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「うちの子は、良太くんみたいにはなれへんと思うから……」 先週はるばる山を越えてサイン会に来てくれた友人が、ポロッとこぼした一言が突き刺さった。 良太とはわたしの弟だ。ダウン症で知的障害がある。友人の3歳になる娘さんも同じだった。 「良太が3歳やったときより、ずっとお利口さんに見えるで」 それでも、友人の顔は曇ったままだ。 「この子な、人にあんまり興味がないねん。おしゃべりもほとんどない。わたしにとってはカワイイけど、わたしがおらんところで、誰からも愛してもらわれへんかったらどないしようって想像すると、怖くなる……」 困らせてごめんと泣きそうに謝る友人を見て、わたしはうまい返事がとうとう見当たらなかった。 彼女に手を引かれる娘さんは、じっと窓の外を走る電車を見つめる瞳は、あんなにも愛しかったのに。 弟との日々を書くことは楽しく、読んでくれる人がいるのは嬉しい。いつか弟がひとりで生きていくか
ジブリパークの凄みは、どこにあるのか? 2022年11月1日、愛・地球博記念公園のなかにオープンした「ジブリパーク」へ、弟と行ってきましたレポート。 オープン初日のチケットを、運良く買うことができまして。 入場できたのは「ジブリの大倉庫」エリアのみでしたが、とてつもなく大切で切ない何かを、ドドドと怒涛のように受け取り、たまらなくなってしまったので、言葉にしておきます。 「ジブリパーク」のちゃんとした案内や魅力は、ほかの人がエエ感じの写真とともに沢山シェアされてるので、そちらを頼ってください! ここにあるのは、創作とジブリに救われて育ったがゆえに、感情を地球投げされ、深読みしすぎながら勝手に泣いている、わたしのド感想です。 徹夜で書いたら、13,000文字になりました。どうかしている……。 【だいたい書いてあること】 ●都合により規模は小さいが、雑さがなく、宮崎吾朗監督が丁寧に愛を込めて作っ
渋谷パルコの『ほぼ日曜日』イベントで、写真家の幡野広志さんとお話した。 幡野さんは、奥さんと、息子さんの優くんへあてた48通の手紙をまとめた『ラブレター』という本を出されたばかり。 そんなラブレターにも収録されている写真と文章が、息をするように並べんだり、浮かんだりしている展覧会場に、たくさんの人たちが集まってくれた。 お話するテーマは『family』なので、わたしは母をつれて、familyで参加した。たぶん、幡野さんが思うfamliyと、ウチは似てるんじゃないかと思った。似てたらいいなとも思った。 これがマフィアにおけるfamilyだったらまったく別の意味になるし、わたしもまったく別の人を連れてきたので、言葉は意味よりも、だれが言うかが重要なのだ。 イベントのはじまりが19時だったので、早めにパルコへ着いたわたしと母は、ご飯を食べることにした。 たまたま「13歳からの地政学」というとても
課題がポンポコと出てくる新しいグループホームに、弟を送り出してよいものか。 どんだけ悩んだって、朝はやってくるのである。 別府の朝だ。 ところで、別府の夜に巻き戻すと、こんな感じだった。 日本中のキッズたちを別府へと駆り立てる!夢の楽園! 杉乃井ホテルだ! その設備のワンダーランド具合からそこそこお値段が張るのであるが、キナリ★マガジンの購読料をブッ込ませてもらった。やっててよかったキナリ★マガジン。腹が減っては車は買えぬ。 このブッフェの目玉は、カニ食べ放題。あまりの出血大サービスに、カニだって勘弁してくれと願ってる。 800席近い巨大なブッフェ会場には、どこもかしこも、家族たちが目を血走らせてカニを食べている。カニ以外のものを腹に入れてなるものかという己に課した制約すら見える。言っちゃ悪いけど、あんたらは本当にそこまでしてカニが食べたいのか。 「お食事中、すみませ〜ん!ちょっとお写真、
送迎車のためならエンヤコラと大分県別府市の車屋さんまで行ったら、なんと、ほぼ新車のセレナと出会えたのだった! 車屋の馬〆さんから、くわしい仕様や納期の説明を受けていると。 電話が鳴った。 グループホームの責任者、中谷のとっつぁんからだ。ちょうどよかった。セレナを入手できたって言おう。喜ぶぞォ。 「もしもし、お姉さんですか」 「はーい!ちょっと聞いてくださいよ、中谷さん。ありましたよ!車!セレナ!ほぼ新車!7人乗り!」 「えっ、はっ……ええ……!?」 興奮のあまりたたみかけてしまった。しかし、中谷のとっつぁんの反応が予想と違う。ここは「ええっ!?」ではないのか。 いやな予感がした。 「あの、それはもう、本当に、ありがとうございます……そんないい車を……」 「どうしました?」 「ええ、あのですね、お姉さんのお耳に入れておきたいことが」 基本的にわたしのお耳には普段、右から左に抜けていくザルの役
朝日新聞社さんが2022年5月5日の子どもの日に発行する『未来空想新聞』で「家族の未来」をテーマに、エッセイを書かせてもらいました。 紙面には「家族を愛する、距離を愛する」と題して1,000文字で載っていますが、みなさんすでにお察しのとおり、性懲りもなく3,000文字近く書いてしまったため、ノーカット版を公開します。 ユニークな機会に感謝するとともに、新聞をきっかけにみんなで話してみようね〜という企画なので、みなさんが考える家族の過去や未来も、どこかで語ってみてくらはい。 おかしい。 5年ぶりに顔をつきあわせた友人と話しこみ、30分後に首をかしげた。 うだつの上がらないわたしが 「生まれてはじめて手作りした味噌をウッキウキで舐めたら、なんの味もしなくて膝から崩れ落ちた」 という悩みをぶちまけると、友人は 「混ぜ加減が甘かったのは?」「引っ越しのとき、新幹線で味噌壺を運んだのがまずかったので
ばあちゃんの耳が、日に日に遠いところへ行っている。 たぶんもう青函トンネルとあちら側とこちら側くらいの距離がある。 「ごちそうさま」の代わりに「お地蔵様」と言っても気づかなかった。 高い音が聞き取りづらいらしく、声域がソプラノ〜アルトの岸田家ではできるだけ低い声で話さないとなんの連絡もできないので、ヤクザのタマの取り合いみたいなドス声が飛び交う家になってしまった。ヴオオィ、ゴルァ、風呂わいとるでワレェ……! さて。 また、介護保険の認定調査の季節が巡ってきた。 介護が必要な人のところに、調査員が参上し、暮らしぶりをちょっと見たり、質問をしたりして、その結果をもとに「要支援1」とか「要介護2」とかの度合いを決めてもらうやつ。 「あんたはわりと大丈夫そうやね」 となると、度合いは下がり 「あんたはかなり大変そうやね」 となると、度合いは上がる。 人間誰しも健やかでありたいので「大丈夫そうやね」
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