無線通信士

無線局の無線設備を操作する者

無線通信士(むせんつうしんし)は、無線局無線設備の通信操作に従事する者である。 日本においては総合無線通信士海上無線通信士及び航空無線通信士を総合した通称である。

概要

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Radio RegulationsRR

198911 [1] 343 199025

日本

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歴史

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電信法

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190033[2]

190783190851

19143SOLAS50[3]

無線電信法

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19154[4]

[5]
できごと
1915年
(大正4年)
無線電信法第2条第1号から第6号で定める私設無線施設(民間企業・私立学校・個人が開設するもの)に対し、私設無線電信通信従事者資格検定規則の第1条で以下の3資格を定めた。詳細は無線電信法を参照。
  • 私設無線電信通信従事者 第一級
  • 私設無線電信通信従事者 第二級
  • 私設無線電信通信従事者 第三級

25[6]15
1924年
(大正13年)
私設無線電信通信従事者漁船級が制定され計4種となった[7]
1926年
(大正15年)
無線実験(法2条第5号施設)に必要とされる第三級資格取得の免除権限が逓信大臣から地方逓信局長に移譲された[8]
1931年
(昭和6年)
無線通信士検定規則[9]が制定され無線通信士が法制化された。従前の私設無線電信通信従事者は、次のとおり無線通信士にみなされた。
  • 私設無線電信通信従事者第一級 → 無線通信士第一級
  • 私設無線電信通信従事者第二級 → 無線通信士第二級
  • 私設無線電信通信従事者漁船級 → 無線通信士第三級
  • 私設無線電信通信従事者第三級 → 無線通信士聴守員級
    • 資格保有者は、規則施行後半年以内に書き替えを要するものとされた。
    • 聴守員級は送信操作はできず、受信操作のみしかできなかった。
    • 無線実験施設には無線通信士第三級が求められたが、やはり私設無線規則第15条の免除規定が適用され続けた。

無線通信士電話級が制定された。

1934年
(昭和9年)
私設無線規則が廃止され、無線実験施設に求められていた無線通信士第三級の免除規定が、新たに施行された私設無線電信無線電話規則の第36条へ移った[10]

新しい私設無線電信無線電話規則の第3条で、無線電信法第2条第5号の施設に対し「実験用私設無線電信無線電話」という語が与えられた。これが戦前のいわゆるアマチュア局の正式名称である[注釈 1]

1938年
(昭和13年)
無線通信士航空級が制定された[11]
1940年
(昭和15年)
電気通信技術者検定規則が制定され、無線通信士第一級が電気通信技術者第三級(無線)にみなされた。
  • 長引く日中戦争による戦時体制下の12月、「実験用私設無線電信無線電話」(俗にいう私設無線電信電話実験局は戦後に広まった通称[注釈 2])に資格免除の規定の適用を停止するだけではなく、無線通信士第二級以上又は電気通信技術者第三級(無線)以上の資格が突然、要求されることになった。しかし規則が改正される前に太平洋戦争が開戦し、個人の実験用私設無線電信無線電話(いわゆるアマチュア無線)は禁止され、この改正がなされないまま終戦を迎えた。
1941年
(昭和16年)
太平洋戦争開戦
  • 以後、人員・物資が窮迫するに伴い受験年齢制限の撤廃、実務経験の範囲拡大などの戦時特例が行われた。
1946年
(昭和21年)
戦時特例は廃止された。
1949年
(昭和24年)
無線通信士航空級が廃止され無線通信士電話級とみなされた[12]

電波法

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1950年(昭和25年)電波法が制定され、官公庁・民間を問わず無線局の無線設備の操作には原則として無線従事者を要することとされ、無線通信士は電波法に定める無線従事者の一種となった。 また、無線電信法と異なり電波法の条文中に資格名称が盛り込まれた。

