「お歯黒べったり」の版間の差分
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[[ファイル:ShunsenHagurobettari.jpg|thumb|竹原春泉画『[[絵本百物語]]』より「歯黒べったり」]] |
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[[ファイル:Sakaiminato Mizuki Shigeru Road Ohagurobettari Statue 1.JPG|thumb|right|220px|[[水木しげるロード]]に設置されている「歯黒べったり」のブロンズ像]] |
[[ファイル:Sakaiminato Mizuki Shigeru Road Ohagurobettari Statue 1.JPG|thumb|right|220px|[[水木しげるロード]]に設置されている「お歯黒べったり」のブロンズ像]] |
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'''お歯黒べったり'''︵おはぐろべったり︶ |
'''お歯黒べったり'''(おはぐろべったり)'''歯黒べったり'''(はぐろべったり)は[[日本]]の[[妖怪]]の一種。目も鼻も無い顔に、[[お歯黒]]を付けた大きな口だけがある女の姿をした妖怪。 |
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== 概要 == |
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[[江戸時代]]後期 |
[[江戸時代]]後期に出版された﹃[[絵本百物語]]﹄︵[[竹原春泉斎]]・画︶に﹁歯黒べったり﹂という題で描かれており、現在は同作品を通じてその存在が知られている。詞書には、﹁ある人が古い社の前を通ったとき、美しげな女が伏し拝んでいるので、戯れに声を掛けて過ぎようとしたところ、その女が振り向いた。顔を見ると目も鼻も無く、大きな口でけらけらと笑った。二度と見たくないほど恐ろしかった﹂という意味のことが記され、﹃新燈開語﹄<ref>同名の漢籍ならびに典拠は未詳である。</ref>という中国の本にもまったく同じような話︵水神の祠の前にいた女に声をかけたところ、目も鼻も無く、[[箕]]のような大きな口でけらけらと笑った︶があるとしている。また本文では﹁東国ではのつべら坊︵[[のっぺらぼう]]︶とも言い多くは狐狸の化け損なったもの﹂ともある<ref>{{Cite book|和書|editor=多田克己|editor-link=多田克己|title=竹原春泉 絵本百物語 桃山人夜話|year=1997|publisher=[[国書刊行会]]|isbn=978-4-336-03948-4|page=70}}</ref>。
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お歯黒べったりは、のっぺらぼうのように自身の顔面を見せることによって人間を驚かす妖怪であり、その類型であるとも考えられる。直接的な関係は不明だが、﹃[[源氏物語]]﹄の﹁[[手習 (源氏物語)|手習]]﹂の帖に、﹁昔いたと言う目も鼻もない女鬼︵めおに︶﹂という記述があり、顔に目や鼻のない女の妖怪は、[[平安時代]]にも確認することが出来る<ref name="tada" />。
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『絵本百物語』のお歯黒べったりは[[角隠し]]を着け、美しい着物を着た姿で描かれているので、結婚前に死んだ女性の亡霊とも言われるが<ref>{{Cite book|和書|author=多田克己|title=幻想世界の住人たち|year=1990|publisher=[[新紀元社]]|series=Truth in fantasy|volume=IV|isbn=978-4-915146-44-2|pages=339頁}}</ref>、角隠しは、もともと[[浄土真宗]]信者の女性が寺参りに際して着用する物であったから、断定はできない。また、のっぺらぼうは[[小泉八雲]]の短編『むじな』にあるように、[[ムジナ]]・[[キツネ]]・[[タヌキ]]などが人を驚かせるために化けたものであるとも言い伝えられるので、お歯黒べったりもその類とも考えられる。 |
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=== お歯黒を見せる妖怪 === |
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==その他の資料== |
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口だけしかない顔という例ではないが、お歯黒をつけた大きな口をひらいて﹁かね︵お歯黒︶がついたか﹂と人間を驚かす老婆や女が登場する[[昔話]]︵[[キツネ]]・[[タヌキ]]などがその正体︶は、東北地方を中心にその伝承が確認されている。[[山伏]]がキツネなどにちょっかいを出した結果、一軒家などでお歯黒の大きな口で迫られるなどして驚かされるのが、その主な内容である<ref>[[関敬吾]] ﹃日本昔話大成﹄第7巻 [[角川書店]] 1979年 159-166頁 ﹁狐と一軒家﹂</ref>。
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== 昭和・平成以降の解説 == |
