八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故(はちおうじししかいしフッかすいそさんごとふじこ)とは、1982年(昭和57年)に東京都八王子市で発生した医療事故で、歯科治療用のフッ化ナトリウム(NaF)と間違えて、歯科技工用かつ毒物のフッ化水素酸(HF)を歯に塗布された女児が死亡した。
概要
編集経緯
編集裁判例
編集- 東京地方裁判所八王子支部判決、昭和58年2月24日、昭和57年(わ)第1222号、『業務上過失致死被告事件』、判例タイムズ678号60頁[11]。
主文
被告人を禁錮1年6ヶ月に処する。
この裁判が確定した日から4年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
適用した罰条
刑法211条前段、25条1項
罰金等臨時措置法3条1項1号
刑事訴訟法181条1項本文
罰となるべき事実の要旨
起訴状記載の公訴事実のとおりであるから、これを引用する
(裁判官渡邊一弘)
《参考・起訴状》
業務上過失致死 刑法第211条前段
公訴事実
被告人は、歯科医師として東京都〈住所省略〉にX歯科○○台医院を開設し歯科医業に従事する者であるところ、昭和57年4月20日午後3時50分ころ、前記歯科医院において、A女(当時3年)に対し、その歯牙に、う触予防剤を塗布しようとするにあたり、薬品類容器の内容物についての確認手段を尽し、薬品類の誤使用による事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、同歯科医院内薬品棚に備え置かれていた毒物であるフッ化水素酸46パーセント溶液500グラムの容器外側に貼付されている「フッ化水素酸」、「弗化水素含量46%」等と表示された貼り紙に注意を払わないまま、同容器内の溶液が、う触予防剤であるフッ化ナトリウム2パーセント溶液であると軽信し、同容器中のフッ化水素酸46パーセント溶液約5ミリリットルを脱脂綿に浸して前記A女の歯牙及び口腔内に塗布した過失により、同女をして、塗布された同溶液を嚥下するに至らせ、よつて、同日午後6時3分ころ、同市〈住所省略〉東京医科大学八王子医療センターにおいて、同女を、フッ化水素酸による急性中毒により死亡させたものである。
罪名及び罰条
脚注
編集参考資料
編集- 飯田英男「刑事医療過誤訴訟 ――その後の動向―― (昭和五一年一〇月~昭和六二年一〇月 全一六件)」『判例タイムズ』第678号、判例タイムズ社、1988年12月15日、41-72頁、NAID 40003208071。