デジタル大辞泉
「陸上自衛隊」の意味・読み・例文・類語
りくじょう‐じえいたい〔リクジヤウジヱイタイ〕【陸上自衛隊】
部隊や各種学校などからなり、統合幕僚長の補佐を受けた防衛大臣の統括の下に、陸上における防衛を主な任務とする。昭和29年︵1954︶保安隊を改組・改称して設置。陸自。
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りくじょう‐じえいたいリクジャウジヱイタイ【陸上自衛隊】
(一)〘 名詞 〙 防衛庁に属する自衛隊の一つ。日本の平和と独立を守り、国の安全を保つため、侵略に対して防衛する任務をもつ実力部隊。陸上幕僚長のもとに陸上幕僚監部、五方面隊、直轄部隊、各種学校、補給処、病院などの機関からなる。昭和二九年︵一九五四︶七月設置。︹自衛隊法︵1954︶︺
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陸上自衛隊 (りくじょうじえいたい)
英語ではGround Self-Defense Forceといい,略称GSDF。自衛隊のなかで主として陸上で行動することを任務とする部隊の総称で,諸外国における陸軍に相当する。1984年度末の陸上自衛隊の定数は,自衛官総定数約27万2000人中,66.2%を占め,84年度の防衛関係費,約2兆9000億円中,陸上自衛隊の予算は36.7%を占めていた。それが,1995年11月に決定された︿平成8年度以降に係わる防衛計画の大綱︵新大綱︶﹀による防衛力整備計画によれば,2005年ころを目標に自衛官の総定数を25万人程度に削減することになっている。そして,陸上自衛官の編成定数は16万人,うち,常備自衛官が14万5000人︵残りの1万5000人は即応予備自衛官︶となっているので,その占有率は65%を割ることになる。このように日本では,地勢的な特性から,海・空が重視され,陸上自衛隊は漸減される傾向にある。
沿革
1950年7月8日,朝鮮戦争の勃発に伴い,在日米軍の朝鮮派遣に対処するため,連合国軍最高司令官マッカーサー元帥が吉田茂首相にあてて,︿警察予備隊創設に関する指令書簡﹀を発し,これに基づき,同年8月10日,ポツダム政令として︿警察予備隊令﹀が公布・施行され,警察予備隊が発足した。警察予備隊は,その目的,任務において警察の範囲を出るものではなく,その補助的な特別機関の性格をもっていたが,51年9月8日の平和条約および日米安全保障条約の締結に伴い,52年8月1日,保安庁法が施行されて保安隊となり,さらに54年6月2日自衛隊法が成立し,7月1日施行されて,今日の陸軍的性格をもつ陸上自衛隊となった。
任務
陸上自衛隊は︿わが国の平和と独立を守り,国の安全を保つため,直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし,必要に応じ,公共の秩序の維持に当る﹀︵自衛隊法︶という自衛隊の任務を,主として陸上において行動して達成することを目的とする組織体である。このため,軍事力をもってする不法行為や間接侵略事態には,早期にこれを収拾し,直接侵略に対しては,アメリカとの適切な協力のもと,防衛力の総合的,有機的な運用を図ることによって,極力早期にこれを排除して任務を達成することになっている。アメリカ軍との協力については,1978年11月27日に決定され,97年9月に改定された︿日米防衛協力のための指針﹀︵ガイドライン︶に基づいて,陸上自衛隊は阻止,持久および反撃のための作戦を,米陸上部隊は必要に応じて来援し,反撃のための作戦を中心として,陸上自衛隊と共同して行動することと協定されている。
