﹃訓民正音﹄では舌が縮まり、声が深い音とされている。世宗序では﹁如呑字中聲﹂と規定されている。その音価は/ㅏ/と/ㅗ/の中間の音で、非円唇後舌半広母音[ʌ]であったと推測されている。
その第2音節以下で使われた音価は、16世紀末頃に、/ㅡ/へと変化し、第1音節での音価は18世紀中頃に/ㅏ/へと変化した。ただし、唇音と歯音の間あるいは歯音と唇音の間では/ㅜ/に変化したものが多い。また/ㅓ/や/ㅣ/の音に変化したような例もある。
なお音自体は他の母音へと変化したが、表記としては20世紀初頭まで用いられていた。
以上のように現在では標準語の音韻体系からはなくなったが、済州方言に円唇後舌広母音[ɒ]として残存している。
『訓民正音』制字解によるとその丸い字形は天を象ったものとされ、天を表す陽母音の基本字とされる。
中性母音の字母と組み合わさって ㆎ が作られた︵
ㆍ + ㅣ︶。この字母は下降二重母音[ʌi̯]を表したと推定される。
また、ㆍは造字の基本となる天・地・人を表す3つの基本字の一つでもある。母音字母の造字において絶対的な役割を果たしており、基本字母ㅏ ㅑ ㅓ ㅕ ㅗ ㅛ ㅜ ㅠの短い棒はもともとこの字母に由来する。ㆍが上と右に置かれたときは陽母音であり、下と左に置かれたときは陰母音とされた。
古くは﹃訓蒙字会﹄︵1527年︶では﹁思︵現発音は사、サ︶﹂の初声を除いた発音で呼ばれていた。後に音価が/ㅏ/ [a]と区別がなくなったが、字母の配置においてㅏが初声字の右側に置かれたのに対し、ㆍは初声字の下側に置かれたので、アレア︵下のア︶と呼ばれるようになった。
Unicodeにおける文字コード
名称 |
種類 |
コード |
HTML実体参照コード |
表示
|
HANGUL LETTER ARAEA |
単体 |
U+318D |
ㆍ |
ㆍ
|
HANGUL JUNGSEONG ARAEA |
中声用 |
U+119E |
ᆞ |
ᆞ
|