コーナーキューブ
リトロリフレクターの一種
原理
編集応用例
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身近には、道路や車両に取り付けられている反射板がある。小さなコーナーキューブを多数並べたもので、プラスチック製が多い。夜間、それ自体は発光しないが、自動車のヘッドライトなどを受けて反射し、路肩や分離帯、他の車両の位置を運転者に知らせる。通常、道路用は黄色、車両用は前方が黄色で後方は赤と黄色である︵車両は半分より前から反射も含めて赤い光を出してはいけない︶。
自転車では、後部の他、ペダルや車輪のスポークについていることもある。自動車ではコーナーキューブ・プリズムとして、テールランプやブレーキランプのレンズと兼用になっていることが多い。点灯走行中は必要ないが、駐車などで消灯時に必要となる。
より高い精度のものは測量に用いられる。キューブも単体でガラス製が多い。レーザー光を当てその帰ってくるまでの時間から長さを測定する。遠距離の例では、アポロ宇宙船︵11号、14号、15号︶が月面にコーナーキューブによるレーザー反射鏡を設置しており、地球からレーザーを発射して月までの距離の測定に用いられている。また、1986年8月14日にH-Iロケット1号機で打ち上げられたEGS︵愛称﹁あじさい﹂︶は多数のコーナーキューブを直径2.15mの球面に配置した測地衛星︵受動式︶である。
電波では、1mほどのアルミ箔を貼った板でコーナーキューブをつくりスペースシャトルから地表を測量したことがある。︵Shuttle Radar Topography Mission︶
レーダーリフレクター
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レーダーコーナーリフレクターは、レーダーから放射されるマイクロ波をレーダーアンテナの方向に意図的に反射させる装置となる。このため、レーダー画面上では強い反射波︵応答波︶を示す。コーナーリフレクターは、3枚の導電性メタルシートまたは、スクリーンを90°の角度で貼り合わせ、前方から入射した電波を平行に反射させる目的で角︵コーナー︶が形成されている。あらゆる方向から入射する電波を反射させるコーナーリフレクターを製作するには、8個のコーナーリフレクターを背中合わせに配置し、八面体︵ダイヤモンド形状︶に形成する[1]。また、反射面は入射する波長より大きくなければ機能しない[2]。
海事業界では、船橋、ブイ、船舶、特に救命ボートに設置されることによって船舶のレーダー画面上で明瞭に表示される[1]。コーナーリフレクターは、海面から少なくとも4.6 m︵15フィート︶の高さが推奨されていることから主にマストなどに設置される。これにより、4.5海里︵約8キロ︶の最小反射距離を得ることが可能となる。また、海上レーダーは波長2.5 - 3.75 cmのXバンドマイクロ波を使用するため、30cm以下の小型反射板が使用される。航空業界では自機レーダー上で映る様、地方の滑走路や自家用滑走路などにコーナーリフレクターを設置している例がある。
リバーサルミラー
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コーナーキューブの原理を応用したものにリバーサルミラーがある。これは直角に組み合わせた2枚の鏡である。通常の鏡は左右が逆転︵正確には前後が逆転︶して見えるが、リバーサルミラーでは左右を保ったままで自らの像が映る︵他人の目やカメラに映るままの姿が見える︶。
﹁#原理﹂にある、2次元コーナーキューブでの光の軌跡を見ればわかるように、このような鏡では右の鏡に入射した光が左の鏡から出ていき、逆に左の鏡に入射した光は右の鏡から出てくる。このため前後と左右の両方が反転し、結果的に対象を客観的に見た映像が得られる。
なお、リバーサルミラーは美容用として簡単に入手できるが、右手を動かすと向かって左の手が動くなど、一見して反転して見え、また、我々の多くは普段用いる左右逆転した鏡の像に慣れており、またそれを参考にして化粧をしたり顔面の無意識の補正を行っているため、リバーサルミラーに映る像を見ると強い違和感を覚える。特に、通常の鏡像では気付かなかった顔面・頭部の歪みを感じることが多い。
同じ機能の装置
編集脚注
編集- ^ a b “ご存じですか?レーダー反射器の正しい取り付け方”. 第四管区海上保安本部. 2022年8月20日閲覧。
- ^ Kraus, John; Marhefka, Ronald (2002). Antennas for All Applications (3rd ed.). McGraw Hill. p. 365. ISBN 0-07-112240-0