ICUのGPA制度の問題点とは?
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1.はじめに
ICUでは、学生の成績はGPA制度に従って評価されている。GPAとはGrade Point Averageの略で、授業ごとにA(4pt)~E(0pt)の5段階で評定がつけられ、全授業のポイントの総和を履修した単位数で割った値が毎学期出される。
成績優秀者が選ばれる「Dean’s List」(認定単位数が12よりも多い、GPA3.70を満たしている)、ICUからの除籍基準(GPA1.00未満が4学期を超えるか、改善しないまま3学期間を過ごす)は、このGPA制度に基づいている。GPA次第で留学や奨学金などの可能性も広がるため、ICUの学生はより高い値を得ようと日夜勉学に励んでいる。
2.ICUのGPA制度の問題点
しかし日本には、お茶の水女子大学や宮崎大学のようにICUとは異なる方法でGPAを計算している大学もある。例えば宮崎大では、素点からGPを出す専用の公式<GP=(成績素点-54.5)/10>(1)がグレードの評価とは別に存在する。以下、同大学の教育・学生支援センターのサイトを参考に、ICUと宮崎大のGPA制度の違いを比較する。
<2014年秋学期・ICU方式の場合>
基男くん
科目名 | 単位数 | 評点 | グレード | GP |
音楽の世界 | 3 | 88 | B | 3*3=9 |
カルチュラル・スタディーズ入門 | 3 | 67 | D | 1*3=3 |
バイリンガリズムとマルティリンガリズム | 3 | 79 | C | 2*3=6 |
日本社会入門 | 3 | 96 | A | 4*3=12 |
初級個人スポーツ(アーチェリー) | 1/3 | 88 | B | 3*1/3=1 |
13+(1/3) | 83.6 | GPA=2.33 |
基子さん
科目名 | 単位数 | 評点 | グレード | GP |
音楽の世界 | 3 | 73 | C | 2*3=6 |
カルチュラル・スタディーズ入門 | 3 | 61 | D | 1*3=3 |
バイリンガリズムとマルティリンガリズム | 3 | 82 | B | 3*3=9 |
日本社会入門 | 3 | 90 | A | 4*3=12 |
初級個人スポーツ(アーチェリー) | 1/3 | 91 | A | 4*1/3=1.33 |
13+(1/3) | 79.4 | GPA=2.35 |
<2014年秋学期・宮崎大方式の場合>
基男くん
科目名 | 単位数 | 評点 | グレード | GP |
音楽の世界 | 3 | 88 | B | (88-54.5)/10*3=10.05 |
カルチュラル・スタディーズ入門 | 3 | 67 | D | (67-54.5)/10*3=3.75 |
バイリンガリズムとマルティリンガリズム | 3 | 79 | C | (79-54.5)/10*3=7.35 |
日本社会入門 | 3 | 96 | A | (96-54.5)/10*3=12.45 |
初級個人スポーツ(アーチェリー) | 1/3 | 88 | B | (88-54.5)/10*1/3=1.12 |
13+(1/3) | 83.6 | GPA=2.60 |
基子さん
科目名 | 単位数 | 評点 | グレード | GP |
音楽の世界 | 3 | 73 | C | (73-54.5)/10*3=5.55 |
カルチュラル・スタディーズ入門 | 3 | 61 | D | (61-54.5)/10*3=1.95 |
バイリンガリズムとマルティリンガリズム | 3 | 82 | B | (82-54.5)/10*3=8.25 |
日本社会入門 | 3 | 90 | A | (90-54.5)/10*3=10.65 |
初級個人スポーツ(アーチェリー) | 1/3 | 91 | A | (91-54.5)/10*1/3=1.22 |
13+(1/3) | 79.4 | GPA=2.07 |
宮崎大とほぼ同じ公式を使用するお茶の水女子大学の教育開発センターによれば、素点の差と5段階のグレードから出されたGPAとの間にはギャップが生じるため、評価が不適切に補正されてしまうとのことだ。また、宮崎大学の教育・学生支援センターは、5段階のグレードによるGPAと素点の平均点との間の差を指摘する。つまりICU方式では、学生はより高い評点を目指すのではなく、最小の努力でより上のグレードを得ようとしてしまうのだ。
一方、お茶の水女子大ではfunctional GPA、つまり﹁十全に機能できる﹂GPAとして、ここで紹介した公式から導いた平均を活用している︵略称fGPA︶。fGPAは4.5~0.5の値をとり、0.5未満は0として見なされる︵functional strict GPA︶。
また、成績を提出する際には、4.0~4.5は4.0が上限で、0.5~1.0は1.0が下限である、これまでの方式と同様のスケールで評価するfGPAも判定される︵functional general GPA︶。functional general GPAは、従来の方式でGPAを評価している国内外の大学に対して成績を示す場合などを考慮しているのである。