できごと
1950年
(昭和25年)
無線通信士の種別は次のとおりとされた。
  • 第一級無線通信士
    • 無線従事者免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する第一級証明書に該当した。
    • 第二級無線技術士[注釈 3](現第二級陸上無線技術士)の操作範囲は概ね含まれた。
  • 第二級無線通信士
    • 免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する第二級証明書に該当した。
  • 第三級無線通信士
    • 免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する無線電信通信士特別証明書及び無線電話通信士一般証明書並びに海上人命安全条約に規定する聴守員証明書に該当した。
  • 電話級無線通信士
    • 免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する無線電話通信士一般証明書に該当した。
  • 聴守員級無線通信士
    • 免許証は、海上人命安全条約に規定する聴守員証明書に該当した。
  • 操作範囲は電波法に規定されており、アマチュア無線局の操作については定められていなかった。
  • 従前の資格保有者は電波法の相当資格にみなされたが、電波法施行後1年以内に免許証の交付を受けなければ失効するものとされた。
    • 免許証の有効期間は5年であった。
  • 国家試験には一次試験と二次試験があり、一次試験は4月、8月、12月に、二次試験の日時は合格者にその都度通知するものとされた。
    • 第一級・第二級無線通信士の一次試験には「一般常識」として口述試験があった。
    • 二次試験に「電気通信術」が実地試験とされた。
    • その他の一次・二次試験は筆記試験とされた。
1952年
(昭和27年)
航空級無線通信士が制定された。
  • 無線通信士航空級を継承したものではない。
  • 航空級無線通信士の免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する無線電話通信士一般証明書に該当することとされた。

聴守員級無線通信士が廃止された。

第三級無線通信士の免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する無線電信通信士特別証明書及び無線電話通信士一般証明書に該当することとなった。

1954年
(昭和29年)
第一級(第二級)無線通信士の免許証は、国際電気通信条約附属無線通信規則に規定する第一級(第二級)無線電信通信士証明書並びに名義人が航空固定業務、航空移動業務及び航空無線航行業務の特別規定に関する試験に合格した者とされた。
1958年
(昭和33年)
政令無線従事者操作範囲令が制定され、操作範囲はこれによることとされた。
  • 第一級無線通信士の操作範囲に第二級無線技術士の操作範囲が全て含まれた。
  • アマチュア無線局の操作もできることとされ、種別に応じ第一級、第二級、電話級アマチュア無線技士の操作範囲を含むものとされた。

115



8293


1960年
(昭和35年)
第一級(第二級)無線通信士の免許証の、第一級(第二級)無線電信通信士証明書は、第1級(第2級)無線電信通信士証明書とされた。
1964年
(昭和39年)
電話級、航空級無線通信士の予備試験が廃止された。
  • 実施は8月、2月とされた。

実技試験と学科試験が統合されて本試験となった。

1971年
(昭和46年)
第一級・第二級無線通信士の予備試験から一般常識(口述試験)が削除された。
1972年
(昭和47年)
沖縄返還に伴い、沖縄の無線通信士は、各々本土の資格とみなされた。
  • 第一級無線通信士 → 第一級無線通信士
  • 第二級無線通信士 → 第二級無線通信士
  • 第三級無線通信士 → 第三級無線通信士
  • 航空級無線通信士 → 航空級無線通信士
  • 電話級無線通信士 → 電話級無線通信士

旧第三級無線技術士は第二級無線通信士・第三級無線通信士の国家試験の予備試験、航空級無線通信士・電話級無線通信士の国家試験の無線工学が免除されることとなった。

1983年
(昭和58年)



2
33121

2








1986年
(昭和61年)
次の資格が認定講習課程で取得できることとなった。
  • 第一級無線通信士
  • 第二級無線通信士
  • 電話級無線通信士
1989年
(平成元年)
電波法が改正され、無線従事者資格が海上、航空、陸上及びこれらの総合と分野別に再編されることとなり、海上無線通信士が新設され、また、従前の種別は次のようにみなされることとなった。
  • 総合無線通信士
    • 第一級無線通信士 → 第一級総合無線通信士
    • 第二級無線通信士 → 第二級総合無線通信士
    • 第三級無線通信士 → 第三級総合無線通信士
  • 海上無線通信士
    • 第一級海上無線通信士(新設)
    • 第二級海上無線通信士(新設)
    • 第三級海上無線通信士(新設)
    • 電話級無線通信士 → 第四級海上無線通信士
  • 航空級無線通信士 → 航空無線通信士

無線従事者の操作の範囲等を定める政令が制定され、操作範囲はこれによることとされた。

1990年
(平成2年)
改正電波法令が施行され、種別は前年に制定されたものによることとなった。

これ以後は、総合無線通信士海上無線通信士航空無線通信士を参照。

取得者数

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資格再編直前の平成元年度末現在のものを掲げる。

種別 取得者数(人)
第一級無線通信士 13,095
第二級無線通信士 17,004
第三級無線通信士 28,835
航空級無線通信士 21,669
電話級無線通信士 45,968
126,571
資格別無線従事者数の推移[13]による。

