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www.newsweekjapan.jp/mori
<死刑囚や司法関係者に取材を重ねてきた僕は、日本では冤罪がとても多いと実感している。和歌山カレー事件の犯人は林眞須美死刑囚だと思っているあなたには『マミー』を観て衝撃を受けてほしい> 今年9月26日に再審公判の判決が言い渡される袴田事件は、日本の刑事司法においては例外的な冤罪事案だとあなたは思うだろうか。僕はそうは思わない。オウムの死刑囚たちとの面会をきっかけに日本の刑事司法について考え始めた20年前から現在に至るまで、多くの死刑囚や司法関係者に取材を重ねてきたが、冤罪はとても多いと実感している。 理由の1つは、否認すると勾留が続く「人質司法」や機能していない再審制度、検察側が不利な証拠を提示しなくてもよいなどの司法制度の欠陥。もう1つは、検察や裁判所は決して間違えないとする無謬(むびゅう)性への強固な信仰と、メンツや責任回避を最優先とする組織論がとても強いこと。そして、悪は決して許さない
<民族は同じ。言語も宗教も同じ。なのに差別は続いている──海外の学者やジャーナリストは、日本の部落差別についてどうしても分からないと首をかしげる> 1999年に発表したテレビドキュメンタリー『放送禁止歌』は、絶対的な放送禁止歌だと多くの人から思われてきた岡林信康の「手紙」を、ラストにフルコーラスで流した。なぜこの曲は放送禁止歌だと思われてきたのか。被差別部落問題をテーマにしているからだ。でも差別を助長するような内容ではない。そんな曲を岡林が作るはずはない。 なぜ差別があるのか。する側とされる側の何が違うのか。その差別の帰結として多くの人が苦しんでいる。「手紙」の中の女性は、自らの苛烈な体験を訴える。でも声高ではない。小さくて弱々しい声だ。だからこそ歌が必要なのだ。 仕事柄、海外の学者やジャーナリストと話す機会が多い。今も世界にはさまざまな差別がある。でも日本の部落差別について、どうしても分
<原作・監督・脚本は全員在日。重いテーマがコメディだからこそ深く刺さる。画期的な作品『月はどっちに出ている』が、邦画の世界にもたらした影響とは?> 新宿梁山泊の公演に通った時期がある。かつて新劇の養成所に所属していた頃の同期の友人で、その後に状況劇場に所属した黒沼弘己が旗揚げのメンバーだったからだ。 その黒沼や代表の金守珍(キム・スジン)、六平(むさか)直政などの顔触れが示すように、旗揚げ時の新宿梁山泊は、状況劇場の分派的な色合いが強かった。でもすぐに独自路線を歩み始める。その原動力の一つが、座付き作家として戯曲を書き続けた鄭義信(チョン・ウィシン)の存在だ。 公演終了後は、テント内で行われる打ち上げにも参加した。焼酎が入った紙コップを手に大きな声でしゃべるウォンシルさんを知ったのはその頃だ。その外見と声で、舞台では極道や暴力的な男の役が多かったウォンシルさんは、最初はちょっと怖かったけれ
<カメラは由宇子と共に動いてゆく。由宇子がいないシーンはほとんどない。徹底して禁欲的な手法は理解するが、見ながら不満がたまってゆく。志は大いに共感できるし、テーマも素晴らしいのに...> 見たほうがいいよと何人かに言われた。絶賛している友人も多い。だから見た。見終えて吐息が漏れた。感嘆の吐息ではない。微妙過ぎる仕上がりに漏れた吐息だ。 『由宇子の天秤』の由宇子は、女子高生と教師の自殺事件を追うテレビドキュメンタリーのディレクター。保身を優先するテレビ局上層部と対立を繰り返しながら、少しずつ事件の真相に近づいてゆく。しかし由宇子はある日、学習塾を経営する父が隠していた衝撃的な事実に直面する。それはまさしく、自分がいま撮っている作品のテーマに、際どく抵触する事態だった。 ......ざっくりとストーリーを紹介した。ここまでは前半。後半ではドキュメンタリー制作と父親のスキャンダルに絡めて、由宇子
<バスジャックして皇居に突撃する軍服姿の老人、盗んだプルトニウムで原爆を作る中学教師──。長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』は、リアリティーをほとんど放棄し、エンタメに振り切っている。しかし、荒唐無稽なだけの映画ではない> 大学を卒業した翌年だったと思う。いや待てよ。単位が足りなくて4年生を2回やったから、まだ大学に籍はあったかもしれない。 とにかくその時期、アパートの部屋にあった電話機が鳴った。かけてきたのは、大学で同じ映研に所属していた黒沢清だ。 この時期の黒沢は、長谷川和彦監督(ゴジさん)の新作の制作進行をやっていた。急な話なのだけど、と黒沢は切り出し、明日のロケに役者として参加できないか、と言った。 この時期の僕は、新劇の養成所に研究生として所属していた。つまり役者の卵。卵のまま孵化しなかった。相当にハイレベルな若気の至りだ。 思わず沈黙した僕に、ジュリーに間違われる役なんだ、と黒
