幻想交響曲
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クラシック音楽 |
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幻想交響曲(Symphonie Fantastique)は、フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズが1830年に作曲した最初の交響曲。ベルリオーズの代表作であるのみならず、初期ロマン派音楽を代表する楽曲である。現代でもオーケストラの演奏会で頻繁に取り上げられる。
﹁恋に深く絶望しアヘンを吸った豊かな想像力を備えたある芸術家﹂の物語を音楽で表現したもの。
概要
この作品の特徴を端的に表すキーワードとして、﹁標題音楽﹂と﹁固定観念﹂を挙げることができる。
﹁標題音楽﹂とは音楽以外の何かを表現することを意図した音楽であり、この作品においては失恋した自分自身の体験を告白することを意図している。
﹁固定観念﹂とは、楽曲全体を通して繰り返し現れる主題︵旋律︶である。この作品においては、ハリエット・スミスソン︵アイルランドの女優。ベルリオーズが恋に落ちた人物で、後に結婚した。︶への愛を表す旋律がこれに該当し、楽曲のさまざまな場面において登場する。
標題音楽、固定観念のいずれも、古典派音楽の交響曲にはほとんど見られない特徴である。
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全曲を通して、ハリエット・スミスソンへの愛をあらわす旋律が何度も現れる。
この旋律は、曲の中での彼女の登場の仕方によって変化している。たとえば、第一楽章では、曲の主人公となる人物が彼女を想っている場面で現れ、また牧歌的であるのに対して、終楽章では、魔女が主人公の死を告げに来るとき?に彼女を見るときにあらわれる。そして旋律は速く、﹁やかましくくだらない踊り?﹂になって、またキーキーとしたE♭管クラリネットで演奏される。
ベルリオーズはこの繰り返される旋律を﹁イデー・フィクス﹂(idée fixe)と呼んだ。これはワーグナーが後に用いたライトモティーフと同じである。純粋な管弦楽作品で、この技法をこれほどまで使ったのは幻想交響曲が初めてであろうが、ウェーバーは、それ以前から彼のオペラ作品の中で、人物や物を表現するときに同じ動機の繰り返しを用いていた。また、ベートーヴェンの交響曲第5番では、一つの動機が姿を変えて複数の楽章に登場する。
レナード・バーンスタインは、この交響曲を、音楽史上最初のサイケデリックな試みと述べた。
これは、この交響曲が幻覚的、幻想的な性質があり、またこの交響曲は、少なくとも少しは、ベルリオーズがアヘンを吸った状態で作曲されたという歴史があることなどによる。
作曲の経緯と初演
1827年、ベルリオーズはパリでシェイクスピア劇団による﹁ハムレット﹂を観た。その中でオフィーリアを演じたハリエット・スミスソンに熱烈な恋心を抱き、手紙を出す、面会を頼むなどの行動に出る。しかしながら、彼女への思いは通じず、やがて劇団はパリを離れてしまう。ベルリオーズはスミスソンを引きつけるために、大規模な作品を発表しようという思いを抱いていたが、激しい孤独感のなかで彼女に対する憎しみの念が募っていく。彼は、まもなくピアニストのマリー・モークと知り合い、恋愛関係に発展する。この曲はそのさなかに作曲された。なお、1829年には作曲者によって、交響曲についての文章が発表されている。
初演は1830年12月5日、パリ音楽院でベルリオーズの友人であった指揮者フランソワ・アブネックの指揮により行われた。多くの自作曲が演奏されたが﹁幻想交響曲﹂は最も注目を集め、第4楽章はアンコールにこたえてもう一度演奏されたという。
婚約関係まで進んだベルリオーズとモークは、彼女の母によって1831年に破局させられた。モークは別の人の妻となった。彼女の母、彼女とその夫を殺害しようとするほどの怒りにかられたベルリオーズであったが、その翌年、あのスミスソンと再会することになる。彼女は﹁幻想交響曲﹂の再演を聴きに来ていたのである。それをきっかけに、ベルリオーズの心に再び火がついた。今度はスミスソンも彼の愛を受け入れた。ベルリオーズの当初の目的は叶い、二人は1833年に結婚する。
日本初演は1929年5月9日、日本青年館にて近衛秀麿と新交響楽団︵現在のNHK交響楽団︶が行った。
演奏時間は繰り返しを含めて約55分。
後世への影響
ピョートル・チャイコフスキーやグスタフ・マーラーはこの作品の強い影響下にある。
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楽器編成
●ピッコロ(フルート2番奏者持ち替え)
●フルート(2)
●オーボエ(2)
●コーラングレ(オーボエ2番奏者持ち替え)
●クラリネット(2)
●小クラリネット︵E♭管︶(クラリネット1番奏者持ち替え)
●ファゴット(4)
●ホルン(4)
●トランペット(2)
●︵ピストン付き︶コルネット(2)
●アルト・トロンボーン
●テナー・トロンボーン(2)
●オフィクレイド(2, 現在はテューバで演奏)
●打楽器
●ティンパニ(4)