取得制度の変遷

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[4] [5] 34 






施行日 第一級
無線通信士
第二級
無線通信士
第三級
無線通信士
航空級
無線通信士
電話級
無線通信士
聴守員級
無線通信士
電信 電話 電信 電話 電信 電話 電話 電話 電信
1950年
(昭和25年)
6月30日
和文85字/分
欧文暗語100字/分
欧文普通語125字/分
送受各5分
和文50字/分
欧文50字/分
送受各3分
和文75字/分
欧文暗語80字/分
送受各5分
和文50字/分
欧文50字/分
送受各3分
和文70字/分
欧文暗語80字/分
送受各5分
和文50字/分
送受各3分
和文50字/分
送受各3分
和文70字/分
欧文暗語80字/分
受信各5分
1952年
(昭和27年)
11月5日[注釈 6]
和文50字/分
欧文50字/分
送受各5分
1961年
(昭和36年)
6月1日
和文75字/分
欧文暗語80字/分
欧文普通語100字/分
送受各5分
和文70字/分
欧文暗語80字/分
欧文普通語100字/分
送受各5分
1964年
(昭和39年)
12月28日
和文70字/分
欧文暗語80字/分
欧文普通語100字/分
送受各3分
1983年
(昭和58年)
4月1日
和文75字/分
欧文暗語80字/分
欧文普通語100字/分
送受各5分
科目免除

他資格の所持者に対する免除について、無線従事者規則の資格再編前の最終改正[14]によるものを示す。

現有資格 受験資格 免除科目



















































































































第一級無線通信士                                  
第二級無線通信士                                
                                 
第三級無線通信士                                  
                               
航空級無線通信士                                  
                                 
                             
                               
電話級無線通信士                                  
                               
第一級無線技術士                          
                               
                         
                               
第二級無線技術士                                  
                           
                               
                         
                               
第一級アマチュア無線技士                                
                               
第二級アマチュア無線技士                                
特殊無線技士 国際無線電話                                
無線電話甲                                  
無線電話丙                                

資格再編後は、アマチュア無線技士の無線通信士に、および無線通信士のアマチュア無線技士に対する科目免除は規定されていない。[15]

現有資格 受験資格 免除科目
























































































































A




B




第一級総合無線通信士                                  
第二級総合無線通信士                              
                               
第一級海上無線通信士                              
                               
第二級海上無線通信士                                  
                               
                             
第三級海上無線通信士                                  
                           
第四級海上無線通信士                                
第一級陸上無線技術士                        
                               
                           
第二級陸上無線技術士                                
                           
                               
                           
航空特殊無線技士                                  

[16]



198661[]

経過措置

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[17]

3[18]

199354[19]

392 [7]


資格再編前[20] 資格再編後[21]
第三級無線通信士 第三級総合無線通信士
1.漁船(専ら水産動植物の採捕に従事する漁船以外の漁船で国際航海に従事する総トン数300トン以上のものを除く。以下同じ。)に施設する空中線電力250W以下の無線設備(無線電話及びレーダーを除く。)の操作(国際電気通信業務の通信のための通信操作及び多重無線設備の技術操作を除く。)

2.

 250W

 125W

 (1) 

 (2) 

 

3.

4.
1. 漁船(専ら水産動植物の採捕に従事する漁船以外の漁船で国際航海に従事する総トン数300トン以上のものを除く。以下同じ)に施設する空中線電力250W以下の無線設備(無線電話及びレーダーを除く。)の操作(国際電気通信業務の通信のための通信操作及び多重無線設備の技術操作を除く。)

2. 

 250W

 125W

 (1) 

 (2) 

 

3. 1.2.
第二級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
電話級無線通信士 第四級海上無線通信士
1.次に掲げる無線設備の操作(モールス符号による通信操作及び国際通信のための通信操作並びに多重無線設備の技術操作を除く。)
イ 船舶に施設する空中線電力250W以下の無線設備(レーダーを除く。)
ロ 陸上に開設する無線局(航空局及び放送局を除く。)の空中線電力125W以下の無線設備(レーダーを除く。)
ハ レーダーの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないもの

2.電話級アマチユア無線技士の操作の範囲に属する操作

3.前二号に掲げる操作以外の操作のうち、海岸局の空中線電力250W以下の無線設備の操作で第一級無線通信士又は第二級無線通信士の指揮の下に行うもの(モールス符号による通信操作及び国際通信のための通信操作を除く。)