<監督の田中登は絶対に生を否定しない。あいりん地区の季節労働者たちと娼婦の主人公。登場する女や男たちはとにかく生きることに前向きで...> ニューヨーク・タイムズがベトナム戦争の米機密文書ペンタゴン・ペーパーズを掲載し、連合赤軍が榛名山の山岳ベースで同志たちの殺戮を始めた1971年。日活は業績悪化の打開策として、ロマンポルノ路線に舵を切った。つまり成人映画。この時期に中学生だった僕は、さすがにリアルタイムには観ていない。 でも大学に入って映画研究会に所属してからは、都内の名画座に通い続けて、かなりの数のロマンポルノを観た。ロマンポルノの条件は「10分に1回の濡(ぬ)れ場があること」と「尺は70分前後であること」。それさえ守れば、監督たちは自由に作ることができた。だからこの時期、神代(くましろ)辰巳や曽根中生など既に大御所となっていた監督だけではなく、石井隆や金子修介、崔洋一に周防正行、相米
<『新世紀エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』監督の庵野が初めて手掛けた実写映画。トパーズの指輪が欲しい女子高生と奇妙な性癖の男たち。何かを欲しいと思ったら、あらゆる可能性を試すのがいかにも原作の村上龍的> 今回の作品の監督は庵野秀明。と書けば、『シン・ゴジラ』を多くの人は思い浮かべるだろう。でも違う。『シン・ゴジラ』はこの連載で取り上げない。......いや、断定はしないほうがいいか。もしも連載が何年も続いて観た映画がほとんどなくなったら、やれやれと吐息をつきながら取り上げるかもしれない。ただし今はまだ、『シン・ゴジラ』について論評しようとは全く思わない。 ということで今回は、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』制作終了後、庵野が初めて手掛けた実写映画『ラブ&ポップ』だ。原作は村上龍。だからストーリーは知っていた。でも『新世紀エヴァンゲリオン』を監督した庵野がどのように実写映画を撮るのか(脚色
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自治権を回復し、州政府と「亡命」政府の2つができたカタルーニャ Photograph by Toru Morimoto <スペインのラホイ政権が崩壊し、独立派政党がラホイ不信任案に賛成したカタルーニャ州の自治権は回復した。「敵の敵」が退場しただけで不透明な現状は変わらないが、今後はどうなるのか> 6月1日、「トレーロ! トレーロ! トレーロ!」と、通常は闘牛場で聞く闘牛士への賞賛の叫びが鳴り響いた。 しかし、そこは闘牛場でなく、首都マドリードのスペイン国会。政府与党の国民党員が党首でスペイン首相のマリアノ・ラホイに送った賞賛の叫びとスタンディングオベーションだ。 だが、それは本当は牛を仕留めたラホイへの賞賛ではない。国会を追われる彼への惜別の挨拶だった。 5月24日に1999〜2005年の公共事業の発注を巡る汚職事件の判決が下され、横領、脱税、マネーロンダリングなどの罪で国民党の元幹部ら2
「カタルーニャのための団結(ジュンツ・パル・カタルーニャ)」の選挙ポスター。「プッチダモン・私たちの首相」とカタルーニャ語で書かれている Photograph by Toru Morimoto <自治権を奪われたカタルーニャ州で12月21日に行われる地方選挙。独立派と反独立派が五分五分とみられているが、選挙後は「亡命政府」が樹立される可能性もある> 12月21日のカタルーニャ地方選挙は、そもそも実施する必要はなかった。前回2015年9月の地方選で、135議席中11議席しか取れなかった国民党が、合計72議席を持つ独立派連立政権のカタルーニャ政府を解体して、独立派潰しのために強行する選挙だ。国民党は、カタルーニャ独立運動に反対するスペイン中央政府の政権与党である。 選挙戦は異常事態の中で進んでいる。連立与党2党の党首が、両者とも現地カタルーニャに不在のままだ。 元カタルーニャ州首相で政党「カタ