これらの任務を遂行するために,陸上自衛隊は,有事には要地を確保し,海洋からの侵略にはミサイルや火砲によって,空輸の侵略軍には,ミサイルや高射火器によって,上着陸前にこれを撃滅することに努める。上着陸した侵略軍には,初期の段階で反撃して速やかにこれを撃退する。平時にあって警察力をもっては治安が維持できないような場合は,治安行動にあたり,また災害等に際しては,地方自治体等の要請によって出動し,救助や復興の任務を行う等が行動の準拠となっている。募集や宣伝・広報等の業務を実施するのも,陸上自衛隊の任務である。このほか,1995年の︿新大綱﹀では,より安定した国際安全保障環境の構築への貢献のため,国際平和協力業務の実施,安全保障対話の推進,軍備管理・軍縮分野の諸活動への協力等が強調されているが,これらは主として陸上自衛隊の任務となっている。
編成
陸上自衛隊は,陸上幕僚監部および方面隊その他の長官直轄部隊・機関から成る。陸上幕僚監部は,陸上自衛隊の隊務に関する長官の幕僚機関で,その長が陸上幕僚長である。陸上幕僚長は,防衛庁長官︵現,防衛省の防衛大臣︶の指揮監督を受けて幕僚監部の事務を掌理し,陸上自衛隊の隊務および所属隊員の服務を監督する。陸上幕僚長には,陸上自衛隊に対する指揮権が与えられていないが,防衛庁長官の陸上自衛隊に対する指揮は,必ず陸上幕僚長を通じて行うこととされている。陸上幕僚長は,陸上自衛隊の隊務に関する,防衛庁長官への最高の専門的助言者であり,さらに統合幕僚会議の構成員でもある。
陸上自衛隊の定員は,1973年10月の法律改正によって18万人と定められていたが,︿新大綱﹀によって,前述したとおり2005年を目標に16万人に削減される。そして,毎年の実人員は,さらに予算や募集上の制約から,定員に対する充足率を定めて,人員の上限を規制することになっている。実人員の中には約1000人の看護婦自衛官,約4500人の婦人自衛官が含まれている。定員の削減に伴い,効率的に事態に対応するため,︿即応予備自衛官﹀という,有事に招集されて直ちに一般の隊員と行動を共にしうるような予備の制度が設けられた。また,有事に防衛招集して,後方や基地の警備に当たる︿予備自衛官﹀約5万人がある。このほか,陸上自衛隊には1万人余りの事務職員︵事務官等︶がいる。事務職員は管理,行政などの実務に従事し直接戦闘行動には参加しない。
陸上自衛隊の部隊のおもなものは五つの方面隊で,それぞれ方面総監が隊務を統轄する。方面隊には方面総監部のほか,師団,旅団その他の直轄部隊があり,方面隊内の師団等の数は一定ではない。
師団および旅団は,方面隊の行動︵作戦︶の基幹となる実力部隊で,8個師団,1個機甲師団,6個旅団,1個空挺団︵旅団規模︶等がある。師団,旅団はそれぞれ師団長,旅団長により指揮統率される。師団,旅団の編成の概要は図のとおり。
師団︵旅団︶行動︵作戦︶の中核をなすものは普通科連隊で,攻撃にあっては敵に近接撃破して敵陣地を占領し,防御にあっては最前線の抵抗地帯を構成して地域を確保し,進攻する敵を撃退する。特科部隊は強大な火力で普通科の戦闘を支援し,また敵砲兵を破砕する。戦車は普通科と行動をともにして︵機甲師団にあっては骨幹となって︶,その火力,機動力,衝撃力等で敵の抵抗を撃破する。施設隊は地雷原の構成や地雷等の障害の除去,渡河等の技術を要する戦闘行動の支援にあたる。師団︵旅団︶の防空戦闘は特科部隊内の高射隊および各部隊の自衛用高射火器によって行う。空挺団は東部方面隊に所属し,必要に応じて防衛庁長官が直轄使用して,敵の内部・後方等に部隊を落下傘降下させて,これを撃滅する。
方面隊内の師団・旅団以外の部隊としては特科団︵群︶,高射特科団︵群︶,施設団,空挺団,混成団,教育団︵連隊︶等がある。教育団︵連隊︶は新入隊員の教育および陸曹の補充教育にあたる。
