学力低下

学力の低下を社会問題として指摘した概念

学力低下(がくりょくていか)とは、基礎学力などの学力の低下を社会問題として指摘した概念。

日本

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日本では特に1980年代以降から2010年代において学力が低下したとする教育問題をいう[1]。ここでは、主に2010年代に起こった学力低下について取り上げる。

試験・調査の結果

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国際的機関による調査

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学習到達度調査 (PISA)

201912PISA20181517287915499509112020725798688722795455[2]

PISA2015ECD20%(2)13%22009PISA20186200320185調2015[3]

PISA32000200920182009調337PISA2009127PISA2018PISA2009

調TIMSS

2003IEA調TIMSS2003419953[4]24.031.159587.3%0372.3%15.027919994%772

調9%6%29%30%33%61%61%199554%7%

国内機関による調査

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小・中学校教育課程実施状況調査

200315 調 11116 16×4×3÷212×1.1×2 16×5×3÷313×1.1×3

調3

調

2007413調 6121116調

101816571452610145011041611058011564

民間による調査結果

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苅谷剛彦他の調査

苅谷他が行った学力調査では、89年と01年の同一問題との比較では、小学国語で78.9%→70.9%(-8.0%)、小学算数で80.6%→68.3%(-12.3%)、中学国語で71.4%→67.0%(-4.4%)、中学数学で69.6%→63.9%(-5.7%)へと下がっていることがわかっている(調査報告「学力低下」の実態(岩波ブックレット))。

13年に志水宏吉が実施した後継調査ではこの傾向に歯止めがかかっており、「一九八九年から二〇〇一年にかけて、子どもたちの基礎学力の水準は大きく低下したが、そこから12年後の二〇一三年にかけては、回復傾向が見られる」としているが、大差はない。[5]。また、3回の調査結果をそれぞれ「第一回調査(89年)はゆとり教育の前の状況を、第二回調査(01年)はゆとり教育の影響を、そして今回(第三回)の調査はゆとり教育以降の「確かな学力向上路線」の影響をそれぞれ反映していると見ることができる」とまとめている[6]

耳塚寛明が行った調査

学業達成の構造と変容(2002より)では、児童数7998人を対象に、算数129題で82年と02年で正答率の比較をする調査を行っている。その結果、小学1年で85.6%→81.0%(-4.6%)、小学2年81.7%→73.3%(-8.4%)、小学3年84.9%→73.5%(-11.4%)、小学4年84.4%→77.9%(-6.5%)、小学5年84.5%→76.8%(-7.7%)、小学6年85.5%→79.9%(-5.6%)とすべての学年において正答率が下がっていることがわかっている。

学力低下に対する議論

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試験・調査結果からの議論

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高等学校教育課程実施状況調査

調査を行った国立教育政策研究所は、「(学力は)改善の方向に向かっている」と分析したが、同じ内容の問題で正答率が前回より上回った問題は26問しかなくしかも化学(理科)など特定の科目に偏っていたこと、文部科学省が設定した想定正答率を下回る問題が多いなどの課題もみられた。

苅谷剛彦への異論。

神永正博は苅谷の挙げたデータは「別の見方もできる」と主張し「落ちこぼれが減り」、「理解度の格差が収縮している」と指摘、そして言葉を選びつつ「(主観的な)理解度は平均的にみて少なくとも悪化していないのではないだろうか」と述べている[7]

学力低下はあるとする主張

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200219892001調1991調2013調調3調

調

19892001調

2001201389調


102326調








2調調[8]

学力の低下そのものに疑問を呈する議論

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PISA調 (TIMSS2003)調20012003

OECD調 (PISA) 調OECD2018調PISA調OECD2015調

調



ICT

調2001200320022005

調AB
A6287298.3%32/3÷5/783.2%

調調調[]


「ゆとり教育」との関連性についての議論

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1980

19971978199219931994197831993199719782000

OECD調 (PISA) 
3/8+3/8+1/83[9]


PISA2018

他国との比較による議論

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G8での順位比較(PISA2018)
国\科目 科学的リテラシー 読解力 数学的リテラシー
  カナダ 8 6 12
  ドイツ 16 20 20
  フランス 25 23 25
  イタリア 40 32 31
  日本 5 20 8
  ロシア 33 31 30
  イギリス 14 14 18
  アメリカ合衆国 18 13 37

