新幹線E926形電車
新幹線E926形電車(しんかんせんE926がたでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の検測用新幹線電車(電気・軌道総合検測車[2])である。East i(イーストアイ)の愛称を持つ。
新幹線E926形電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | 東日本旅客鉄道(JR東日本) |
製造所 | 東急車輛製造 |
製造年 | 2001年 |
製造数 | 1編成7両 |
主要諸元 | |
編成 | 6両[1](5M1T[1]) |
軌間 | 1,435 mm[1] |
電気方式 |
交流25,000V 50/60Hz[1] 交流20,000V 50Hz[1] |
最高速度 |
275 km/h[1] 130 km/h(在来線区間)[1] |
起動加速度 | 1.6 km/h/s[1] |
編成定員 | 非営業車両 |
編成重量 | 275 t[1] |
編成長 | 128 m[1] |
全長 |
22,725 mm(先頭車)[1] 20,500 mm(中間車)[1] |
全幅 | 2,945 mm[1] |
全高 | 4,290 mm(パンタグラフ含む)[1] |
台車 |
SUミンデン式ボルスタレス台車 DT207A TR8012(3号車) |
主電動機出力 | 300kW[1] |
駆動方式 | WN駆動方式 |
歯車比 | 3.04[1] |
制御装置 | VVVFインバータ制御[1] |
制動装置 | 電力回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ[1] |
保安装置 |
ATC-2型、DS-ATC[1] ATS-P(在来線区間)[1] |
概要
編集構造
編集車体
編集走行・制御機器
編集検測装置
編集台車
編集集電装置
編集車内および周辺機器
編集925形よりも1両少ない6両編成でミニ新幹線規格の小型車両であるため、車内には検測装置がぎっしりと詰め込まれている。
インテリアデザインコンセプトは、「くつろぎのある知的快適移動空間」とされ、測定機器部分は落ち着いたホワイトグレー、腰掛け部分は目に優しいグリーン、打ち合わせテーブルと妻部分は目のリフレッシュになる明るい木目調が施された。
営業用車両とは異なり乗車人員が少ないため、換気装置は給気・排気ともに換気量の少ないものを使用している。また1号車・4号車・6号車については屋根上の検測装置スペースが大きく室内の発熱量が小さいことから、AU217形(E3系用)1台と小形空調(運転室用と同一のもの)1台が設置されている。
そのほか冷却用送風機や空調装置への電源供給用に50Hzと60Hzの両区間の周波数に対応できるIGBT - PWMコンバータ・インバータで構成されたSC213(容量100kVA)が2号車・3号車・4号車に設置されている[9]。
運転室
編集運転室もE3系に準じたものとなっており、室内の車両情報制御装置には編成構成変更のほか、勾配対応、補助電源回路、先頭台車のMMカット、パンタグラフの上昇パターン関係などの操作機能が追加されている。
1号車
編集1号車は通信・電力・信号関係の車両で、測定項目はオーバーラップ、渡り線装置、トロリ線高低差、電界強度、ピット誤り率、基地局特性、ATC軌道回路、信号電流レベル、前方監視などである。
屋根上には架線離隔測定装置が、床下には自動列車制御装置対応のためのATC受信器や電車電流受信器のほか、主変換装置や空気圧縮機などが設置されている。また列車無線対応のためのLCXアンテナや在来無線用アンテナも取り付けられている。
2号車
編集2号車は信号関係及び通信関係の車両で、測定項目はATC設備、信号電流レベルおよび周波数、信号種別などである。
車内には測定用電源が搭載されているほか、床下には主変換装置や主変圧器、補助電動空気圧縮機などが設置されている。
3号車
編集3号車は軌道検測車で、測定項目は軌道設備、レール軌間の高低および水準、軸重、横圧などである。
専用の軌道検測用台車を履いており、床下には電動空気圧縮機や補助電源用の静止形インバータ装置などのほか、検測装置が搭載されているためE3系とは配電盤の配置が異なり、また床面の高さが他の車両よりも100mm高くなっている。
4号車
編集4号車は電力測定を担当し、測定項目はトロリ線の摩擦、偏位、高さ、硬点、パンタグラフからの衝撃、集電状態の監視などである。
走行・検測兼用パンタグラフの監視用に観測ドームが設けられている。床下には自動列車制御装置対応のためのトランスポンダ車上子や列番車上子、地点検知車上子のほか、主変換装置や主変圧器、補助電動空気圧縮機などが搭載されている。
5号車
編集5号車は電力・信号関係の車両で、測定項目は切替無電圧時間、切替総合時間、電車線電圧、電車電流である。
床下には主変換装置や電動空気圧縮機などが設置されており、また車両後位側車端部には、流し・洋式便所・男子用小便所が設けられている。
なお空車重量は42.1tと、電動車ながら編成中で最も軽い車両となっている。
6号車
編集6号車は信号・電力関係の車両で、測定項目は1号車と同じくオーバーラップ、渡り線装置、トロリ線高低差、ATC設備、周波数、信号種別、ATC軌道回路、信号電流レベル、前方監視などである。