方面隊に属さない長官直轄部隊としては,第1ヘリコプター団,通信団,富士教導団等がある。第1ヘリコプター団は人員・武器資材の緊急輸送および対戦車ヘリコプターによる対戦車戦闘等に任ずる。通信団は陸上自衛隊中央部の通信連絡,電子戦等にあたり,富士教導団は平時にあっては富士学校の学生教育の支援や,新しい武器・装備等の実用試験,部隊の指揮運用についての研究等を行い,有事には師団規模の部隊を編成して一般の師団とほぼ同様の任務を遂行する。
陸上自衛隊の機関としては学校,補給処,病院および地方連絡部がある。学校は上級の幕僚を養成する幹部学校,初級の幹部を補充する幹部候補生学校,各職種の幹部・陸曹等を教育する各種の職種学校,中学校終了者から技術陸曹を養成する少年工科学校等があり,このほか陸・海・空3自衛隊の体育指導者を養成する体育学校がある。補給処は,陸上自衛隊の武器・装備品等の調達・保管・補給・整備およびこれに関する調査研究を行うところで,中央に武器・施設・通信・需品・衛生の各補給処業務を統轄する補給統制本部があり,各方面隊ごとに補給処があって補給の実務を行っている。病院は隊員の診療と,医療に関する専門技術修得とを行うところで中央病院のほか,地区病院,リハビリテーション・センター等がある。地方連絡部は各都道府県に置かれ主として募集業務を行い,また自衛隊の隊外への窓口としての業務を実施する。
装備
陸上自衛隊装備のおもなものは地対空ミサイル,戦車,各種火砲等,機関銃,小銃,航空機,弾薬等で,このほか施設器材,通信機器等がある。これらの装備のうち,航空機,地対空ミサイル等生産数の少ないものの大半は,アメリカからの輸入,ライセンス生産によっており,他の兵器の大半は国産化されている。地対空ミサイルには︿ホーク﹀,81式短距離ミサイルおよび携帯式ミサイル︿スティンガー﹀SAM-3等がある。戦車は依然として陸上戦闘の骨幹的役割を果たすものとみられており,90mm砲をもつ61式戦車,105mm砲を搭載する74式戦車から120mm砲の90式戦車に主力が交代しつつある。火砲等には野戦砲,ロケット,迫撃砲,対戦車砲︵ミサイル︶,高射砲等があり,野戦砲は大口径の長射程砲を自走化して装備する傾向にある。迫撃砲は構造が簡単で製造容易であるだけでなく,重量に比して大型の弾薬を発射でき,発射速度大,山の後方から遮蔽して射撃できる等の特色があるため,依然として陸上戦闘では重用されている。機関銃の軽量化がすすみ,小銃はほとんどの国が単発・連発可能なものを採用するにいたっている。弾薬も改良されて射程を増大し,命中精度を向上させるためPGM︵precise guided munition,精密誘導兵器︶化されてきた。
陸上自衛隊の使用する航空機は輸送,指揮連絡,偵察および射弾観測等に使用するもので,ヘリコプターやプロペラ機が主である。1982年度からは対戦車ヘリコプター︵AH-1S︶が導入された。
→自衛隊
執筆者‥塚本 勝一
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陸上自衛隊【りくじょうじえいたい】
保安隊を経て,1954年防衛庁所管となり陸上自衛隊に改編。海上自衛隊,航空自衛隊とともに自衛隊の実力部隊をなす。陸上幕僚監部の統轄下に5方面隊に分かれ,その下に13個師団,混成団,特科団,空挺団,ヘリコプター団,高射特科団などの部隊,学校,補給処,病院で構成されている。兵員︵定数︶は17万8007人だが,実員は15万1836人︵1998年3月︶。装備は米国の供与が多かったが,近年は国産化が進み,火力,機動力は旧陸軍に比しはるかに大となっている。︿新防衛大綱﹀︵防衛計画大綱︶で改編,縮小される。
→関連項目機械化部隊|師団|新発田﹇市﹈|特科部隊|防衛省|陸軍
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陸上自衛隊
