ニュルンベルク年代記
ニュルンベルク年代記︵ニュルンベルクねんだいき︶は、ドイツの医者・人文学者のハルトマン・シェーデルがラテン語で書いた年代記。ゲオルク・アルトのドイツ語訳と合わせて、インキュナブラ︵最初期の活字本︶として1493年に出版された。
その当時の慣例どおり、この本には表紙がない。冒頭の記述から取って、ラテン学者はこの本をただの﹃年代記﹄︵Liber Chronicarum︶と呼ぶ。英語圏では出版された都市にちなんで﹃ニュルンベルク年代記﹄︵the Nuremberg Chronicle︶、ドイツ語圏では著者名を付けて﹃シェーデルの世界史﹄︵Die Schedelsche Weltchronik︶と呼ばれることが多い。現存する本の挿絵は着色されていることが多いが、これは印刷後に手で塗られたものである。
﹁前兆﹂ (Omen) の挿絵
﹃年代記﹄は1493年7月12日、ニュルンベルクでラテン語で出版された。同じ年の12月23日にドイツ語訳が出版された。ラテン語で1400~1500冊、ドイツ語で700~1000冊が出版された。1509年の本の奥付には、この時までにラテン語として539刷、ドイツ語として60刷が出版されたことが書かれている。現在、ラテン語本が約400冊、ドイツ語訳本が約300冊が残っている[1]。挿絵が着色された本も多く、この着色専門の業者もあったほどだった。その挿絵だけがオールド・マスター・プリント (Old master print) として水彩で着色されて売られたことも多い。また、挿絵だけが切り取られて売られることもあった。
印刷・出版は、画家アルブレヒト・デューラーの代父母︵後見人︶、アントン・コーベルガーが行った。コーベルガーはデューラーの生まれた1471年、金細工職人をやめて印刷家・出版家になり、ドイツの初期の出版家として最も成功した一人となった。最終的には印刷機24台を所有し、リヨンやブダペストなどドイツの諸都市に多くの支店を出した[2]。
﹁捕らえられたライオン魚﹂の挿絵。下部欄外の絵は後代の落書きであ る。
アルブレヒト・デューラーは1486年から1489年までヴォルゲムートの見習いをしており、この年代記の挿絵の作成に参加した可能性がある。ただしこの年代記出版前後の1490年から1494年までの間、デューラーは旅行をしていた。
見開きの様子
同時期の他の本と同様、同じ挿絵が何回か使われている。例えば同じ絵が説明文だけを変えて、町の様子と戦争の挿絵に使われている。繰り返しを省くと、使われている木版画は645である。この本はかなり大きく、2ページにわたって描かれている絵の大きさは342 x 500ミリメートルである[2]。ニュルンベルクだけが説明文なしで2ページにわたって描かれている。ヴェネツィアの絵も比較的大きく、詳細であり、これは元は1486年にエアハルト・ロイヴィヒが旅行ガイド用に書いた挿絵である。このほかにも、別の本から流用した挿絵がいくつかあることが確認されている。フィレンツェの挿絵はフランチェスコ・ロッセリが彫刻したものである[3]。
内容[編集]
この年代記では、世界史を7つの時代に区分して解説している。 ●第1期‥世界の創造から大洪水まで。 ●第2期‥アブラハムの誕生まで。 ●第3期‥古代イスラエルのダビデ王まで。 ●第4期‥バビロン捕囚まで。 ●第5期‥イエス・キリストの誕生まで。 ●第6期‥現在まで。この部分が最も長い。 ●第7期‥世界の終わりと最後の審判の概要。出版の経緯[編集]
挿絵[編集]
大きなアトリエを持つニュルンベルクの画家ミヒャエル・ヴォルゲムートが、1809という大量の木版画を提供した。ヴォルゲムートとその孫ヴィルヘルム・プライデンヴルフに対して1487年から1488年ごろに初めて挿絵の要請がなされ、1491年12月29日に追加の挿絵と説明文を提供する更なる契約がなされた。1490年の日付が入ったヴォルゲムートによる詳細な原画が大英博物館に収められている。ゼバスティアン・カメルマイスター︵Sebastian Kammermeister︶とゼーバルト・シュライアー︵Sebald Schreyer︶は1492年3月16日、この年代記に対して巨大な資金を提供した。参考文献[編集]
- ^ "About this book - Latin and German Editions", Beloit College Morse Library
- ^ a b ,Giulia Bartrum, Albrecht Dürer and his Legacy, British Museum Press, 2002, pp. 94-96, ISBN 0-7141-2633-0
- ^ A Hyatt Mayor, Prints and People, Metropolitan Museum of Art/Princeton, 1971, nos 43 & 173.ISBN 0-691-00326-2
外部リンク[編集]
コモンズにはこの本の400以上の画像が収められている。
- Beloit College's extensive account of their version of the Chronicle, with illustrations
- the original woodcut world map
- More views from the Metropolitan Museum's uncoloured copy: Rome, Nuremberg, saints
- Online images of an uncoloured copy from the State Library of Victoria
- Online full Latin coloured copy from the Bayerische Staatsbibliothek