ボーダーフリー
ボーダーフリー ︵和製英語‥Border Free︶とは受験用語の一つである。また、この用語から派生した﹁Fランク大学﹂についても解説する。
予備校の河合塾は、各大学の個別試験を16区分の偏差値帯に分類した難易予想ランキング表[注釈 1]を作成しているが、そのなかで偏差値35未満に分類される大学の事を﹁ボーダーフリー︵略称BF︶﹂と呼ぶ[1][2]。模擬試験において志願者数が少ない定員割れや定員割れ予備軍の大学には、偏差値は付かなくなっていき、最終的に﹁ボーダーフリー﹂となる[3]。
河合塾は合格者と不合格者の割合が50％ずつになる偏差値帯︵ボーダー偏差値︶を算出して設定してきたが、この偏差値帯[注釈 2]を算出できない大学・学部が急増したことで作成された区分である[4]。
Fランク大学
学生の就学動機や学力、学習観が多様化する中で、特に﹁受験さえすれば合格できる確率が高い大学、すなわち事実上の全入状態にある大学﹂はボーダーフリー大学︵BF大学︶と呼称される[5][6][7]。また﹁ボーダーフリー﹂から派生し、低偏差値大学への呼称としてFランク大学︵Fランク、Fラン︶という言葉が生まれた[8][9][6]。 広義では、大学数の増加によって、﹁入学者の基礎学力が十分ではない大学﹂を意味する[2]。インターネットを中心に﹁偏差値の低い大学﹂という意味でも使われる[4]。上位大学卒業生と比較して、下位大学卒業生ほど大卒学歴が欲しいばかりに奨学金で無理をして入ったものの卒業後は返せない状態に陥るケースが多い。そのため、奨学金の延滞率が最も高くなっている層である[10]。 インターネット上では、同年代学力平均を越えている偏差値帯の中堅大学を﹁Fランク大学﹂と呼ぶ場合があるが[11]、実態に即していない用法である[12][11][13]。 大学生ホワイトカラー内定率悪化の背景はFラン大学生数が増えたからであり、中堅大学以上であれば、昔に比べても就職難易度は変わっていないと指摘されている[13][14]。海外の類似表現
海外にも類語が存在し、アメリカ合衆国やイギリスでは無価値など見なされている講義や大学を﹁ミッキーマウス学位︵英語‥Mickey Mouse degrees︶﹂がある。ミッキーマウスは英語の俗語的な形容詞として、重要でない、取るに足りない、︹科目・講座などが︺単位の取りやすい、︹学校の宿題や課題︺簡単な、などの意味がある[15]。 カナダでは、鳥コース︵bird courses ︶が﹁ほとんど勉強や知的能力を必要としない﹂講義を指す[16]。 韓国では、Fランと似たような表現に﹁地方にある雑多な大学﹂(韓国語‥지방소재의 잡다한 대학(地方所在의 雜多한 大學) 、略称として지잡대(地雜大)と呼ばれる[17]。 中国では、もともと偽物の学歴を売る詐欺こと﹁ニセ大学﹂を表す言葉﹁野鶏大学﹂があって、語源は英語のディプロマミルから来ている。転じて﹁本物の大学だが、卒業しても意味がない大学﹂も﹁野鶏大学﹂を呼ぶ傾向が近年には増えている[18]。また、﹁楽単﹂や﹁何もしなくても単位を取れる授業﹂のことを﹁水課﹂と言い、﹁楽で卒業できる修士︵硕士︶、博士﹂は﹁水硕﹂﹁水博﹂と言うなど、﹁質が低い、ハードルがない﹂ことを﹁水﹂を付ける造語で言うことが多い[19]。概要
大学経営側に注目すると、Fラン大学の経営は特に貸与型奨学金に支えられているとの指摘がある[8][20]。大学ランクが下がるほど貸与型奨学金の滞納率が高くなっており、大卒学歴が欲しいために借金で無理をして入って卒業後に返せなくて人生が破綻する流れが多くなっている[21]。また、卒業したとしても就活においても、履歴書提出時点で学歴フィルターに引っ掛る可能性が高いとされる[12][22]。貸与型奨学金の延滞率の高低において、地方の私立大学卒業生は高い一方で、国公立大学卒業生は地域にかかわらず延滞率ランキング下位に固まっており、卒業後の経済的堅実さの傾向がある[23]。 1990年の大学進学率は24.6％であったが、2007年時点で大学進学率は47.2％と約2倍となっている[24]。2009年時点で私立大の46.5％・短期大学の69.1％が定員割れとなっている[25]。 その後の一時期は、定員厳格化、共通テスト、東京都23区内の定員抑制措置の効果で、都市部の私大における定員割れは2014年の45.8％が2019年時点ではピークとなった[4]。2019年度は定員割れの大学が33.0％に低下し[4]、高等教育無償化法の認定校基準である﹁定員充足率80％未満が3年以上﹂という大学は122校︵2014年︶から51校︵2019年︶にまで減少した[4]。2022年時点で定員割れを理由に倒産した私立大学は15校である[26]。 しかし、2023年8月には定員割れの大学︵未充足校︶は前年比37校増の320校となり、日本国内の大学全体に占める割合は53.3％と、調査開始以降初の5割超えという過去最多を更新した[27]。詳細は「定員割れ」を参照
更には、日本では2009年以降から大学全入時代(大学進学希望者を入学定員総数が上回る時代)に突入したが、このままの少子化(出生数減)が続くと受験生自体が減っていくため、大学進学率が2023年度と同値のままだとしても2042年度にはMARCHが日東駒専レベルへ、日東駒専は大東亜帝国レベルに、そして大東亜帝国は受験生が消滅する試算が出ている[28]。
