宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月10日、神戸大学大学院理学研究科の樫村博基 助教らによる研究グループが、金星探査機「あかつき」を用いた観測により、金星を覆う雲のなかに巨大な筋状構造を発見したこと、ならびに大規模な数値シミュレーションにより、この筋状構造のメカニズムを解明したことを発表した。 今回、研究グループはあかつきに搭載された波長2μmの赤外線を捉えるカメラ「IR2」を用いた金星の高度50km付近の下層雲に対する詳細な観測データと、海洋研究開発機構(JAMSTEC)のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を用いて金星大気の数値シミュレーションを行うための計算プログラム「AFES-Venus」のシミュレーション結果の比較・解析を実施。IR2の観測から、北半球では北西から南東にかけて、南半球では南西から北東にかけて、幅数百kmの複数本数の白い筋が束になって1万km近くにわたって斜め
東京工業大学(東工大)は、同大の研究グループが、ドル円市場の売買注文のトレーディング・ログをトレーダー個々のレベルで分析し、注文行動時に共通する統計法則を発見したことを発表した。また、それに基づいた市場の数理モデルを構築し、ボルツマン方程式を用いて市場のさまざまな特性を理論的に導出することに成功したことも、あわせて発表した。 この成果は、東工大 科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニットの高安美佐子教授、高安秀樹特任教授、金澤輝代士助教、末重拓己氏によるもので、3月27日発行の米物理学会誌「フィジカル・レビュー・レター(電子版)」に掲載された。 金融市場のブラウン運動と物理のブラウン運動の類似性(出所:東工大ニュースリリース) 金融市場の価格変動は昔から確率的にランダムに振舞うことが知られており、金融工学ではランダムウォークモデルを用いて金融派 生商品の値付けなどが盛んに行われて
順天堂大学は、ドーパミン神経細胞特異的にオートファジーを欠損させたマウスを作製したところ、孤発性パーキンソン病の病態を忠実に表現するモデルマウスとなることを示したと発表した。 パーキンソン病モデルマウスにおけるドーパミン神経細胞の老化による変化 (出所:順天堂大学Webサイト) 同成果は、同大大学院医学研究科神経学の佐藤栄人准教授、服部信孝教授らの研究グループによるもの。詳細は「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。 高齢化社会の到来に伴いパーキンソン病の有病率が上昇している。今後パーキンソン病患者の増加により、予想される社会的損失を軽減させるには、予防法や新規治療法の開発が必須だ。 現在の治療法では、病気が進行してからのアプローチが中心になっているため、効果的な治療のためには発症早期の介入が必要とされている。しかし、パーキンソン病の病態を忠実に表現するモデル動物
宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)などの研究チームは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡による最新の観測データを用いて、宇宙の膨張速度を精密に計算した。その速度は従来予想されていた値よりもかなり速く、既存の宇宙論では説明がつかないものであることがわかってきたという。宇宙膨張を合理的に説明するための新しい物理学理論が要求されている。研究論文は「The Astrophysical Journal」に掲載された。 ハッブル宇宙望遠鏡を用いて宇宙膨張速度(ハッブル定数)の精密測定を行った。画像はハッブル定数の決定に必要な天体までの距離の測定方法を説明したもの。距離決定に利用する天体の数を増やすために観測範囲を従来の10倍に拡大している(Credits: NASA, ESA, A. Feild (STScI), and A. Riess (STScI/JHU)) 最新の観測データによる宇宙の膨張速度は、ビ
国立がん研究センター がん対策情報センターはこのほど、「紙巻タバコの禁煙方法と有効性に関する調査」の結果を明らかにした。同調査は過去5年間に紙巻タバコの禁煙施行者798名を対象にインターネットで実施したもの。 過去5年間に禁煙を施行した798人の属性と喫煙状況および実施した禁煙方法 日本でも禁煙目的として販売されている「電子タバコ」だが、その禁煙効果については、世界的に意見が分かれているという。 電子タバコの支持者は、電子タバコが紙巻きタバコの健康影響を減らす潜在的可能性を持っていると主張しているが、電子タバコに批判的な者は、電子タバコは喫煙者の禁煙意欲を失わせ、社会全体で見ると、タバコの使用を増加させるリスクがあると主張しているとのこと。そこで今回、電子タバコの禁煙の有効性を確認することを目的に調査を実施した。 調査の対象者となったのは、過去5年間に禁煙に取り組んだ20~69歳の禁煙施行
宇宙から絶えず地球に降り注いでいる宇宙線は、遥か彼方のブラックホールや中性子星、超新星残骸などの特殊な環境で発生すると考えられている。このような環境においては、電子や陽子、あるいは陽電子が、人類では作り出すことができないほどの高エネルギーまで加速される。 ところが最近の研究から、地球上の雷雲のなかでも、電子が高いエネルギーにまで加速されている証拠が見つかってきている。雷雲内で加速された電子が大気分子と衝突することでガンマ線が生じ、そのガンマ線が雷雲から放出されているというのだ。いわば、雷雲は「天然の加速器」なのである。 しかしながら、雷雲のなかでどのように加速が起こるのかは、いまだによくわかっていない。さらにはガンマ線だけでなく、高エネルギーの電子が瞬間的に大量に生じている兆候も観測されており、雷雲には未知の現象が多く潜んでいるといえる。 京都大学白眉センター理学研究科 榎戸輝揚 特定准教
同成果は、大阪大学産業科学研究所の真嶋哲朗 教授、藤塚守 准教授らの研究グループによるもの。詳細は米国の学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。 現在の太陽光エネルギー(主に太陽電池)のコストは化石燃料と比較して高価なため、十分に広まっていない。そこで、太陽光エネルギーを利用して水素を高効率に製造できる光触媒の開発が望まれていた。 今回の研究では、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、数層からなるg-C3N4との2成分からなる複合体を合成。この複合体に可視光・近赤外光を照射し、複合体の光触媒作用によって、水から水素が効率的に生成できることを確認した。 また、この複合体において、黒リンが可視光・近赤外光に応答する光増感剤として働き、g-C3N4が可視光に応答する光増感剤として働くこと、ならびに黒リンとg
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