![石牟礼道子のことば 声に出す文芸、紙に叩きつける|好書好日](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/3ebb11660ca298f252440645edd6eb8bba9ab0a9/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fp.potaufeu.asahi.com%2Fe9c8-p%2Fpicture%2F12702158%2F6a27f4a03ec60121bdf9a9c4dd4c7181.jpg)
折口信夫 [著]安藤礼二 総索引が付いた全集ばかりか講義録まで完備している。個人の思想を研究するのに、一見これほど恵まれた環境はない。けれども、いったんその「森」に足を踏み入れるや、あまりに鬱蒼(うっそう)としていて方向感覚を見失ってしまう――折口信夫とは、そんな思想家だ。一体これまで幾人が踏破を試み、失敗を重ねてきただろうか。 安藤礼二は、2002年に「神々の闘争――折口信夫論」を世に問うて以来、一貫して批評家としてこの巨人と向き合ってきた。テキストを厳密に読み抜き、読み破った者でなければ見えてくることのない新たな地平を、独力で切り開いてきたのだ。本書は、10年以上にわたる安藤折口論の集大成として大きな意味をもつ。 第1章から劇的である。これまでの研究で空白のままだった大学時代に、折口は本荘幽蘭(ゆうらん)という女性と出会い、神風会という神道系の団体と関わっていたことが、新資料を交えつつ
■ 「おかあさん」と呼ぶ声 最近では自分の母親を「嫌い」だと言う娘が増えて来て「母と娘の厄介な関係」が新しい問題として浮上したようにも思われているが、有吉佐和子はそんなものを五十年前から書いていて、その当時にベストセラーになっているのだから、「母と娘の関係」は目新しい問題ではない。 紀州弁の美しさが伝わる『紀ノ川』は、紀州を舞台にした女四代の生きる様を書いた彼女の自伝的な作品で、女四代である以上、当然ここには母と娘の姿がある。『紀ノ川』はとても美しい作品だが、稀代(きだい)のストーリーテラーの作としては、いささかおとなしすぎるかもしれない。だから『紀ノ川』の後に登場する『香華』では、『紀ノ川』で抑制、隠蔽(いんぺい)されていたものが表沙汰になる。 紀州の地主の娘の郁代は、美貌(びぼう)だが派手好きの奔放な女で、何人も男を替えて、「身を落とす」という感覚抜きで遊女にまでなってしまう。自堕落で
「ノンフィクション」の棚。「闘病・医療」や「動物」などの仕切り板が並ぶ=東京都渋谷区の紀伊国屋書店新宿南店 ノンフィクションを取り巻く状況は厳しい。取材費が出ないことも多く、主な発表の場だった総合誌の休刊も相次いでいる。生き延びるための模索が続く。 東京都内で6月に開かれた大宅壮一ノンフィクション大賞の贈呈式。立花隆選考委員は「大組織に所属しないフリーの物書きが書いた結果として(賞を)争うノンフィクションが、少なくなってきている」と述べた。候補者には現役新聞記者も名前を連ね、平均年齢は55歳。受賞したのは船橋洋一・元朝日新聞社主筆(68)が退社後に執筆した『カウントダウン・メルトダウン』(文芸春秋)だった。 選考結果発表の記者会見では、関川夏央選考委員も「20代で才能のある人をノンフィクションに勧誘できるかな。今の状況でフリーランサーがどうやってお金を得ていくのか」と懸念を示した。 立花(
古典の新訳ブームがミステリーにも及んでいる。ドイルにクイーン、カーやチェスタトン。オールタイムベスト級の作品が、次々に新しい装いをまとっているのだよ、ワトスン君。 昨年末、四半世紀ぶりに週刊文春が企画した「東西ミステリーベスト100」。海外上位10作中8作は今世紀の新訳、うち6作は2010年以降だ。『シャーロック・ホームズの冒険』のように、同時期に複数社から出る作品もある。 早川書房は10~11年、『そして誰もいなくなった』などクリスティ10作品を新訳、11年のカー『火刑法廷』のように、発売早々に版を重ねた作品も多い。 山口晶編集本部長によると、新訳は機会があるごとに出してはきた。今回、まとまった数を出版したのは、村上春樹訳『ロング・グッドバイ』(10年に文庫)が呼び水になったという。 「一般文芸だけでなく、ミステリーでも新訳効果があるとわかった。ちょうど、古典作品の電子書籍化を進めようと
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