りくじょうじえいたい
主として陸上で,直接侵略および間接侵略に対して防衛することを任務とする自衛隊。陸上幕僚監部ならびに統合幕僚長および陸上幕僚長の監督を受ける部隊および機関。国土の防衛のほか,災害派遣,復興支援・平和維持のための国際平和協力業務などの任務を帯びる。 1950年の朝鮮戦争勃発を機に陸上自衛隊の母体となる約7万 5000人の警察予備隊が設置される。 1952年保安隊となり,1954年7月防衛庁の設置に伴い陸上自衛隊となった。 2007年1月防衛庁の防衛省昇格により防衛省所管となる。陸上自衛隊の部隊は方面隊,第1ヘリコプター団,通信団などからなる。方面隊は北部方面隊 (北海道) ,東北方面隊,東部方面隊 (関東地方,中部地方) ,中部方面隊 (中部地方,近畿地方,中国地方,四国地方) ,西部方面隊 (九州地方,沖縄地方) の5個に分けられ,それぞれ方面総監部,師団,旅団,特科団 (特科群) ,高射特科団 (高射特科群) ,施設団,教育団 (教育連隊) などをもつ。機関としては,研究本部,補給統制本部,補給処,各種学校,病院などがある。
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知恵蔵
「陸上自衛隊」の解説
陸上自衛隊
1950年に「警察予備隊」として発足、「保安隊」を経て54年に現在の名に改称。実員は14万8631人(2007年3月末現在)。普通科(歩兵)9個師団と4個旅団、機甲(戦車)1個師団、1個空挺団(旅団)、1個混成団、1個特科(対艦ミサイル)団、1個ヘリコプター団などからなり、戦車910両、装甲車950両、野戦砲660門などを持つ。
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世界大百科事典(旧版)内の陸上自衛隊の言及
【自衛隊】より
… 保安隊および警備隊の装備はアメリカの軍事援助によって強化されていったが,その根拠となる[MSA協定](〈日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定〉,1954成立)が日本側のいっそうの防衛努力を求め,また,駐留米軍も漸減したので,政府は54年に防衛二法(防衛庁設置法,自衛隊法)を強行成立させ,総理府の外局たる防衛庁の下に,日本の防衛を第1の任務とし,あわせて副次的に国内の治安維持を担当する自衛隊を発足させた。保安隊は陸上自衛隊に,警備隊は海上自衛隊に改編され,また,航空管制権の返還にあわせて航空自衛隊が新設された。自衛隊の戦力は強力なものとなり,もはや〈戦力なき軍隊〉論では説得的でなくなったので,政府は,一面では,〈自衛力合憲論〉,つまり,憲法9条2項が保持を禁止しているのは侵略戦争を行いうる戦力であり,これに該当せずに自衛の範囲にとどまる実力の保持と行使は,独立した国家である以上当然に具有し,憲法も決して否定していない自衛権の内容として許され,自衛隊はその範囲内にとどまるから合憲であるとの立場(昭和29年見解ともいう)を採り,他面では,憲法を明文改正し,再軍備の足かせとなる憲法9条を葬り去って違憲論の余地をなくそうと試みた。…
【師団】より
…平時の常備師団は,近衛師団,第1~20(うち13,15,17,18が欠)師団で,戦時動員で新たに編成される師団を特設師団といった。
[陸上自衛隊]
陸上自衛隊は1961年,従来の管区隊を師団に改編して各方面隊の基幹部隊とし,各国の例にならった。ただし,日本の地形区画に適合させる等のため,通常の師団よりもかなり小型にした。…
※「陸上自衛隊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」