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「トマス・ロバート・マルサス」の版間の差分

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== 思想・影響 ==

== 思想・影響 ==

マルサスの思想は、経済学のうえでは、人間理性の啓蒙による理想社会の実現を主張する[[ウィリアム・ゴドウィン]]や[[コンドルセ]]への批判とも位置づけられる。


『人口論』は次のような命題につながる。人口の抑制をしなかった場合、食糧不足で餓死に至ることもあるが、それは人間自身の責任でありこれらの人に生存権が与えられなくなるのは当然のことである<ref>橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、92頁。</ref>。戦争、貧困、飢饉は人口抑制のためによい<ref>佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、388頁。</ref>。これらの人を社会は救済できないし、救済すべきでないとマルサスは考えた<ref name="kadaikaimei93">橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、93頁。</ref>。これらマルサスによる生存権の否定は、ジャーナリストの[[ウィリアム・コベット]]などから人道に反すると批判を受けた<ref name="kadaikaimei93" />。

『人口論』は次のような命題につながる。人口の抑制をしなかった場合、食糧不足で餓死に至ることもあるが、それは人間自身の責任でありこれらの人に生存権が与えられなくなるのは当然のことである<ref>橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、92頁。</ref>。戦争、貧困、飢饉は人口抑制のためによい<ref>佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、388頁。</ref>。これらの人を社会は救済できないし、救済すべきでないとマルサスは考えた<ref name="kadaikaimei93">橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、93頁。</ref>。これらマルサスによる生存権の否定は、ジャーナリストの[[ウィリアム・コベット]]などから人道に反すると批判を受けた<ref name="kadaikaimei93" />。



人口を統計学的に考察した結果、「予防的抑制」と「抑圧的抑制」の二つの制御装置の考え方に到ったが、この思想は後の[[チャールズ・ダーウィン]]の[[進化論]]を強力に支える思想となった<ref>中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、26頁。</ref>。特に[[自然淘汰]]に関する考察に少なからず影響を与えている<ref name="marusasu" />。すなわち、人類は叡智があり、血みどろの生存競争を回避しようとするが、動植物の世界にはこれがない。よってマルサスの人口論のとおりの自然淘汰が動植物の世界には起きる。そのため、生存競争において有利な個体差をもったものが生き残り、子孫は有利な変異を受け継いだとダーウィンは結論したのである。

人口を統計学的に考察した結果、「予防的抑制」と「抑圧的抑制」の二つの制御装置の考え方に到ったが、この思想は後の[[チャールズ・ダーウィン]]の[[進化論]]を強力に支える思想となった<ref>中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、26頁。</ref>。特に[[自然淘汰]]に関する考察に少なからず影響を与えている<ref name="marusasu" />。すなわち、人類は叡智があり、血みどろの生存競争を回避しようとするが、動植物の世界にはこれがない。よってマルサスの人口論のとおりの自然淘汰が動植物の世界には起きる。そのため、生存競争において有利な個体差をもったものが生き残り、子孫は有利な変異を受け継いだとダーウィンは結論したのである。


マルサスの思想は、経済学のうえでは、人間理性の啓蒙による理想社会の実現を主張する[[ウィリアム・ゴドウィン]]や[[コンドルセ]]への批判とも位置づけられる。



[[ジョン・メイナード・ケインズ]]はマルサスについて「もしリカードではなくマルサスが19世紀の経済学の根幹をなしていたなら、今日の世界ははるかに賢明で、富裕な場所になっていたに違いない。ロバート・マルサスは、ケンブリッジ学派の始祖である」と評価している<ref>中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、25頁。</ref>。

[[ジョン・メイナード・ケインズ]]はマルサスについて「もしリカードではなくマルサスが19世紀の経済学の根幹をなしていたなら、今日の世界ははるかに賢明で、富裕な場所になっていたに違いない。ロバート・マルサスは、ケンブリッジ学派の始祖である」と評価している<ref>中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、25頁。</ref>。


2014年5月5日 (月) 13:25時点における版

トマス・ロバート・マルサス
古典派経済学
生誕 1766年2月14日
死没 (1834-12-23) 1834年12月23日(68歳没)
影響を
受けた人物
ジャン=シャルル=シスモンディ
デヴィッド・リカード
影響を
与えた人物
チャールズ・ダーウィン
ジョン・メイナード・ケインズ
実績 人口論
過少消費説有効需要論)の主張 
テンプレートを表示

Thomas Robert Malthus1766214[1] - 18341223


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脚注

  1. ^ 2月13日・17日説もあり
  2. ^ a b 中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、24頁。
  3. ^ フランソワ・トレモリエール、カトリーヌ・リシ編著、樺山紘一日本語版監修『ラルース 図説 世界史人物百科』Ⅲ フランス革命ー世界大戦前夜 原書房 2005年 27ページ
  4. ^ Venn, J.; Venn, J. A., eds. (1922–1958). "Malthus, Thomas Robert". Alumni Cantabrigienses (10 vols) (online ed.). Cambridge University Press.
  5. ^ Malthus T. R. 1798. An Essay on the Principle of Population. Oxford World's Classics reprint: xxix Chronology.
  6. ^ a b フランソワ・トレモリエール、カトリーヌ・リシ編著、樺山紘一日本語版監修『ラルース 図説 世界史人物百科』Ⅲ フランス革命ー世界大戦前夜 原書房 2005年 28ページ
  7. ^ 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、92頁。
  8. ^ 佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、388頁。
  9. ^ a b 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、93頁。
  10. ^ 中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、26頁。
  11. ^ 中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、25頁。

関連項目