このようにG8のほとんどの先進国は日本よりも順位が低いため、日本としては昔のように「先進国に追いつき追い越せ」というスタイルを再現するよりも、先進国としての新しいスタイルで子ども達に意欲をもたせるかを国民全体で考えることが重要であるとの指摘がある[10]

保護者の意識

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[11]

[12]
『学力低下の原因(複数回答)では「ゲームやマンガなど誘惑の増加」53%がトップ。続いて、「授業時間の削減」50%、「教師の質の低下」41%』[13]。他、夏休みや在宅時に課される宿題などは児童の学力向上になる利点がほぼ無い、宿題と学力に相関関係は見られないという説もある。

PISAにおける日本の成績

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左側の数字は平均を500とした時の点数。()内の数字は順位。 上位10位までの結果についてはOECD生徒の学習到達度調査を参照。

参加国数 日本の参加学校数 日本の参加生徒数 数学 読解力 科学 問題解決
PISA2000 32カ国 135学科 約5300人 557(1) 522(8) 550(2)
PISA2003 41カ国・地域 144学科 約4700人 534(6) 498(14) 548(1) 547(4)
PISA2006 57カ国・地域 185学科 約6000人 523(10) 498(15) 531(5)
PISA2009 65カ国・地域 185学科 約6000人 529 (9) 520 (8) 539(5)
PISA2012 65カ国・地域 191学科 約6400人 536 (7) 520 (4) 547(4) 552(3)
PISA2015 72カ国・地域 198学科 約6600人 532 (5) 516 (8) 538(2)
PISA2018 79カ国・地域 183学科 約6100人 522 (8) 499(20) 524(5)

TIMSSにおける日本の成績

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左側の数字は点数。()内の数字は順位。 上位10位までの結果については国際数学・理科教育調査を参照。

小学校4年生
参加国数 日本の参加学校数 日本の参加生徒数 算数 理科
TIMSS1995 597(3) 574(2)
TIMSS2003 25カ国・地域 150校 4535人 565(3) 543(3)
TIMSS2007 37カ国・地域 148校 4487人 568(4) 548(4)
中学校2年生
参加国数 日本の参加学校数 日本の参加生徒数 数学 理科
TIMSS1995 605(3) 571(3)
TIMSS1999 38カ国・地域 140校 4745人 579(5) 550(4)
TIMSS2003 46カ国・地域 146校 4856人 570(5) 552(6)
TIMSS2007 50カ国・地域 146校 4312人 570(5) 554(3)

学力回復

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200812TIMSS2007All AboutTIMSS2007[14]TIMSS2007TIMSS2003TIMSS1995TIMSS19994242[15]

201012PISA2009[16][17]PISA2012[18]

[19]

欧米

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アメリカ、イギリス、フランスなどでも学力の低下や基礎学力の不足が社会問題になったことがある[20]

アメリカ

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1983[20]

19942000[20]2002No Child left Behind Act of 2001[20]

イギリス

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イギリスでは1980年代に学力低下が問題になり、1988年に教育改革法が成立した[20]

1998年には教育の内容や学力に関する共通の目標として「2002年の全国教育・訓練目標」が打ち出された[20]

フランス

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フランスでは大学第1期課程での高い中退率や職業資格未取得のままでの離学とともに基礎学力の不足が指摘されていた[20]

1988年には第2次ミッテラン政権が成立し、1989年に新教育基本法(ジョスパン法)が制定された[20]

脚注

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(一)^ PISA2018調 . www8.cao.go.jp. 2020622

(二)^ OECD 調2018調(PISA2018) . www8.cao.go.jp. 2020622

(三)^ OECD調PISA2018. www8.cao.go.jp. 2020622

(四)^ 調2003調TIMSS2003). 20101241-4, 1-5

(五)^  調2014No.900

(六)^ 201464

(七)^ (24)

(八)^ 200749262007417 

(九)^ 

(十)^ . . 2010124

(11)^ 20051215 16% 

(12)^  (ISBN 4000092782)使

(13)^ 81%200526 

(14)^  . All About. 2010124

(15)^ TIMSS2007 . . 2010124

(16)^ OECD調PISA2009. . 20101223

(17)^ PISA2009V. All about. 20101223

(18)^ 調 124

(19)^ OECD調

(20)^ abcdefgh166. . 201873

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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