切り絵
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切り絵︵きりえ︶は、紙を切り抜いて、台紙に貼り込み、人・動物などを表したもの[1]。切り紙絵とも[1]。白黒に染め分けた下絵を黒い紙に固定し、不要な部分を切り抜いて絵を作り上げていく絵画の手法のひとつ。一般的な認知度の高い手法ではないが、白と黒のコントラストの妙や、刃物の切り口による独特の造形が味わい深く、愛好家が多い。
概略
切り絵は、日本において古より神様の儀式に使われ、今でも飛騨高山などでは奈良時代以来と伝えられる伝統的な様式が残っている。その後、一般的には染物師が使う染の型紙として発達した。現在、京都友禅の﹁型友禅﹂の製作初期工程である﹁型彫り﹂の匠の技から生まれた切り絵作家として、京都伝統工芸者三代目蓮蔵︵本名山川勝雪︶がいる。中国ではお守りであり、上海で行われている伝統的切り紙︵きりがみ︶は、上海で内山書店を経営していた内山完造が日本から伝えたものである。中国から伝来した説もある。製作
切り絵の基本は白黒のモノクロ画で、黒い紙を切り抜き、白い紙に貼り付けるという手法で制作する。 まず、スケッチした絵を白と黒に染め分け下絵を作る。このとき、輪郭線は全て繋がるように描いておく。そうしないと、切った時にバラバラに離れてしまうからである[注 1]。 そして下絵をホッチキスで黒画用紙などに固定する。そして余分な部分をデザインカッターなどの刃物で切り抜いていく。 最後に裏面に糊を塗布し、台紙となる白い紙に接着して完成する。カラーの切り絵
白黒が切り絵の味わいの基礎となるわけだが、カラーの切り絵ももちろんある。手法としては ●裏から色紙を貼り、台紙に接着する ●台紙の方に色紙を貼り、上から切った絵をずれないよう重ねて貼る ●作品の輪郭線を台紙に写し取って絵具で塗り、上から作品を重ねて貼る。 その他、カラートーンや市販のパターン紙を使うなど、工夫によっていろいろできる。道具
主に使われている道具には、以下のものがある。 デザインカッター 替え刃式の工芸用のカッター。普通のカッターと違い、刃を先端部から取り外して交換する。角度の鋭いものと緩いものがあり、細かい部分、大きな部分と、切る部位によって使い分けるとよい。刃先は非常に切れ味が鋭いため、取り扱いには注意が必要である。 スプレー糊︵短期保管用︶ スプレータイプの糊。広い面積のところに塗る際に便利。剥がしやすいタイプと、剥がしにくいタイプがある。 水のり︵長期保管用︶ スプレー糊は時間の経過とともにはがれやすいため、長期保管を目的として製作するなら、でんぷんのりを多量の水で薄めたものを使う。 カッターマット 刃から机を保護するためのマット。 金定規 直線を切る時に使う定規。カッターなどの刃先にも強い。 ピンセット 細かい作業を行う時に、製作補助として使う。材料
黒紙 線を切り出すための紙。主に和紙と洋紙が用いられる。和紙はカッターの刃が傷みにくいがやや切り難く、洋紙は刃が痛みやすいが切り易い。洋紙ならタント紙が扱いやすい。 色和紙 主に着色のために用いられる。落ち付いたつた風合いで和風な雰囲気によく合う。切り抜いた絵の輪郭に合わせて切ってから作品の裏から貼る、または台紙に貼り付け、ずれないように上から切った紙を重ねて貼る。 絵具 台紙に直接色を塗り、上から作品を重ねて貼って着色する。様々なアプローチ
紙を切って貼るという点から﹁貼り絵﹂や﹁ちぎり絵﹂と混同されたり、ハサミで紙を切ってゆく寄席芸の切り絵と思われることが多かったりと、国内での切り絵の認知度はさほど高くはない。しかし、一般からプロの作家まで愛好家は多く、輪郭線を全部繋げて切るという従来の切り絵の作法に捕らわれない新しいスタイルの切り絵も生まれてきている。-
コドラ︵Kodra︶と呼ばれるポーランドの切り絵飾り。1980年の作品。19世紀後半にユダヤ人の農民が家の飾りとして作っていたことから工芸品となった。農村の暮らしを描く。
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シルエットと呼ばれる西洋の切り絵の一種。1783年。デンマークの画家が母親の横顔を切り取ったもの。
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20世紀前半に活躍したドイツの切り絵作家アンナ・ド・ウォル(Anna de Wall)の作品
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切り絵を使ったランプシェード