リョクトウ
(緑豆から転送)
リョクトウ︵緑豆︶は、マメ亜科の一年生植物、ヤエナリ︵八重生、学名‥Vigna radiata︶の種子のこと。食品および食品原料として利用される。別名は青小豆︵あおあずき︶、八重生︵やえなり︶、文豆︵ぶんどう︶。英名から﹁ムング豆﹂とも呼ばれる。アズキ (V. angularis) とは同属。
グリーンピースは別属別種のエンドウの種子。
リョクトウ | ||||||||||||||||||||||||
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リョクトウ | ||||||||||||||||||||||||
分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Vigna radiata (L.) R.Wilczek (1954)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ヤエナリ/リョクトウ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
mung bean green gram |
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 1,481 kJ (354 kcal) |
59.1 g | |
食物繊維 | 14.6 g |
1.5 g | |
飽和脂肪酸 | 0.34 g |
一価不飽和 | 0.04 g |
多価不飽和 | 0.61 g |
25.1 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(2%) 13 µg(1%) 150 µg |
チアミン (B1) |
(61%) 0.70 mg |
リボフラビン (B2) |
(18%) 0.22 mg |
ナイアシン (B3) |
(14%) 2.1 mg |
パントテン酸 (B5) |
(33%) 1.66 mg |
ビタミンB6 |
(40%) 0.52 mg |
葉酸 (B9) |
(115%) 460 µg |
ビタミンE |
(2%) 0.3 mg |
ビタミンK |
(34%) 36 µg |
ミネラル | |
カリウム |
(28%) 1300 mg |
カルシウム |
(10%) 100 mg |
マグネシウム |
(42%) 150 mg |
リン |
(46%) 320 mg |
鉄分 |
(45%) 5.9 mg |
亜鉛 |
(42%) 4.0 mg |
銅 |
(46%) 0.91 mg |
セレン |
(3%) 2 µg |
他の成分 | |
水分 | 10.8 g |
水溶性食物繊維 | 0.6 g |
不溶性食物繊維 | 14.0 g |
ビオチン(B7) | 11.2 µg |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[5]。 | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
特徴
編集利用
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日本においては、もやしの原料︵種子︶として利用されることがほとんどで[6]、ほぼ全量を中国︵内モンゴル︶から輸入している[8][9]。
中国では、春雨の原料にする[6]ほか、月餅などの甘い餡や、粥、天津煎餅のような料理の材料としても食べられる。北京独特の飲料としてリョクトウからデンプンを採る際の上澄みを原料に、これを発酵させた豆汁がある[10]。凉粉の原料にも使われる[11]。
朝鮮半島では16世紀前半の﹃需雲雑方﹄に、リョクトウのデンプンを水溶きして加熱し、これを孔をあけたヒョウタンの殻に入れて、孔から熱湯にたらし麺状にして水にさらす食品が記載されている[12][nb 2]。1670年頃の﹃飲食知味方﹄では、同様な製法で麻糸のようにした食品を匙麺︵サミョン︶として記している[12]。また、伝統的にリョクトウデンプンはネンミョンのつなぎとして利用されていた[13]。 咸鏡道ではリョクトウのデンプンのみを使った押しだし麺がある[14]。中国と同様に餡にするほか、チヂミの一種ピンデトッにしたり、デンプンを漉しとってムㇰという寄せものにする。リョクトウから作ったムㇰをノクトゥムㇰ︵ノクトゥ=緑豆︶と呼び、特にクチナシの実で着色したものをファンポムㇰ、着色しないものをチョンポムㇰと呼ぶ。なお、朝鮮語ではこのリョクトウにちなんで、デンプンのことを一般的に﹁ノンマル﹂︵녹말=綠末、﹁緑豆粉末﹂の略︶と呼ぶ。
香港やシンガポール、ベトナムでは、甘く煮て汁粉の様なデザート︵広東料理の糖水、ベトナムのチェーなど︶にすることが多く、それを冷やし固めたようなアイスキャンディーもある。リョクトウの糖水を緑豆湯または緑豆沙、リョクトウのチェーをチェー・ダウ・サイン︵Chè đậu xanh︶と呼ぶ。
緑豆糕︵りょくとうこう︶と呼ばれる、木型に入れて成形した菓子は、ベトナムのハイズオンや中国の北京、桂林などの名物となっている。
インドやネパール、アフガニスタン、パキスタンでは、去皮して二つに割ったリョクトウをダール︵豆を煮たペースト︶にする。リョクトウと米を炊きあわせた米料理︵キチュリなど︶は、南アジアから中央アジアにかけて広く食べられている。南インドでは、ドーサに似たクレープ状の軽食ペサラットゥが作られる。
また、漢方薬のひとつとして、解熱、解毒、消炎作用があるとされる。
リョクトウには、血糖値の上昇を抑制する効果のあるα-グルコシダーゼ阻害作用がある[15]。
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チョンポムㇰ(リョクトウのムㇰ)
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緑豆餡のホーピア
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フィリピンのギニサン・モンゴ(リョクトウのスープ)
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ダールに加工する前(左)と後(右)
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リョクトウのダール(西ベンガル州)
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ペサラットゥとチャツネ(アーンドラ・プラデーシュ州)
脚注
編集注釈
編集出典
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(一)^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vigna radiata (L.) R.Wilczek ヤエナリ︵標準︶”. BG Plants 和名−学名インデックス︵YList︶. 2023年9月19日閲覧。
(二)^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Azukia radiata (L.) Ohwi ヤエナリ︵シノニム︶”. BG Plants 和名−学名インデックス︵YList︶. 2023年9月19日閲覧。
(三)^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phaseolus radiatus L. ヤエナリ︵シノニム︶”. BG Plants 和名−学名インデックス︵YList︶. 2023年9月19日閲覧。
(四)^ 文部科学省 ﹁日本食品標準成分表2015年版︵七訂︶﹂
(五)^ 厚生労働省 ﹁日本人の食事摂取基準︵2015年版︶﹂
(六)^ abcd渡辺 (2000)、pp. 68-69
(七)^ 山口・川瀬 (2003) pp. 67-68、pp. 139-140
(八)^ 須永久美﹃エライ!もやしのおかず&つまみ81﹄p. 110
(九)^ 農林水産省 - 消費者の部屋︵平成16年3月回答︶
(十)^ 木村ほか (1993)、p.136
(11)^ 石毛 (1991)、p. 63
(12)^ abc石毛 (1991)、p. 126
(13)^ 石毛 (1991)、pp. 122-123
(14)^ 石毛 (1991)、p. 123
(15)^ 豆類ポリフェノールの抗酸化活性ならびにα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ阻害活性、齋藤優介ほか、日本食品科学工学会誌、Vol.54 (2007) No.12 P563-567
参考文献
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●渡辺篤二︵監修︶﹃豆の事典 :その加工と利用﹄幸書房、2000年。ISBN 4-7821-0172-4。
●山口裕文・川瀬眞琴︵編著︶﹃雑穀の自然史:その起源と文化を求めて﹄北海道大学出版会、2003年。ISBN 4-8329-8051-3。
●石毛直道﹃文化麺類学ことはじめ﹄フーディアム・コミュニケーション、1991年。ISBN 4-938642-03-4。
●木村春子・藤山和子・呉祥勇﹃スグに役立つ料理の中国語﹄︵初版︶柴田書店、1993年。ISBN 4-388-05709-6。