長官
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長官
●長官︵ちょうかん︶ - 国家機関における職のひとつ。以下で述べる。
●長官︵かみ︶ - 律令制における職のひとつ。⇒四等官を参照。
長官︵ちょうかん︶とは、一定の国家機関の長の職名又は官名に付して用いられる呼称である。日本における漢語としての﹁長官﹂は、日本の国家機関の高官の名称として用いられるほか、日本以外の国の機関の高官の訳語としても用いられる。少なくとも日本では、地方自治体に属する組織の長を長官と呼ぶことはない。たとえば、警視庁や東京消防庁は多くの国家機関よりも大規模な組織であるが、その長はそれぞれ長官ではなく警視総監、消防総監と呼ばれる。
近代政府における長官は、幕末長州藩民兵隊での役名が起源とされるが、この際は後年と異なり小隊長相当職であった。
﹁大臣﹂職が存在しない国で、中央省の長の、職席名として用いられる例が多い︵#日本以外の国の長官職︶。
日本の長官職
編集行政
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内閣府及び各省の外局としての﹁庁﹂の長の呼称は、﹁長官﹂を用いるのが原則である︵国家行政組織法第6条及び内閣府設置法第50条︶。外局以外の行政機関についても、その長の呼称として﹁長官﹂を用いる例がある︵例‥内閣官房長官、内閣法制局長官、宮内庁長官、警察庁長官、原子力規制庁長官。宮内庁については、かつて総理府の外局であったという経緯がある︶。
なお、法務省の︵外局でなく︶特別の機関である検察庁を構成する各庁の長の官名・職名は、﹁検事総長﹂︵最高検察庁の長︶、﹁検事長﹂︵高等検察庁の長︶のようになっており﹁長官﹂を用いない。ただし、全国の検事長と検事正を招集して一堂に会する会議に﹁検察長官会同﹂という名称を用いているように、検察部内では、検事総長、検事長、検事正を長官と呼ぶ慣例となっている。
行政機関の﹁長官﹂には、国務大臣︵閣僚︶をもって充てなければならないもの︵内閣官房長官︶と、そうでないものとがある。後者は、いわゆる官僚ポストであるが、法律上、職業国家公務員から登用しなければならないとする一般的な規定はない。したがって、その庁の設置根拠法が特定の要件を具備する者のみを長官に充てるものとする規定を持つものでない限り、民間人から事実上の政治的任用をすることも可能である︵文化庁長官に7例、消費者庁長官・スポーツ庁長官に2例、社会保険庁長官・観光庁長官にそれぞれ1例。︶
国家行政組織法が施行される前は、各省官制通則等に基づいて設置された総局には総局の長として総局長官が置かれた。また、地方自治法が施行される前の地方行政官庁では、東京都制による東京都の長として東京都長官、北海道庁の長として北海道庁長官、樺太庁の長として樺太庁長官が置かれた。この他、長官を長とする外地の施政機関があった。
かつては、経済企画庁、環境庁、科学技術庁など多数の閣僚としての長官職が存在したが、2001年の中央省庁再編以降は防衛庁長官と官房長官のみ、2007年の防衛省設置後は官房長官のみとなっている。
司法
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最高裁判所及び高等裁判所の長たる裁判官を﹁長官﹂と称する︵裁判所法第5条第1項及び第2項︶。
最高裁判所の長たる裁判官は﹁最高裁判所長官﹂と呼ばれるが︵裁判所法第5条第1項︶、内閣総理大臣や衆議院議長・参議院議長とともに三権の長であり、﹁長官﹂という名称ではあるものの日本における最高位の官職のひとつである。ゆえに、内閣府設置法や国家行政組織法により設置され、所掌事務の行使について内閣総理大臣あるいは国務大臣の指揮・監督を受ける関係にある府・省の外局や特別の機関の長たる長官とは本質的に異なる。
