溶媒効果
この項目﹁溶媒効果﹂は翻訳されたばかりのものです。不自然あるいは曖昧な表現などが含まれる可能性があり、このままでは読みづらいかもしれません。︵原文‥en:Solvent effects︶
修正、加筆に協力し、現在の表現をより自然な表現にして下さる方を求めています。ノートページや履歴も参照してください。︵2017年6月︶ |
安定性に対する影響
編集酸塩基平衡
編集酸と塩基の電離平衡は溶媒変化の影響を受ける。溶媒の影響はその酸性もしくは塩基性によるものだけではなく、比誘電率や溶解度の選好からくる酸塩基平衡に関わる特定の化学種の安定化などによる影響がありうる。したがって、溶解度や比誘電率の変化は酸性および塩基性に影響を与える。
溶媒 | 比誘電率[1] |
---|---|
アセトニトリル | 37 |
ジメチルスルホキシド | 47 |
水 | 78 |
![is in equilibrium with](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/96/Equilibrium.svg/15px-Equilibrium.svg.png)
HA A− + H+ | ACN | DMSO | 水 |
---|---|---|---|
p-トルエンスルホン酸 | 8.5 | 0.9 | 強 |
2,4-ジニトロフェノール | 16.66 | 5.1 | 3.9 |
安息香酸 | 21.51 | 11.1 | 4.2 |
酢酸 | 23.51 | 12.6 | 4.756 |
フェノール | 29.14 | 18.0 | 9.99 |
ケト・エノール平衡
編集様々な 1,3-ジカルボニル化合物は下式で表されるケト-エノール互変異性を示す。
この互変異性は環状エノール型(シス型)とジケト型との間の平衡となることが最も多い。互変異性の平衡定数は次のように表式化される。
アセチルアセトンの互変異性平衡定数は次のように溶媒効果を受ける[要出典]。
溶媒 | KT |
---|---|
気相 | 11.7 |
シクロヘキサン | 42 |
テトラヒドロフラン | 7.2 |
ベンゼン | 14.7 |
エタノール | 5.8 |
ジクロロメタン | 4.2 |
水 | 0.23 |
上記の表から、極性の低い溶媒中ではシス-エノール型が支配的であり、極性の高い溶媒中でジケト型が支配的であることが見てとれる。シス-エノール型に生じる分子内水素結合は、分子間水素結合の相手が存在しない場合により顕著である。結果として、分子間水素結合の相手となりにくい極性の低い溶媒では分子内水素結合による安定化が起きる[要出典]。
反応速度に対する影響
編集しばしば、反応性と反応機構は孤立分子のふるまいとして描かれ、溶媒は不活性な支持体として扱われる。しかし、溶媒は実際に反応速度および反応次数に影響を与えることがある[6][7][8][9]。
平衡溶媒効果
編集溶媒は反応速度に遷移状態理論に基づいて説明できる平衡溶媒効果を与える。要点を言えば、反応速度は始状態と遷移状態とで異なる溶媒和に起因する溶媒の影響を被る。反応物分子が遷移状態に移行する際、溶媒分子は再配向して遷移状態を安定化する。遷移状態が始状態よりもより大きく安定化されるとき、反応速度は上昇する。始状態が遷移状態よりも大きく安定化されるとき、反応速度は低下する。しかし、溶媒和が異なるためには、溶媒再配向緩和(遷移状態配向から基底状態配向へ逆行)が十分に速い必要がある。したがって、平衡溶媒効果は鋭い障壁と弱い双極子を持ち、緩和の速い溶媒において観測される傾向にある。
摩擦溶媒効果
編集遷移状態理論があてはまらないほど非常に速い反応に対しては平衡仮説はあてはまらない。そのような場合で強い双極子を持ち、緩和の遅い溶媒が関わる場合、反応速度について遷移状態の溶媒和はあまり大きな役割を演じない。その代わり、溶媒の動力学的寄与(摩擦、密度、内圧、粘性)が反応速度への影響において大きな役割を果たす。
ヒューズ・インゴールド則
編集反応例
編集置換反応
編集溶媒 | 比誘電率 ε | 相対速度 |
---|---|---|
CH3CO2H | 6 | 1 |
CH3OH | 33 | 4 |
H2O | 78 | 150,000 |
溶媒 | 比誘電率 ε | 相対速度 | 種別 |
---|---|---|---|
CH3OH | 33 | 1 | プロトン性 |
H2O | 78 | 7 | プロトン性 |
DMSO | 49 | 1,300 | 非プロトン性 |
DMF | 37 | 2800 | 非プロトン性 |
CH3CN | 38 | 5000 | 非プロトン性 |
遷移金属触媒反応
編集正負問わず電荷を帯びた遷移金属錯体の関わる反応は溶媒和により、特に極性媒質の溶媒和により劇的な影響を受ける。金属種の電荷が化学的変形中に変化する場合、ポテンシャルエネルギー面の 30–50 kcal/mol もの変化が計算されている[13]。
フリーラジカル合成
編集多くのフリーラジカルに基づく合成が大きな速度論的溶媒効果を示し、反応速度が低下したり計画された反応が非選好経路となったりする[14]。
出典
編集- ^ Loudon, G. Marc (2005), Organic Chemistry (4th ed.), New York: Oxford University Press, pp. 317–318, ISBN 0-19-511999-1