次に掲げる無線設備の操作(モールス符号による通信操作及び国際通信のための通信操作並びに多重無線設備の技術操作を除く。)
  1. 船舶に施設する空中線電力250W以下の無線設備(船舶地球局及び航空局の無線設備並びにレーダーを除く。)
  2. 海岸局及び船舶のための無線航行局の空中線電力125W以下の無線設備(レーダーを除く。)
  3. 海岸局、船舶局及び船舶のための無線航行局のレーダーの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないもの
第四級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
航空級無線通信士 航空無線通信士
1.次に掲げる通信操作(モールス符号による通信操作を除く。)
イ 航空機に施設する無線設備並びに航空局(航空機以外の移動局で航空機局との通信を行うために開設するものを含む。以下この項及び特殊無線技士(無線電話丙)の項において同じ。)及び航空機のための無線航行局の無線設備の通信操作(国際電気通信業務の通信のための通信操作を除く。)
ロ イに掲げるもののほか、放送局の無線設備以外の無線設備で空中線電力50W以下のもので国内通信のための通信操作

2.次に掲げる無線設備(多重無線設備を除く。)の外部の調整部分の技術操作

イ 航空機に施設する無線設備
ロ 航空局及び航空機のための無線航行局以外の無線設備で空中線電力250W以下のもの
ハ レーダーでイ及びロに掲げる以外のもの
ニ イからハに掲げる無線設備以外の無線設備で空中線電力50W以下のもの(放送局の無線設備を除く。)

3.電話級アマチユア無線技士の操作の範囲に属する操作

1.航空機に施設する無線設備並びに航空局、航空地球局及び航空機のための無線航行局の無線設備の通信操作(モールス符号による通信操作を除く。)

2.次に掲げる無線設備の外部の調整部分の技術操作

イ 航空機に施設する無線設備
ロ 航空局、航空地球局及び航空機のための無線航行局の無線設備で空中線電力250W以下のもの
ハ 航空局及び航空機のための無線航行局のレーダーでロに掲げるもの以外のもの
第四級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
引用の拗音の表記は原文ママ
操作範囲の拡大

[22]#





195530197146 [23] [24] [25] [15]

諸外国

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脚注

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注釈

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(一)^ 

(二)^ 

(三)^ 

(四)^  

(五)^  

(六)^ 27249731

(七)^ 325

出典

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  1. ^ 無線従事者制度の改革 平成2年版通信白書 第1章平成元年通信の現況 第4節通信政策の動向 5電波利用の促進(4)
  2. ^ 明治33年逓信省令第77号(1900年10月10日)
  3. ^ 逓信省編 "第四章 無線電信無線電話法令" 『逓信事業史』第四巻 1940年 逓信協会 770ページ
  4. ^ 大正4年法律第26号(1915年6月21日公布、同11月1日施行
  5. ^ 大正4年逓信省令第48号(1915年10月26日公布、同11月1日施行)
  6. ^ 大正4年逓信省令第46号(1915年10月26日公布、同11月1日施行)
  7. ^ 大正13年逓信省令第29号による改正
  8. ^ 大正15年逓信省令第17号(1926年5月25日)による改正
  9. ^ 昭和6年逓信省令第8号
  10. ^ 昭和8年逓信省令第60号(1933年12月29日公布、1934年1月1日施行)
  11. ^ 昭和13年逓信省令第94号による改正
  12. ^ 昭和24年電気通信省令第4号による改正
  13. ^ 無線従事者数 平成2年版通信白書 資料6-26 資格別無線従事者数の推移(3)(総務省情報通信統計データベース )
  14. ^ 昭和61年郵政省令第30号による無線従事者規則改正
  15. ^ a b 平成2年郵政省令第18号による無線従事者規則全部改正
  16. ^ 平成2年郵政省令第24号による沖縄の復帰に伴う郵政省関係法令の適用の特別措置等に関する省令改正
  17. ^ 平成元年法律第67号による電波法改正附則第2条第1項
  18. ^ 同上附則第2条第2項
  19. ^ 無線従事者の操作の範囲等を定める政令附則第4項
  20. ^ 昭和60年政令第31号による無線従事者操作範囲令改正(資格再編前の最終改正)
  21. ^ 平成元年政令第325号無線従事者の操作の範囲等を定める政令制定
  22. ^ 平成13年政令第422号による電波法施行令改正
  23. ^ 昭和30年郵政省令第43号による無線従事者国家試験及び免許規則改正
  24. ^ 昭和32年郵政省令第24号による無線従事者国家試験及び免許規則改正
  25. ^ 昭和46年郵政省令第27号による無線従事者国家試験及び免許規則改正

関連項目

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