源氏絵
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源氏絵︵げんじえ︶は、江戸時代から明治時代に描かれた浮世絵の様式のひとつである。
源氏絵とは、源氏物語絵の略称である。﹃源氏物語﹄自体は、平安時代末期に紫式部により執筆された日本最古の長編恋愛小説であり、全体で54帖から成っている。主人公・光源氏の一生が﹁桐壺﹂から﹁幻﹂まで、光源氏亡き後の子孫の物語が﹁匂兵部卿﹂から﹁夢浮橋﹂までという構成になっている。この﹃源氏物語﹄を題材にした絵画を総称して﹁源氏絵﹂といい、絵巻物や屏風、扇面などに描かれている。この﹃源氏物語﹄も600年後の江戸時代も後期ともなると既に古典となっており、題名は知っていても、その雅びやかな王朝文化を伺い知る者は少なくなっていた。そのような中で1829年︵文政12年︶に刊行された柳亭種彦による長編の合巻﹃偐︵にせ︶紫田舎源氏﹄4編38巻の挿絵を歌川国貞が毎ページ描いたことによって大衆の間に広まり、豊原国周ら多くの浮世絵師によって描かれた。それらは﹃源氏物語﹄をパロディ化し、足利光氏に仮託して江戸城大奥絵巻を繰り広げるという趣向のもので、大奥の風刺物として大いに反響を呼んだ。大奥における将軍の享楽生活を思わせる絢爛豪華な浮世絵版画が多数出版され、当時の婦女のファッション及び歌舞伎にも大きな影響を与えている。国貞は秘画にも長じており、アングラ版の﹁源氏物語﹂も華麗なことで知られている。幕末の浮世絵師で、源氏絵を手がけなかった者は一人もいなかったと言っても良い位に、この大奥風の風俗画が大流行し、明治期の官女風宮廷絵画にまで影響を与えた。
関連項目
参考図書
- 浮世絵 藤懸静也、雄山閣、1924年