デジタル大辞泉 「PTSD」の意味・読み・例文・類語 ピー‐ティー‐エス‐ディー【PTSD】[posttraumatic stress disorder] ︽posttraumatic stress disorder︾心的外傷後ストレス障害。忍耐の限界を超えたストレス、たとえば、戦争・災害︵地震など︶・テロ・事故・犯罪事件などを体験した後に生じる心身の障害のこと。不安・鬱(うつ)状態・パニック・フラッシュバックなどが代表的な症状。日本では、平成7年︵1995︶の阪神・淡路大震災後に問題になった。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
六訂版 家庭医学大全科 「PTSD」の解説 PTSD(外傷後ストレス障害)ピーティーエスディー(がいしょうごストレスしょうがい)Posttraumatic stress disorder (PTSD)(こころの病気) どんな病気か 死を意識するような強い体験によって心理的なトラウマ︵外傷︶が生じ、以下の特有の症状を生じる障害です。 ここでいう体験とは、事故、災害、戦闘、虐(ぎゃ)待(くたい)、犯罪︵暴力、強姦など︶によって自分が死にかけたり、親しい人が死んだり、死にかけるのを目撃することです。子どもの場合には、虐待や無視・放置、他者の被害の目撃が成人以上に外傷となり得ます。単に、人から悪口をいわれたとか、裏切られたなどの体験は含まれません。 そのような体験のあとで、次の3つの症状が生じ、少なくとも1カ月以上続き、かつ生活や仕事に大きな影響を与えているものをPTSDといいます。 ●侵入症状 ︵再体験、フラッシュバック︶ 体験の記憶が再生産されることをいいます。その形式として、次のいずれかをとります。 ①誘因なく思い出される︵子どもでは外傷に関係した遊びの反復︶。 ②悪夢にみる︵子どもでは内容不明の悪夢︶。 ③フラッシュバック、体験に関する錯(さっ)覚(かく)・幻(げん)覚(かく)︵子どもでは外傷に関する振る舞い︶ ④外傷に関連した刺激による主観的な苦痛 ⑤同じく自律神経症状を示す。 ●回避と麻痺 苦痛な体験が思い出させられることを避け、記憶を意識から切り離すことです。普通は次のうちの3つ以上の症状がみられます。 ①慢性的な無力感、無価値感が生じ、まわりの人間とは違う世界に住んでいると感じる。 ②感情や関心が狭くなり、人を愛したり喜ぶことができない。 ③外傷記憶の部分的な健忘 ④外傷に関連した刺激を避けようとする。 ●過(かか)覚(くせ)醒(い) 常に危険が続いているかのような張りつめた状態をいいます。交感神経系が緊張し、些細な物音などにも反応し、パニックとなりやすくなります。次のうち2つ以上の症状がみられます。 ①入眠困難 ②いらだち ③集中力の低下 ④張りつめた警戒心 ⑤些細なことでの驚(きょ)愕(うがく) 治療の方法 対応としては、一般的なケアと専門的な治療に分けられます。 一般的なケアとしては、安全、安心、安眠の確保に努め、二次的なトラウマを未然に防ぎ、自然の回復を促進します。PTSDについての心理的な教育も有効です。 症状が重い急性期には、あれこれと聞き出すことはよくありません。3分の2は半年以内に自然回復するので、生活の支援をしながら温かく見守ることです。 専門的な治療としては、抗うつ薬の一種であるSSRI︵選択的セロトニン再取り込み阻害薬︶などが有効です。また、PTSDの治療のために開発された持続エクスポージャー療法︵恐しい体験の記憶に対するコントロール力を回復させて恐怖を軽減する治療法︶は国際的にも広く認められていますが、日本ではまだ十分に広まってはいません。 金 吉晴 出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報