- ^ “Pentakis(trifluoromethyl)phenyl, a Sterically Crowded and Electron-withdrawing Group: Synthesis and Acidity of Pentakis(trifluoromethyl)benzene, -toluene, -phenol, and -aniline”. J. Org. Chem. 73 (7): 2607–2620. (2008). doi:10.1021/jo702513w. PMID 18324831.
- ^ Kütt, A.; Leito, I.; Kaljurand, I.; Sooväli, L.; Vlasov, V.M.; Yagupolskii, L.M.; Koppel, I.A. (2006). “A Comprehensive Self-Consistent Spectrophotometric Acidity Scale of Neutral Brønsted Acids in Acetonitrile”. J. Org. Chem. 71 (7): 2829–2838. doi:10.1021/jo060031y. PMID 16555839.
- ^ “Extension of the Self-Consistent Spectrophotometric Basicity Scale in Acetonitrile to a Full Span of 28 pKa Units: Unification of Different Basicity Scales”. J. Org. Chem. 70 (3): 1019–1028. (2005). doi:10.1021/jo048252w. PMID 15675863.
- ^ “Bordwell pKa Table (Acidity in DMSO)”. 2008年11月2日閲覧。
- ^ Reichardt, Christian (1990). Solvent Effects in Organic Chemistry. Marburg, Germany: Wiley-VCH. pp. 147–181. ISBN 0-89573-684-5
- ^ Jones, Richard (1984). Physical and Mechanistic Organic Chemistry. Cambridge: Cambridge University Press. pp. 94–114. ISBN 0-521-22642-2
- ^ James T. Hynes (1985). “Chemical Reaction Dynamics in Solution”. Annu. Rev. Phys. Chem. 36 (1): 573–597. Bibcode: 1985ARPC...36..573H. doi:10.1146/annurev.pc.36.100185.003041.
- ^ Sundberg, Richard J.; Carey, Francis A. (2007). Advanced Organic Chemistry: Structure and Mechanisms. New York: Springer. pp. 359–376. ISBN 978-0-387-44897-8
- ^ Hughes, Edward D.; Ingold, Christopher K. (1935). “Mechanism of substitution at a saturated carbon atom. Part IV. A discussion of constitutional and solvent effects on the mechanism, kinetics, velocity, and orientation of substitution”. J. Chem. Soc.: 244–255. doi:10.1039/JR9350000244 .
- ^ Eğe, Seyhan (2008). Organic Chemistry Structure and Reactivity. Houghton Mifflin Harcourt. ISBN 0-618-31809-7
- ^ Yongho, Kim.; Cramer, Christopher J.; Truhlar, Donald G. (2009). “Steric Effects and Solvent Effects on SN2 Reactions”. J. Phys. Chem. A 113 (32): 9109–9114. doi:10.1021/jp905429p. PMID 19719294.
- ^ V. P. Ananikov; D. G. Musaev; K. Morokuma (2001). “Catalytic Triple Bond Activation and Vinyl−Vinyl Reductive Coupling by Pt(IV) Complexes. A Density Functional Study”. Organometallics 20 (8): 1652–1667. doi:10.1021/om001073u.
- ^ Grzegorz Litwinienko; A. L. J. Beckwith; K. U. Ingold (2011). “The frequently overlooked importance of solvent in free radical syntheses”. Chem. Soc. Rev. 40 (5): 2157. doi:10.1039/C1CS15007C.