単一原子が量子的な波として広がっていく1920 年代、猫のパラドックスで知られるシュレディンガーは、波動方程式によって粒子が持つ波と粒子の二重性を表現することに成功しました。 新たな研究では単一の原子が波のように振る舞う様子を鮮明な画像として記録することに成功しています。 量子の奇妙な世界では、粒子は特定の場所に固まって「存在する」のではなく、空間のなかで「存在確率が分布する」というあやふやな状態にあることが知られています。 ですがシュレーディンガーの波動方程式を使うと、ある粒子が特定の場所に存在する確率密度を導き出すことが可能になります。 単一原子が量子的な波として広がっていく / Credit:Joris Verstraten et al . In-situ Imaging of a Single-Atom Wave Packet in Continuous Space . arXiv
少なくない人々が「宇宙が137億年前に誕生したのならば、宇宙の半径も137億光年なのではないか?」と間違った考えを持っています。 興味深いことに、この誤解は根強く、現在においても世界各国の科学雑誌や科学ニュースサイトでも、しばしば見受けられます。 今回は「地球の全周」や「銀河団の直径」からはじめて、観測可能な宇宙の直径、そしてその外に広がる宇宙全体の直径まで順に述べて解説しつつ、誤解の原因に迫りたいと思います。 ※1 レオナルド・サスキンド . 宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す . 2006 . 日経BP . ISBN 978-4822282523 https://www.amazon.co.jp/dp/482228252X ※2 Itzhak Bars; John Terning . Extra Dimensions in Space and Time. 2009 .
暗黒物質は観測結果から理論を守る保護剤として誕生した暗黒物質は観測結果から理論を守る保護剤として誕生した / Credit:Canva . ナゾロジー編集部暗黒物質は通常の物質、光、電力、磁力などあらゆるものと相互作用せず、ただ1つ重力のみに関連した「見えない物質」と定義されています。 たとえば通常の水分子がある位置座標に暗黒物質を設置しても、互いに相互作用しないため押し合うことなく同居が可能です。 また光や電磁力と相互作用せず重力のみに従うことから、直接的に測定するには重力の検知装置が必要となります。 このような「見えない物質」の存在が囁かれるようになった理由の1つが、銀河内の星々の回転速度の測定結果にありました。 銀河内部の星々は、太陽系の惑星と同じように、中心部分が早く外縁部が遅く周回しています。 しかし星々の周回速度を詳しく測定したところ、銀河外縁の星々の周回速度が理論の予想より遥
情報だけでなくエネルギーもテレポートするようです。 東北大学の堀田昌寛氏によって2008年に提唱された量子エネルギーテレポーテーション理論の実証実験が、ここ最近、立て続けに成功しました。 発表当初はその奇抜さゆえ注目されませんでしたが、15年の時を経て、量子エネルギーテレポーテーションは物理学界で最も注目される理論となりました。 量子エネルギーテレポーテーションでは「ゼロ点エネルギーの収集」「真空のゆらぎ」「負のエネルギーの発生」「量子もつれ」「事象の地平面」といったSFの世界のような言葉や概念が飛び交い、私たちの宇宙や空間に対する認識を激変させるものになっています。 量子エネルギーテレポーテーションの応用が進めば、SFでしか耳にしなかったゼロポイントエンジンが実現するでしょう。 今回は「そもそも量子エネルギーテレポーテーションとは何か?」という疑問をわかりやすく解説すると共に、次ページ以
1つの粒子の持つ質量と性質を分離する量子チェシャネコ量子チェシャ猫とは、粒子の物性(スピンや質量など)のみをその粒子から分離できるという近年提唱された量子力学的な理論です。 この理論では1つの粒子を質量を担当する部分と、性質を担当する部分に分離させるという、極めて不思議な現象が起こると考えられています。 名前の由来は「不思議の国のアリス」に出てくるチェシャネコです。 作品中、チェシャネコはアリスにたびたび話しかけますが、立ち去る時にはまず体部分が消えて笑顔だけが残されます。 つまり体重が消えて笑顔だけが残る時間があるわけです。 これまで量子力学では1つの粒子が2つの場所に同時に存在したり、もつれ状態にある粒子が観察によって一瞬で常態が決定したり、過去と未来が干渉したり、因果律が崩壊して因果の重ね合わせが起きたりと、日常の常識や人間の直感に反するさまざまな現象が現実の世界で起こり得ることが示
どんなに優れた理論も限界があるようです。 韓国の世宗大学(SJU)で行われた研究によって、遠距離で回転している連星のように重力が弱い領域では、標準的な重力理論が崩壊していることが実証されました。 ニュートンの運動法則やアインシュタインの一般相対性理論によれば、重力の影響が弱い世界でも強い世界でも同じ方程式に従うとされています。 しかし新たな観測では、2000au(天文単位)以上離れている連星など、互いに与える重力が極めて弱い場合には、標準的な重力理論で予想されるよりも重力加速度が強くなっていることが示されました。 量子の世界では日常的な世界の物理法則が通じなくなることが知られていますが、重力でも同じように小さな数値では法則が異なってくるのでしょうか? 研究内容の詳細は2024年1月8日に『The Astrophysical Journal』にて公開されました。
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