スペインの首都マドリードに拠点を置くテレビ局の中継に、「政治犯釈放」とカタルーニャ語で書かれたビラを持って、テレビ画面に映り込もうとするカタルーニャ市民たち。カタルーニャ州議会議員8人と独立派市民団体のリーダー2人の釈放を求めるデモで(バルセロナ、11月8日) Photograph by Toru Morimoto <カタルーニャ独立問題を機に、カタルーニャ公共放送にスペイン政府が介入し始め、首都マドリードのメディアも政府に追従して「独立派」批判を繰り広げている> 「ボン・ディア! ダスペルタ、カタルーニャ(おはよう! 起きて、カタルーニャ)」 まだ薄暗い朝、カタルーニャ人女性ジャーナリスト、モニカ・タリバスの声がラジオから聞こえる。 「7時です。カタルーニャ・ラジオ『朝』です」 こうして、カタルーニャの1日が始まる。 カタルーニャの公共放送は、カタルーニャ・ラジオとカタルーニャ・テレビの
カタルーニャ独立旗で自分の口を覆う青年。自治剥奪に伴い、スペイン政府が直轄するカタルーニャ州庁の前で、自治奪回と政治犯の釈放を求めるデモ(11月8日) Photograph by Toru Morimoto <スペイン語よりフランス語に近いカタルーニャ固有の言語「カタルーニャ語」。カタルーニャ人のアイデンティティーの象徴だが、独立をめぐる議論では「ねじれ」が見られる> カタルーニャには固有の言語「カタルーニャ語」がある。スペイン語の方言と思われがちだが、俗ラテン語から派生した南仏を拠点とするオック語圏の言語であり、イベリア半島を拠点としてアラビア語の影響を強く受けているイベロ・ロマンス語圏のスペイン語とは成り立ちが異なる。 スペイン語が第一言語の人々にとって、カタルーニャ語は厄介だ。例えば「食べる」はカタルーニャ語では「menjar(マンジャ)」、フランス語では「manger(モンジェ)」
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<サミットでのトランプ大統領の配慮の無い言動は、長い時間をかけて醸成されてきた米独の信頼関係を傷つけた。ドイツ外交は変化するのか> サミットが残したトランプ大統領の悪印象 G7サミット終了後、ドイツに戻ったメルケル首相はキリスト教社会同盟(CSU)の集会で「ドイツが他国に頼れることが出来た時代はある程度終わった("Die Zeiten, in denen wir uns auf andere völlig verlassen konnten, die sind ein Stück vorbei.")」と述べた。 この発言中の「他国」がアメリカを意味していることは文脈上明らかである。メルケル首相はこの集会前の数日間、トランプ米大統領と共にNATOサミット、G7サミットをはじめとする多くの会議に出席している。またトランプ大統領は他のEU首脳との会談でドイツの対米貿易黒字や防衛費の対GDP比での
ザールラント州議会選挙の勝利を祝うメルケル首相とクランプカレンバウアー州首相(CDU) Fabrizio Bensch-EUTERS <9月に実施されるドイツ連邦議会選挙の行方を占う試金石として注目されてきたザールラント州議会選挙は、メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)が勝利した。その背景は......> ドイツ選挙の年 -- 2017年 ドイツでは2017年は3つの州議会選挙と4年に一度の国政選挙(連邦議会選挙)が実施され、2月には大統領選挙も実施されたので「選挙の年」と呼ばれる。フランスやルクセンブルクと国境を接するザールラント州の議会選挙が3月25日に実施させた。この選挙は9月24日に実施される連邦議会選挙の行方を展望するうえで最初の試金石となるとして注目されてきた。 1月末に社会民主党(SPD)が前欧州議会議長のマーティン・シュルツを首相候補として以来、SPDは一気に支持を回
<今年9月にはドイツ連邦議会選挙が実施される。突然登場したシュルツ社会民主党(SPD)首相候補が大きな注目を集めている。シュルツとは何者か?> 2017年の選挙とシュルツの登場 イギリスのEU離脱決定、ポピュリスト政党の台頭などEUを取り巻く環境は厳しい。ギリシャ危機をはじめとする南欧諸国の債務危機はある程度沈静化してはいるものの、本質的には解決しておらずなおくすぶりつつけている。クリミア併合後のロシアとの冷たい関係や2015年ほどでないとしても押し寄せる難民問題にも解決の展望が開けているわけではない。トランプ米大統領の就任はこれまでの米欧関係を揺るがす可能性もある。 このようにさまざまな不安要素に満たされている2017年にヨーロッパではいくつかの重要な選挙が実施される。とりわけ注目されるのがウィルダース党首率いる排外主義的右翼政党自由党の議席数が注目される3月のオランダ議会選挙、ルペン国
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