屋根上には架線離隔測定装置が、床下には自動列車制御装置対応のためのATC受信器や電車電流受信器のほか、主変換装置や主変圧器、補助電動空気圧縮機などが設置されている。
編成
編集6両編成のうち、軌道検測車であるE926-3には、同一仕様のE926-13が存在し、一方が検査などで走行できない時でも軌道の検測が行えるようになっていたが、後述の理由により、E926-13は2015年2月4日に廃車された[10]。
- 1号車(E926-1):通信(LCX・在来線列車無線)・電力(架線間隔測定)・信号(ATC用)
- 2号車(E926-2):通信・測定用電源
- 3号車(E926-3,13):軌道
- 4号車(E926-4):電力(集電・検測兼用パンタグラフ)
- 5号車(E926-5):電力・信号
- 6号車(E926-6):電力(架線間隔測定)・信号(ATC用)
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
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形式 | E926-1 (M1c) |
E926-2 (M2) |
E926-3(13) (T) |
E926-4 (M2) |
E926-5 (M1) |
E926-6 (M2c) |
役割 | 通信・電力・信号 | 通信・測定 | 軌道 | 電力 | 電力・信号 |
※ 秋田新幹線大曲 - 秋田間は進行方向が逆になるため、このようになっている。
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E926-1
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E926-2
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E926-3
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E926-4
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E926-5
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E926-6
運用
編集← 東京駅 敦賀・新潟・新函館北斗駅 → | |||||||||
号車 | 1 | 3 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
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N21編成 | E223-1 (T1c) |
E926-3(13) (T) |
E226-101 (M2) |
E225-1 (M1) |
E226-201 (M2) |
E225-401 (M1k) |
E226-301 (M2) |
E215-1 (M1s) |
E224-101 (T2c) |
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E2系N21編成に組み込まれたE926-13
(2013年11月12日 大宮駅)
また、新規区間開業前の試験走行列車にも使用されており、2013年12月2日には北陸新幹線長野 - 金沢間で開業前の試験走行初列車として運行された[14][15][16]。
廃車
編集軌道検測車の予備車であったE926-13は、運行に使用するE2系N21編成の廃車時期と検測機器の老朽更新時期が重なることからそれ以降の検査体制について検討が行われ、その結果営業車両に検測装置を搭載して代替することとなった[17]。
その後、2014年までに慣性正矢軌道検測装置を搭載したE5系U28編成およびE7系F10編成、W7系W5,W6編成が落成したため[17][18]、E926-13は2015年2月4日に廃車された。
脚注
編集注訳
編集出典
編集参考文献
編集記事全体の出典
編集- 『鉄道ファン』2001年12月号 No.488:E926形「East i」(pp.61-67)
- 『鉄道ファン』2006年2月号 No.538:「ドクターイエロー」ファミリー(pp.91-95)
- 『鉄道ジャーナル』2001年12月号 通巻422「イースト・アイ E926形 新幹線電気・軌道総合試験車の概要」pp.75-79
- 『鉄道ピクトリアル』2001年12月号 No.710「JR東日本E926形イースト・アイ」p.76
- 『鉄道ダイヤ情報』2001年11月号 No.211「JR東日本 E926型“イースト・アイ”(新幹線電気・軌道総合検測車)」pp.120-121
- 竹島紀元(編集/発行人) 編『鉄道ジャーナル11月号別冊 新幹線大集合』鉄道ジャーナル社〈鉄道ジャーナル〉、2004年11月1日、88 - 89頁。
外部リンク
編集- 『精密工学会誌』2014年11月号「より速く、快適に、安全に!新幹線軌道総合検測車East-i (PDF) 」(インターネットアーカイブ)
- 東日本電気エンジニアリング株式会社 メンテナンス(East i)