周知の埋蔵文化財包蔵地
埋蔵文化財を包蔵する土地、すなわち「遺跡」を意味する法律用語。全国におよそ46万ヶ所存在する。
(埋蔵文化財包蔵地から転送)
周知の埋蔵文化財包蔵地︵しゅうちのまいぞうぶんかざいほうぞうち︶とは、﹁地中に埋蔵された状態で発見される文化財︵=埋蔵文化財︶﹂を包蔵︵内部に含んでいる・包み隠している︶する土地、またはその範囲のこと。法律用語だが、考古学用語のいわゆる﹁遺跡﹂に最も近い概念である。文化庁によると、貝塚や古墳、城跡、都城などの遺跡≒埋蔵文化財包蔵地は全国におよそ46万箇所存在するとされる[1]。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a0/Kyoto-hakkutu-huukei.jpg/220px-Kyoto-hakkutu-huukei.jpg)
定義
編集「埋蔵文化財」も参照
埋蔵文化財とは、事実上、考古学の研究対象となる遺跡あるいは考古資料とほぼ同義である。
ただし、厳密に﹁埋蔵文化財﹂といった場合、土地に埋蔵されている文化財としての価値が認められる遺構と、文化財としての価値が推定される民法第241条の﹁埋蔵物﹂としての遺物のことを指しており、面的な遺跡及び遺跡の範囲としてとらえた場合は、文化財保護法第93条︵旧第57条の2︶の﹁貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地﹂として﹁周知の埋蔵文化財包蔵地﹂が定義される。
なお、埋蔵文化財包蔵地内で、過去人類が活動を始めて以降、その土地に堆積を続け、各時代の遺物︵土器・石器など︶を含み、かつ後世の攪乱を受けていない地層︵土層︶のことを﹁埋蔵文化財包含層︵ ぶんかざいほうがんそう︶﹂︵考古学用語の遺物包含層とほぼ同義︶と言う。
法律上定義される範囲
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土地に埋蔵されている文化財としての価値が認められる﹁遺構﹂、および、有形文化財としての価値が推定される﹁遺物﹂の範囲、すなわち、法的に﹁埋蔵文化財﹂として取り扱うことのできる範囲は、1998年︵平成10年︶9月29日付文化庁次長による都道府県教育委員会教育長あての﹁埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について︵通知︶﹂、いわゆる﹁平成10年円滑化通知﹂によって定義された。
それによると、﹁埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則﹂は、
(一)おおむね中世までに属する遺跡は、原則として対象とすること。
(二)近世に属する遺跡については、地域において必要なものを対象とすることができること。
(三)近現代の遺跡については、地域において特に重要なものを対象とすることができること。
とされ、﹁埋蔵文化財として扱う範囲の一基準の要素﹂として、﹁遺跡の時代・種類を主たる要素とし、遺跡の所作する地域の歴史的な特性、文献・絵図・民俗資料その他の資料との補完関係、遺跡の遺存状況、遺跡から得られる情報量等を副次的要素とする﹂よう指示がなされた。
出土品、出土遺物の法律上の位置づけ
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埋蔵文化財包蔵地内を分布調査して土器片を採集したり、調査した結果、遺物が出土した場合、これを発見した日から1週間以内に遺失物法第13条によって所轄の警察署に届け出ることになっている︵﹁埋蔵物発見届﹂︶。掘り出される以前は民法上の﹁埋蔵物﹂であり掘り出されたり拾われた時点で﹁拾得物﹂となるという法的解釈がなされている。
警察署では、拾得物として受け付けた埋蔵物が文化財と認められるときは、文化財保護法101条︵旧第60条︶に基づき管轄の都道府県、政令指定都市及び中核市の教育委員会に﹁埋蔵文化財提出書﹂を提出する。また、発見者は、﹁埋蔵文化財保管証﹂を管轄の都道府県、政令指定都市及び中核市の教育委員会に提出し、これを照合することによって文化財保護法102条︵旧法61条︶の鑑査が行われ、実物を見たことと同様にみなし、﹁文化財認定の通知﹂を警察署に行い、発見者にも認定通知の写しが送付され、出土品は、この時点でようやく正式に文化財として認定されたことになる。
埋蔵文化財包蔵地範囲の周知
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教育委員会など、各地方自治体の文化財所管課は、文化財保護法第95条により、地域のどのような場所に埋蔵文化財包蔵地が存在するかについて、その周知徹底を図り、必要な措置を講じることが義務付けられている。このため、各自治体では﹁必要な措置﹂として、包蔵地に番号を与え、その詳細︵時代や種類・面積︶をまとめた﹁遺跡台帳︵包蔵地台帳︶﹂を作成し、範囲を地図上に示した﹁遺跡地図︵包蔵地地図︶﹂を刊行することで一般に公開している。
「指定」と「周知」の違い
編集土地利用への影響
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前項の文化財地図などによって示された、﹁周知の埋蔵文化財包蔵地﹂の中で、土木工事等の目的で発掘︵この場合の﹁発掘﹂とは、遺跡調査ではなく、基礎の根切りや管埋設などの、工事における掘削行為︶をしようとする者は、文化財保護法第93条第1項に基づき、工事着工の60日前までに文化庁長官に届出をする義務が生じる。
また、文化財保護法に基づく発掘調査、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止、設計変更に伴う費用負担、土地利用の上の制約等により、その土地の価格形成に重要な影響を与える場合がある。
したがって、周知の埋蔵文化財包蔵地に含まれるかなど、埋蔵文化財の存在に留意した上で、発掘調査の必要の有無、調査に要する費用や期間については、自治体の教育委員会等所管の行政庁に確認すべきとされる。また、土地取引においても、宅地建物取引業法第47条の告知事項に関係する。
脚注
編集外部リンク
編集- 埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について(平成10年円滑化通知) - ウェイバックマシン(2007年11月16日アーカイブ分)
- 埋蔵文化財とは(文化庁公式ページ)