スコアにはマレットについて﹁木﹂、﹁皮張り﹂、﹁スポンジ︵海綿または綿球︶﹂と固さの指示があり、﹁拍頭の音だけばち2本で、あとは右手だけで(第4楽章)﹂など叩き方も指定されている。
●シンバル
打ち合わせる通常の奏法の他、頭部をスポンジで覆ったマレットで叩くよう指定された箇所もある︵指定が脱落している楽譜もあるので要注意︶。
●大太鼓
●小太鼓
●鐘︵しばしばチューブラーベルで代用されるが、ベルリオーズは低く深い音を要求しており、鐘が用意出来なければピアノでと指定している︶
●ハープ(少なくとも4台あることが好ましいが、2台程度で演奏されることが多い、一方6台も使用した演奏もある)
●弦五部
●ヴァイオリン(2パート15人ずつ)
●ヴィオラ(10人)
●チェロ(11人)
●コントラバス(9人)
管弦楽法の面でも、コーラングレ、E♭管クラリネット、コルネット、オフィクレイド︵チューバが発明されるまで使用された金管の低音楽器︶、複数のハープ、鐘の交響曲への導入、コル・レーニョ奏法の使用、コーラングレと舞台裏のオーボエの対話、4台のティンパニによる雷鳴の表現など、先進的なものを多く見せている。
ベートーヴェンの交響曲第9番など、本作のわずか数年前に作曲された交響曲と比較しても、大きな時代の隔たりが感じられる。これは楽器の音量増加や演奏のし易さなどで大きな向上が成された結果である(ベートーヴェンの最晩年にようやく開発されたピストン/ヴァルヴシステムを持たない金管楽器では半音階を出す事が出来ず、大音量と華々しい音色の両立には制約が多かった)。
この進取性こそが、ベルリオーズを﹁近代管弦楽法の父﹂たらしめている所以でもある。
1844年の演奏では第2楽章でコルネットのオブリガートが追加された。音のイメージを当時の舞踏会に近づける狙いがあったとみられる。1855年に全面改訂された際には採用されず新全集版でもスコア本体への記載は無いが、以下で参照可能である。
- [1] 旧全集版のリプリント(gifファイル。インディアナ大学図書館)
- 音楽之友社スタディ・スコア OGT235
曲の構成
感受性に富んだ若い芸術家が、恋の悩みから人生に絶望して服毒自殺を図る。しかし薬の量が足りなかったため死に至らず、重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見る。その中に、恋人は1つの旋律となって現れる……
全曲の構成面では、ベートーヴェンの交響曲第6番との類似性が指摘できる。
第1楽章 夢、情熱 Rêveries,Passions
●不安な心理状態にいる若い芸術家は、わけもなく、おぼろな憧れとか苦悩あるいは歓喜の興奮に襲われる。若い芸術家が恋人に逢う前の不安と憧れである。ただしこの楽章は形式的には伝統的なソナタ形式をとっている。
第2楽章 舞踏会 Un bal
●賑やかな舞踏会のざわめきの中で、若い芸術家はふたたび恋人に巡り会う。だれとは知らぬ見知らぬ男とワルツを踊る恋人は、人波にのまれ遠ざかっていく。﹁固定概念﹂の旋律が随所に現れ、最後はテンポの速い流麗なメロディーと共に華やかに終わる。交響曲ではじめて﹁ワルツ﹂を用いた楽章であり、複数のハープが華やかな色彩を添える。
第3楽章 野の風景 Scène aux champs
●ある夏の夕べ、若い芸術家は野で交互に牧歌を吹いている2人の羊飼いの笛の音︵コーラングレと舞台裏のオーボエによる︶を聞いている。静かな田園風景の中で羊飼いの二重奏を聞いていると、若い芸術家にも心の平和が訪れる。無限の静寂の中に身を沈めているうちに、再び不安がよぎる。﹁もしも、彼女に見捨てられたら……﹂1人の羊飼いがまた笛を吹く。もう1人は、もはや答えない。日没。遠雷。孤愁。静寂。
第4楽章 断頭台への行進 Marche au supplice
●若い芸術家は夢の中で恋人を殺して死刑を宣告され、断頭台へ引かれていく。その行列に伴う行進曲は、ときに暗くて荒々しいかと思うと、今度は明るく陽気になったりする。激しい発作の後で、行進曲の歩みは陰気さを加え規則的になる。死の恐怖を打ち破る愛の回想ともいうべき”固定観念”が一瞬現れ、それを断ち切るように断頭台の刃が落とされる。
第5楽章 サバトの夜の夢 Songe d'une nuit du Sabbat-Ronde du Sabbat
●若い芸術家は魔女の饗宴に参加している幻覚に襲われる。魔女達は様々な恐ろしい化け物を集めて、若い芸術家の埋葬に立ち会っているのだ。奇怪な音、溜め息、ケタケタ笑う声、遠くの呼び声。”固定観念”の旋律が聞こえてくるが、もはやそれは気品とつつしみを失い、グロテスクな悪魔の旋律に歪められている。地獄の饗宴は最高潮になる。弔鐘が鳴り響き、地獄の裁判が始まる。悪魔たちの奏する”怒りの日”が鳴り響く。判決が下り、芸術家は地獄で永遠に苦しむことになった。芸術家は魔女や悪魔たちに取り巻かれ、こづき回されながら、地獄の奥深くへと引きずり込まれていく。悪魔たちの奏でる”怒りの日”と魔女たちの輪舞が一緒に奏され、全管弦楽の咆哮のうちに圧倒的なクライマックスを築いて曲が閉じられる。
●﹁ワルプルギスの夜の夢﹂と訳される事もある。
●第5楽章ではグレゴリオ聖歌﹃怒りの日﹄(Dies Irae)が主題に用いられている。また曲の終結部近くでは弓の木部で弦を叩くコル・レーニョ奏法まで用いられており、高価な弓を使う奏者はそれを嫌い、スペアの安い弓をこの演奏で使う傾向がある。