取不足、(4)心理・社会的ストレス、(5)日常の活動量低下などが考えられている。
治療は、重症度やタイプ、心理・社会的側面の関与度合いなどを考慮しながら、﹁小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン﹂︵日本小児心身医学会編︶をベースに行われる。
非薬物療法として、(1)疾病教育 本症は自律神経機能の失調が原因の身体疾患であり、症状は﹁怠けグセ﹂などではないこと、思春期を過ぎると症状は軽快・改善することが多いことを説明する。とくに保護者は、朝の起床困難や学校を遅刻・欠席するようすから、子を叱責(しっせき)したりむりやり起床させるなどして、子との関係性を悪化させていることがある。このため、本人と保護者、両者に対して疾病への理解を促す。(2)日常生活での対処 規則正しい生活リズムをできる範囲で心がけ、日中は寝床につくことを避けて、夜は眠気がなくても就床が遅い時間にならないようにする。起床・起立行為をゆっくり行う。起立中には、両足を交差させたり、足踏みを行う︵血圧低下を防ぐ︶。水分を1日1.5~2リットル摂取し、塩分の摂取も比較的多めにする。夏季には気温の高い場所を避け、適切な飲水行動を心がける、など。(3)学校との連携 学校側にも疾患への理解を深めてもらい、適切な対応を依頼する。(4)その他 心理療法、環境調整などを行う。
非薬物療法で十分な効果が得られない場合や、重症例に対しては薬物療法︵ミドドリン塩酸塩など︶が検討される。
適切な治療が行われれば、軽症例では数か月以内に症状の改善が得られる。一方、不登校を伴う重症例では、社会復帰に2~3年以上を要することが多い。また、軽い症状は成人しても続く場合がある。
﹇編集部 2018年5月21日﹈
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起立性調節障害 (きりつせいちょうせつしょうがい)
自律神経失調症の一種で,そのドイツ語病名Orthostatische Dysregulationの頭文字をとって,ODとも呼ばれる。学童期に多い病気なので学校保健上大きな問題になっている。主要な症状は,︵1︶立ちくらみ,あるいはめまいを起こしやすい,︵2︶立っていると気持ちが悪くなり,ひどくなると倒れる︵脳貧血︶,︵3︶入浴時あるいはいやなことを見聞きすると気持ちが悪くなる,︵4︶少し動くと動悸あるいは息切れがする,︵5︶朝なかなか起きられず,午前中調子が悪い。以上の5項目で,これらは起立性調節障害の診断基準の五大症状といわれ,この病気の患者には少なくとも一つ以上みられるものである。このほかに,顔色不良,食欲不振,腹痛,倦怠,頭痛,乗物酔いなどの症状がしばしばみられる。この病気は起立時の血管反射に異常があって起こるものと考えられている。人体が起立した場合,循環系は反射的にこれに対応して,とくに下半身の静脈を収縮させ,下半身への血液の貯留を防ぐようにはたらく。しかし起立性調節障害では,起立時下半身の静脈の反射的収縮が不十分なため下半身に血液の貯留が起こり,その結果脳の血流量が減少する。これが立ち上がった瞬間に起これば立ちくらみとなり,立っていて徐々に進行すれば脳貧血となる。診断は,前述のような訴えをもっている者について,貧血,器質的心疾患,結核その他の慢性感染症,登校拒否などの神経症あるいはうつ病などの精神病でないことを確認したうえでなされる。診断するための検査としては,10分間起立した前後の脈拍数,血圧,心電図の変化を比較する起立試験も有用である。発症は9~11歳ごろに最も多い。小児期においては男女差は明らかでないが,成人に至るまで起立性調節障害の症状が残存しているものは圧倒的に女性に多い。症状に季節的変動があって,春から初夏にかけて症状が悪くなる例が多い。小・中学校生徒における本症の頻度はかなり高く,3~10%とみられている。治療は,昇圧剤,自律神経調整剤,精神安定剤などが用いられるが,症状に応じて正しく選択することが重要である。これらの薬物療法によって,大部分の患者では著しい症状の改善が認められるが,また同時に規則正しい生活を心掛け,乾布摩擦や冷水摩擦を続けるなど,積極的に自律神経を鍛練することも大切である。
執筆者‥柳沢 正義
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食の医学館
「起立性調節障害」の解説
きりつせいちょうせつしょうがい【起立性調節障害】
︽どんな病気か?︾
︿朝起きられず学校にいけない。そんな傾向があったら要注意﹀
起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)にかかる小学生や中学生がふえています。この病気は自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)の一種で、起立時に起こるはずの血管の反射が失調して、血液が下半身にたまり、ほかの部分の血圧が一時的に低下して、めまいや立ちくらみなどのいろいろな症状を起こす病気です。
朝に弱く、なかなか起きられない、朝礼のときに気分が悪くなり倒れる、乗り物に酔いやすい、疲れやすい、動悸(どうき)や息切れがする、といった症状があるときは、この起立性調節障害が疑われます。
一般に午前中に体調が悪く、午後になると元気になるのが特徴で、夜ふかしによる寝不足や、朝食を抜くなどの不規則な食事習慣、ストレスなどが誘因となります。
そのまま放置すると、学校の成績に影響したり、情緒不安定(じょうちょふあんてい)、神経症などの傾向が現われるので、症状があてはまるときは、早めに小児科専門医の診察を受けるようにしてください。
︽関連する食品︾
︿自律神経を正常に保つビタミンB1、B6、B12﹀
○栄養成分としての働きから
起立性調節障害にかかる子どもは、食生活が不規則で、栄養バランスもかたよっていることが多いといえます。とくにビタミンB群の不足には注意しましょう。
ビタミンB1は、神経を機能させるためのエネルギーをつくりだしており、豚肉、ウナギ、ダイズに多く含まれています。またマグロやサンマ、レバーに多いビタミンB6は、神経伝達物質の合成にかかわっています。
そして神経細胞内のたんぱく質や脂質、核酸の合成にかかわっているのがビタミンB12です。 ビタミンB12は、アサリやカキ、レバーに多く含まれています。
どれも自律神経の働きを正常に保つのに欠かせません。
やはりB群の仲間であるパントテン酸は、起立性調節障害の誘因となるストレスに強い体をつくるのに役立ちます。レバー、納豆に多く含まれています。
ビタミンEにも抗ストレス作用があるほか、血流をよくして乱れた自律神経をもとにもどしてくれます。アーモンド、ウナギ、たらこなどに多く含まれているので、しっかりととるように心がけてください。
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起立性調節障害
きりつせいちょうせつしょうがい
orthostatic dysregulation
自律神経︵→自律神経系︶機能不全の一つ。起立すると末梢血管が自然に収縮して,血液の正常循環を維持する機能が働くが,この調節機能がなんらかの原因で正常に作動しないために起こる。学童期から思春期にかけて発症しやすく,心理的ストレスが関係するといわれ,はっきりとした原因が認められない場合もある。立ちくらみ︵→めまい︶,朝の起床困難,気分不良,失神および失神様状態,頭痛,倦怠感などの症状を示す。症状はおもに午前中に強く,午後から夜にかけて軽減する傾向にあるが,夜は寝つけず不眠の症状を伴うこともある。
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「起立性調節障害」の意味・わかりやすい解説
起立性調節障害【きりつせいちょうせつしょうがい】
自律神経機能不全の一種で、英語の病名からODともいう。思春期︵学童期︶に多く、立ちくらみやめまい、失神、朝起き不良などの症状をともなう。起立時の循環異常により、脳をはじめ全身への血流量が減少するために起こると考えられている。症状に応じた薬物療法と生活リズムの改善などで対処する。
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