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浜通り地方の平の町で大勢の人が集まって[[盆踊り]]をしていた夜の事、1人の若い女が人々の目を引いた。[[手ぬぐい]]をかぶっていたので顔はわからないが、姿は美しかった。夜が更けて踊りが終わると、興味を持った3人の若者が女の後を追いかけて、いい踊りだった、誰もあんなにきれいに踊れない、などとほめた。女が、ほめてもらったお礼がしたいが、と返すと調子に乗った男たちは、あんたの体でもいいぞ、と言う。女は恐れるふうもなく、1人ずつ草むらで相手をした。別れ際に若者たちが、また会いたいから顔を見せてくれと頼むと女は手ぬぐいを取った。その顔にはお歯黒を付けた口だけがあった。むろん若者たちは肝をつぶして逃げ去った。話を聞いた町の者は、お歯黒をしていたのなら誰かの女房だ、と首をひねったと言う<ref>{{Cite book|和書|author= |
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[[山田野理夫]]『[[東北怪談の旅]]』には、「じゃんがら念仏」という題で福島県の話として次のような話が紹介されている。 |
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直接的な関係は不明だが、﹃[[源氏物語]]﹄[[手習]]の記述に、﹁昔いたと言う目も鼻もない女鬼︵めおに︶~﹂と言った記述があり、名前については不明だが、少なくとも同種の怪異は[[平安時代]]中期の近畿圏では知られていた。
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浜通り地方の平の町で大勢の人が集まって[[盆踊り]]をしていた夜の事、1人の若い女が人々の目を引いた。[[手ぬぐい]]をかぶっていたので顔はわからないが、姿は美しかった。夜が更けて踊りが終わると、興味を持った3人の若者が女の後を追いかけて、いい踊りだった、誰もあんなにきれいに踊れない、などとほめた。女が、ほめてもらったお礼がしたいが、と返すと調子に乗った男たちは、あんたの体でもいいぞ、と言う。女は恐れるふうもなく、1人ずつ草むらで相手をした。別れ際に若者たちが、また会いたいから顔を見せてくれと頼むと女は手ぬぐいを取った。その顔にはお歯黒を付けた口だけがあった。むろん若者たちは肝をつぶして逃げ去った。話を聞いた町の者は、お歯黒をしていたのなら誰かの女房だ、と首をひねったと言う<ref>{{Cite book|和書|author=山田野理夫|authorlink=山田野理夫|title=東北怪談の旅|year=1974|publisher=[[自由国民社]]|pages=145-147|NCID=BA42139725}}</ref>。
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「じゃんがら念仏」の話中に「お歯黒べったり」という名称は登場しないが、その姿や驚かし方は類似のものである。 |
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=== 角隠しの解釈 === |
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『絵本百物語』の「歯黒べったり」の絵は[[角隠し]]を着けているのが特徴となっている。角隠しは上級武家の女性や[[浄土真宗]]信者の女性などが寺社へ参詣をするに際して頭部に着用するものであったことから、背景に寺社も描かれている「歯黒べったり」の絵からは嫁入り衣装としての「角隠し」であるという断定は出来ない<ref name="tada">{{Cite book|和書|editor=多田克己|editor-link=多田克己|title=竹原春泉 絵本百物語 桃山人夜話|year=1997|publisher=[[国書刊行会]]|isbn=978-4-336-03948-4|pages=147-148}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |others=善養寺ススム|title=絵で見る江戸の妖怪図巻 |publisher=[[廣済堂出版]] |date=2015||isbn=978-4-331-51957-8|page=88}}</ref>と考察されているが、いっぽう、角隠しと美しい着物であるということからの連想で「結婚前に死んだ女性の亡霊」の妖怪とする解説がとられている書籍も存在する。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[日本の妖怪一覧]] |
* [[日本の妖怪一覧]] |
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* [[青女房 (妖怪)]] お歯黒をつけている様子が描かれる |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* {{Cite web|和書|url=http://mizuki.sakaiminato.net/road/road_pages/yokai_near/ |title=お歯黒べったり|work=[[水木しげるロード]]|publisher=[[境港市]]|accessdate=2022-1-23}} |
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{{Japan-culture-stub}} |
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{{デフォルトソート:おはくろへつたり}} |
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[[Category: |
[[Category:絵本百物語の妖怪]] |
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[[Category:神話・伝説の人型生物]] |
[[Category:神話・伝説の人型生物]] |
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[[zh:齿黑女]] |