高等裁判所の長は高等裁判所長官と呼ばれる︵裁判所法第5条第2項︶。個々の司法権の行使については、高等裁判所長官も下級裁判所の他の裁判官と同様に裁判官の独立の規定︵日本国憲法第76条︶に基づき最高裁判所長官および最高裁判所判事の指揮・命令には服すことはないが、司法行政事務については、上級官署である最高裁判所が裁判官会議の決するところにより定める最高裁判所規則および、最高裁判所長官が最高裁判所の裁判官会議の議に基づいて行う指揮・命令に従わなければならない。ただ、こうした半独立的な性格もあり、日本の公的組織としては例外的に、長官の下に長官が存在する形になっている︵他の事例として2007年1月までは防衛庁長官の下の防衛施設庁長官などもあった︶。
なお、最高裁判所長官や高等裁判所長官には法曹資格は必須ではない。法曹資格のない者が最高裁長官に就任した例があるが︵法曹資格のないものが最高裁判所長官を含めた最高裁判所裁判官の職に就いた場合は、弁護士法第6条により、その離職の際に弁護士となる資格を取得する︶、高等裁判所長官には法曹資格のある裁判官経験者が就任する慣例となっており、法曹資格のない者が高等裁判所長官に就任した例はない。
備考
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国会及び地方自治体については、﹁長官﹂の呼称を用いないのが慣例である︵例‥衆議院法制局長、参議院法制局長︶。﹁官﹂の字には﹁君主の使用人=︵転じて︶国民の公僕﹂という意味があり、国民の代表であって僕︵しもべ︶ではない国会議員とその補佐をする国会組織には用いないこととなっているためである︵一般に、国会議員の中には事実上選挙区民の僕のような者もいると評する向きもあるが、憲法学的には国会議員は国民全体の代表者である。︶。
国家行政組織での実例
編集国務大臣をもって充てるもの
編集国務大臣以外から登用されるもの
編集- 内閣法制局長官
- 宮内庁長官(認証官)
- 警察庁長官
- 金融庁長官
- 消費者庁長官
- こども家庭庁長官
- 消防庁長官
- 公安調査庁長官
- 出入国在留管理庁長官
- 国税庁長官
- 文化庁長官
- スポーツ庁長官
- 林野庁長官
- 水産庁長官
- 資源エネルギー庁長官
- 特許庁長官
- 中小企業庁長官
- 観光庁長官
- 気象庁長官
- 海上保安庁長官
- 原子力規制庁長官
- 防衛装備庁長官
司法機関での実例
編集日本以外の国の長官職
編集アメリカ合衆国
編集訳語としての「長官」は、アメリカ合衆国では閣僚と連邦公務員の役職名として使用される。最も有名なのは、国防長官や、国務長官といった閣僚ポストのものである。これらの場合は長官は日本でいうところの大臣ポストであるが、米国では閣僚の職名として一般的なministerではなくsecretaryを採用しており、かつ共和制であるため、大臣でなく長官と訳す慣行がある。ほかに連邦捜査局やアメリカ食品医薬品局の長(Director)にも「長官」の訳語が用いられる(「局長」は長官の下で分掌を司る担当責任者のことである)。米国は日本に比べて省の局長レベルでも政治的任用が多いことから、官僚生え抜きの感のある「局長」でなく「局長官」の訳語を用いることがある。
韓国
編集大韓民国でも閣僚の官名に長官(장관)という呼称が採られている。長官と呼ばれるのは「企画財政部長官」をはじめとした閣僚に原則として限られ、それ以外の機関の長は単に長と呼ばれる(警察庁長、気象庁長など)。諸外国の閣僚も非君主国は原則として長官(장관)と呼称される(君主国は大臣(대신)と呼ばれることが多い)。
フィリピン、メキシコ
編集パレスチナ
編集パレスチナ自治政府の閣僚は独立国同様にMinisterと称しているが、日本政府は独立を承認していないため「庁長官」の語をあてている。